ベルヌーイ(Jakob Bernoulli)(読み)べるぬーい(英語表記)Jakob Bernoulli

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ベルヌーイ(Jakob Bernoulli)
べるぬーい
Jakob Bernoulli
(1654―1705)

スイス数学者。バーゼルの生まれ。代々数学者を出したことで有名な、ベルヌーイ一家の最初の数学者である。最初は聖職を目ざしていたが、1684年のライプニッツの新しい数学に刺激を受け、1687年以降バーゼル大学数学教授として、微積分学の実質的成立へ向けて、弟のヨハンとともに貢献した。この兄弟はその数学をめぐって仲が悪く、競合しながら微積分学を発展させた。微分方程式の求積法はこの二人によるものが多いし、変分法の出発もこの二人である。最速降下線問題は弟ヨハンの提出を、彼やニュートンやライプニッツらで解いたものだし、等周問題の解決をめぐっても、彼が提出して二人で争っている。したがってこれらの業績については、二人の競合的業績というべきであろう。しかし、彼の死後に発行された『推論術Ars conjectandi(1713)は、確率論の実質的出発として、彼の名を高からしめている。有限確率の計算としては、それ以前にカルダーノパスカルがあるが、それを大量現象の解析と結び付けたのは、彼に始まる。ベルヌーイ試行に伴う大数法則であって、それは現代確率論に及ぶ根本原理の一つである。また、確率論に伴う級数計算にあたって、ベルヌーイ数やベルヌーイ多項式が生まれている。確率論と解析学との緊密な関係は、彼に始まっている。

[森 毅]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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