翻訳|Melanesia
南太平洋の島々のうち,ほぼ180度の経線以西の島々の総称。ギリシア語で〈黒い島々〉の意。太平洋の島嶼群での地理的区分だけでなく,人々の皮膚の色により区別された民族領域でもある。西端のニューギニアにはじまってソロモン諸島,ニューヘブリデス諸島,フィジー諸島,ニューカレドニア島と南東の方向に散在する島々である。フィジー諸島は地理的にも文化的にもメラネシアとポリネシアの接点である。陸地総面積は約95万9000km2で,そのうちニューギニア島が約77万1900km2,残りの大部分は25の大きな島々が占めている。島はサンゴ礁もあれば,熱帯雨林,山岳地帯をもつ火山島など,さまざまである。気候は西の方にいくにしたがって東南アジアの気候に似るが,島嶼群は海洋の影響を強くうけている。全体的には湿潤熱帯で,人間の活動を鈍らせる。12~3月に最大雨量が,5~8月に最小雨量が記録される。雨量の年平均は2500mmであるが,ところによって1000mmから6000mmの大差がある。ニューギニア島南部,ニューカレドニア島中部の南西斜面など比較的乾燥しているところはサバンナになっている。気温は最高気温が平均32℃,最低気温が平均14℃であるが,低地では年中変化がないのに比べて,高地では年較差よりも日較差の方が大きい。メラネシア人は根茎類(タロイモ,サツマイモ,キャッサバ,ヤムイモなど)の栽培を中心とする農耕民で,種子作物の栽培を中心とする隣接の東南アジアの人々や,狩猟や採集に生計を依存しているオーストラリアの先住民(アボリジニー)とは違っている。根茎類以外にもパンノキの実,ヤシの実,パンダヌスの実,バナナ,サゴヤシのデンプンが重要な食糧である。動物群は東南アジア大陸とはほとんど関係がないが,オーストラリアとの類似がニューギニア島で多くみられる。犬と豚は人によりもたらされたといわれている。ニューギニア島は両生類,爬虫類,鳥類が豊富で,ゴクラクチョウ,ワニなど他島に生息しないものもいる。
メラネシアは19世紀以来,イギリス,フランス,オランダ,オーストラリアに領有されてきたが,ニューカレドニア島(フランス領),ニューギニア島西部(オランダ領を経てインドネシア領)を除いて独立した。1970年にフィジーが独立したのを皮切りに,75年にパプア・ニューギニア,78年にソロモン諸島,80年にバヌアツ(ニューヘブリデス諸島)がメラネシア人国家として誕生した。パプア・ニューギニアは人口440万(1996)で,領土とともに人口も群を抜いている。ポリネシアやミクロネシアの島々の多くが陸地の小面積のゆえに資源や産業的な価値が乏しいのに反し,メラネシアは木材,銅,ニッケル,金などの資源があり,開発が比較的進んでいる。そのほかにヤシ油,茶,コーヒー,砂糖など農産物の輸出も増加の一途をたどっている。交通網および情報網の発達は遅れており,内陸部への道路建設は,換金作物の導入のみならず近代化を促進させるため急がれている。また沿海航路による海上輸送の発達および島嶼間の交通手段の確立が目ざされている。ニューギニアでは航空網が発達している。
執筆者:畑中 幸子
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太平洋西部のほぼ180度経線の西側,赤道の南側にある島々の総称。ポリネシア,ミクロネシアとともに太平洋の3区分の一つ。ギリシア語で「黒い島々」を意味する。黒は住民の肌の色とも,島の土壌の色ともいわれる。先住民は焼畑農耕を主たる生業としており,ポリネシアにおけるような首長制はみられず,社会の規模も大きくない。19世紀にヨーロッパと接触して以来,イギリス,フランス,オランダ,オーストラリアに分割されて領有されてきた。1970年にフィジー,75年にパプアニューギニア,78年にソロモン諸島,80年にヴァヌアツが独立している。民族構成の多様さ,歴史的経緯などからフィジー,パプアニューギニア,ソロモン諸島,ニューカレドニアでは,民族紛争が頻発している。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
…残りの数千を数える島々の総面積はわずか18万km2にすぎない。 大陸を除いたオセアニアの島々の世界は,通常地理学的および人類学的観点からメラネシア,ポリネシア,ミクロネシアの3地域に区分される。メラネシア(ギリシア語で〈黒い島々〉の意。…
※「メラネシア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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