マット
マット
matte
鈹(かわ)ともいう.金属製錬においていくつかの硫化物が炉中で溶け合って生成する中間産物.Cu,Ni製錬ではきわめて重要なもので,普通,Cu2S,Ni3S2,FeSが主体でそのほかに少量のPbS,ZnSやAu,Agも含有する.Cu製錬の場合はCu2S-FeS,Ni製錬の場合はNi3S2-FeSの二元系と考えてよい.このマット融体を別の炉に入れ酸化精錬を行うと,次の反応で金属銅が得られる.

2Cu(l)+FeO(スラグ中へ) + 2SO2(g)
銅の製錬においてわざわざマットをつくる理由は,鉱石が硫化物で,かつそのCuの含有量が数質量% くらいであるので,高温炉に入れマットをつくると非常に効率よくCuを鉱石から抽出できるからである.前述のようにマットのなかには不純物としてAu,Agが濃縮するので,CuやNi製錬の副産物としてAuやAgが生産される.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
マット
① 玄関や室の入り口などに、履き物の泥をぬぐい落とすために置く敷き物。棕櫚(しゅろ)などで作る。
※青の時代(1950)〈三島由紀夫〉一六「玄関先の棕櫚のマットに」
② 室内や廊下などに敷く敷き物。
※風俗画報‐一九六号(1899)広告「綿麻製縞マット 元祖日高織夏
敷物大販売」
③ 敷きぶとんの下やベッドなどに用いる弾力性のある厚い敷き物。また、体操競技用の厚い敷き物。
レスリングやボクシングの床に用いるものもいう。
※漫才読本(1936)〈横山エンタツ〉あきれた連中「あの怨重なる恋仇ブラックをマットに眠らせることが出来たら」
④ 器物の下敷きとしたり、何かの目的で台の上に敷いたりするもの。「テーブルマット」
マット
〘名〙 (mat, matte)
① 銅、
ニッケルなどを精錬する時、中間にできる
生成物で、硫化物のまじりもの。鈹
(かわ)。
② (形動)
光沢のないさま。また、紙・
衣・ガラス・金属等で、つや消しの処理を施してあるもの。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
マット
matte
硫化鉱の溶融精錬において,炉中で溶け合って生成する金属硫化物の混合物。目的とする金属を得るには,これをさらに精錬する。たとえば銅の精錬で,黄銅鉱を焼いて得た酸化鉄と硫化第一銅の混合物を反射炉に入れて熱すると,酸化鉄は鉱石中に含まれる二酸化ケイ素と化合してケイ酸塩となり,上部に浮び,硫化第一銅はこの過程で生じた酸化第一銅とともに融解して下部に沈む。これをマットといい,上部に浮ぶスラグ (鉱滓 ) を「からみ」という。マットを転炉中で熱しながら空気を吹込むと銅を生じるので,これを型に入れ固化させると粗銅となる。これは電解精錬されて電気銅となる。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
マット
まっと
mat
麻、木綿、藁(わら)、藺(い)などで織った粗地の織物、または詰め物を中に入れた厚手の床に敷く敷物をいう。前者には玄関の靴ぬぐいや浴室のバスマットのように、ぬぐう目的で使われるものと、茣蓙(ござ)や莚(むしろ)のように部屋に敷くためのものとがある。また後者は運動のときなどに緩衝用として使われる。なお、花瓶や飾り皿などの下敷き用の小形の敷物をさすこともある。
[小原二郎]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
マット(matte)
[形動]光沢のないさま。つや消しにしたさま。「マットな仕上がりの口紅」
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
マット【matte】
硫化鉱の製錬において,鉱石中の脈石成分および鉄の一部分をスラグとして分離することを目的として行われる第1段目の溶錬の産物。鈹(かわ)ともいう。生ずるマットは鉄,銅,ニッケルと,硫黄との合金であり,溶融状態では均質な液体である。自溶炉マットの成分例は銅61%,鉄13%,硫黄23%,反射炉マットの成分例は銅36%,鉄28%,硫黄25%である。このようにマットは広い成分範囲で生ずる。銅製錬のマットの中には鉱石中の金,銀,ニッケル,コバルト,鉛,セレン,テルルなど多くの有価微量元素が濃縮する。
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
世界大百科事典内のマットの言及
【スパイス】より
…ひかわ(砒鈹)ともいう。マットの中の硫黄をヒ素におきかえたものと考えればよい。金属鉛はスパイスと混ざり合わず,容易に相分離を起こすため,鉛製錬のときによく生成するし,きらわれる。…
※「マット」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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