ヨーグルト

精選版 日本国語大辞典 「ヨーグルト」の意味・読み・例文・類語

ヨーグルト

〘名〙 (yogurt Yoghurt) 牛乳、山羊乳、脱脂乳などを乳酸菌または酵母で発酵させたクリーム状や液状の食品。酸乳。〔改訂増補や、此は便利だ(1918)〕

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デジタル大辞泉 「ヨーグルト」の意味・読み・例文・類語

ヨーグルト(〈ドイツ〉Yoghurt)

発酵乳の一。牛乳・羊乳などを乳酸菌または酵母発酵させ、クリーム状や液状にした食品。
[類語]乳飲料乳酸飲料酸乳飲料コーヒー牛乳ミルクセーキ

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食の医学館 「ヨーグルト」の解説

ヨーグルト

《栄養と働き》


 ヨーグルトをはじめとする発酵乳の歴史は古く、5000~6000年前のエジプトの壁画にも、それに関する記述があるほど。日本にヨーグルトが伝わったのは奈良時代で、当時の「酪(らく)」という食品が、ヨーグルトにあたるとされています。
 ただ、ヨーグルトが本格的に日本の家庭へ普及しはじめたのは、昭和25年ころのこと。それもはじめのうちは、甘味料や寒天を加えてかためたお菓子的な製品が主流で、現在のようなプレーンヨーグルトが広まるのは、昭和40年代に入ってからです。
〈消化吸収率が高く、カルシウム、ビタミンB2などは牛乳より豊富〉
○栄養成分としての働き
 ヨーグルトに含まれるおもな栄養素は、たんぱく質、脂質、カルシウム、ビタミンA、B群、D、Eなどで、原料の牛乳と基本的にかわりません。ただ、ビタミンB2やカルシウムなどについては、発酵の作用によって、牛乳よりも多く含まれています。
 しかも、ヨーグルトは乳酸菌の働きによって、たんぱく質や脂質などがすでに分解されており、消化吸収率が非常に高いのが特徴。
 そのため、牛乳の2~3倍の速さで体内に吸収されるうえ、乳糖不耐症(にゅうとうふたいしょう)の人が食べても、おなかの調子が悪くなる心配が少ない、という長所があります。
 こうしたことから、ヨーグルトは子どもや老人をはじめ、どんな人にでもすすめられる栄養食品です。カルシウムは、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)などの骨の病気をはじめ、イライラ、情緒不安定、不眠症に有効。たんぱく質や各種ビタミンの働きにより胃潰瘍(いかいよう)、胃炎、肝臓病、二日酔い、虚弱体質、老化予防など、多くの病気や症状改善、予防にも役立ちます。
〈体内の善玉菌をふやし、便秘、がん、感染症の予防にも寄与〉
 さらに、ヨーグルトを常食することで、腸内の細菌バランスを良好に保つことができる点も見逃せません。人の腸には約100兆個もの細菌が住んでおり、そのなかには体に好ましい働きをする善玉菌、悪い影響を与える悪玉菌、ふだんは目立った働きをしていない日和見菌(ひよりみきん)がいます。
 これらの細菌はつねに勢力争いをしており、善玉菌が多くなれば、悪玉菌の活動や増殖を抑えて、体調を良好に保つ手助けをしてくれます。逆に、悪玉菌がふえれば、善玉菌の活動が低下し、日和見菌まで体に悪い働きをするようになるのです。
 そのため、腸内の細菌のバランスを善玉菌優勢に保つことが、健康維持のうえでとてもたいせつ。そんな善玉菌の代表的なものがビフィズス菌であり、ビフィズス菌が好むオリゴ糖や乳糖を豊富に含むヨーグルトは、腸内の細菌バランスを善玉菌優勢に保つのに、非常に効果的な食品なのです。
 また、ヨーグルトの中の生きた乳酸菌も、腸内のビフィズス菌の増殖を助ける役割をはたします。
 このほかにも、肝機能強化などの働きもあり、腸内を善玉菌優勢に保つことで得られる、健康への効用ははかり知れません。

《調理のポイント》


 ひとくちにヨーグルトといっても、いろいろなタイプの商品があります。代表的なのは、牛乳を乳酸菌で発酵させただけで添加物をいっさい加えないプレーンヨーグルト、飲みやすいように液状にしたドリンクヨーグルト、果汁や果肉を加えて調味したフルーツヨーグルト、甘味料や香料を加えて寒天などでかためたデザートヨーグルト、冷凍したフローズンヨーグルトなど。肥満が気になる人には、脱脂乳からつくられたローファットタイプのものもあります。
 このうち、栄養的にもっともバランスがよく、利用法も幅広いのは、やはりプレーンヨーグルトでしょう。そのまま食べるのはもちろん、サラダにかけたり、カレーやスープかくし味、お菓子やドリンク類の材料と、さまざまな料理に使えます。
 ポイントは食物繊維といっしょにとることです。
 そうすれば、ヨーグルトのもつ整腸作用をいっそう高められますから、シリアル食品やくだもの、野菜などに合わせるのが、おすすめの食べ方です。
 このほか、善玉菌のビフィズス菌を添加して整腸作用を強化した製品や、病原菌(オー)―157の殺菌力をもつ、LG―21を添加した製品などもあります。じょうずに利用して健康に役立てましょう。
 料理に使う際に気をつけたいのは、ヨーグルトは雑菌が繁殖しやすい点です。
 一度で使い切らない場合、冷蔵庫で保存するのは当然ですが、中身をとりだすときにも清潔なスプーンを使うようにします。
 また、生きた乳酸菌を含んだヨーグルトの中では、乳酸菌の発酵が続いているため、長く置いておくと発酵でできる酸が増加して、酸味が強くなります。
 酸味のにがてな人は、賞味期限内であっても、できるだけ早く食べるほうがいいでしょう。
 ところで、ヨーグルトを置いておくと、固形の部分と乳清と呼ばれる透明の液体に分離してきます。この乳清は、水溶性のたんぱく質やミネラル、ビタミン類が溶け込んでいるので、捨ててしまわず、ぜひいっしょに食べるようにしてください。
 腸内がつねに善玉菌優勢に保たれていれば、以下のような効用があることが認められています。
●善玉菌がつくりだす乳酸や酢酸(さくさん)の働きで腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)が活発になり、便秘を防止・解消。痔(じ)や吹き出もの、肌荒れの予防にも役立つ。
●悪玉菌が発がん性物質をつくるのを防いだり、発がん物質そのものを無毒化することによって、大腸がんなど、各種のがんを予防する。
●善玉菌が体の免疫機能を活性化させることにより、かぜをはじめとする各種の感染症を防ぐ。
●乳酸や酢酸などが、病原菌の活動を抑えて、食中毒になりにくくする。

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改訂新版 世界大百科事典 「ヨーグルト」の意味・わかりやすい解説

ヨーグルト
yogurt
yoghurt

乳酸菌を用いて発酵させた代表的な発酵乳。古くからバルカン半島など東地中海沿岸地方では,重要な食物となっていたが,E.メチニコフが,バルカン半島に長寿者の多い原因がこの発酵乳の日常的な摂取によるものであるといういわゆる不老長寿説をとなえて以来,欧米諸国で広く作られるようになった。日本では厚生省令の規格上はヨーグルトという語は用いられておらず,〈発酵乳〉という分類になっている。成分は無脂乳固形分8.0%以上,乳酸菌数1ml当り1000万以上,大腸菌群陰性と定められている。原料としては牛乳,脱脂乳または脱脂粉乳を溶解して無脂乳固形分濃度を高めた脱脂乳が用いられる。また,製品の種類により,ゼラチン,寒天などの硬化剤,ショ糖,果実,果汁,エッセンスなどが配合される。乳酸菌の種類はとくに定められてはおらず,ブルガリア菌,アシドフィラス菌,サーモフィラス菌,ビフィズス菌などが用いられている。

 おもな種類には次のようなものがある。(1)ハードヨーグルト 通常脱脂乳を原料とし,ゼラチン,寒天などの硬化剤を加えて製造したプリン状の製品で,ショ糖が約10%加えられているほか,バニラなどエッセンスも用いられる。日本では最も古くから作られている種類で,普通ヨーグルトともいわれる。(2)プレーンヨーグルト 牛乳が通常用いられ,硬化剤もショ糖も添加せずに作る。無糖ヨーグルトともいわれる。(3)ソフトヨーグルト 乳酸発酵してからかくはんして凝固物を砕き,半流動状にしたもの。イチゴ,オレンジ,パイナップルなどの果肉を加えたものが多い。プレーンヨーグルトとともに最近消費が増加している。(4)ドリンクヨーグルト 液状で飲用とするものである。(5)フローズンヨーグルト 乳酸発酵後凍結させたもので,アイスクリーム状の製品である。

 製法は牛乳,脱脂乳などにショ糖,硬化剤などを混合して溶解し,加熱殺菌する。これを乳酸菌が生育しやすい温度まで冷却したのち,純粋培養した乳酸菌スターターを加える。瓶などの容器に充てんしたのち発酵させる。発酵後は直ちに冷蔵して,なるべく早く消費する。ヨーグルトは牛乳に由来する良質のタンパク質,カルシウム,ビタミンB2を含み,さらに爽快な酸味があるので,牛乳の風味の嫌いな人にも食べやすくなっている。また乳酸菌の酵素により,タンパク質がある程度分解されているので消化がよくなり,カルシウムは乳酸カルシウムとなって吸収されやすくなっている。ヨーグルトに用いられる乳酸菌の中には人間の腸内で増殖して整腸作用をもつものもあるといわれる。デザートやおやつのほか,ショ糖無添加のものはサラダなど調理にも用いられる。
酸乳
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨーグルト」の意味・わかりやすい解説

ヨーグルト
よーぐると
yoghurt

アナトリア(トルコ)およびバルカン半島周辺の東欧諸国で、古くから利用されてきた発酵乳の一種。ロシアの生物学者メチニコフが、ブルガリアに長寿者が多いこととヨーグルト飲用の習慣を結び付け、乳酸菌が腸内の有害細菌の発育を抑制するためという説を唱えてから、改めて欧米諸国に普及し、現在では発酵乳といえばヨーグルトをさす場合が多い。元来、牛乳、羊乳またはその脱脂乳を殺菌せずに室温に放置するか、または前日つくったヨーグルトの一部を種として加えて、自然に乳酸発酵させたものであって、そのまま、あるいは砂糖や蜂蜜(はちみつ)などを加えて食べるほか、肉料理の調味、野菜のドレッシングなど広く調理材料として用いられてきた。現在ではヨーグルトそのもののほか、糖類、香料、果汁、果実加工品などを加えたフレーバーヨーグルト、カードを細かく砕いて液状にしたドリンクヨーグルト、アイスクリーム状に凍結させたフローズンヨーグルトなど、多種類の加工品が流通している。

 近代的製法は、牛乳、脱脂乳または乳製品を原料とする還元乳を加熱殺菌し、乳酸菌発育温度(約40℃)まで冷却したあと、純粋培養をした乳酸菌を接種混合する。発酵は30~40℃の範囲で5~10時間で終了し、その後発酵の進行を止めるために10℃以下に冷却する。使用される乳酸菌は乳酸生成力、発酵フレーバーの付与などの目的で選択されるが、一般的にはブルガリア桿菌(かんきん)、アシドフィラス桿菌、ラクチス球菌、サーモフィラス球菌などを数種混合して用いられる。家庭でつくるには、市販牛乳またはスキムミルクを溶解したもの1リットルを40~45℃に加温し、市販のヨーグルト菌種または市販のプレーンヨーグルトを大さじ2杯程度加えて混合し、保温ジャーに入れて5~8時間放置すれば手軽にできる。

 ヨーグルトは乳成分に加えさわやかな酸味が特徴で、とくに脱脂乳でつくったものは低カロリー食として普及している。そのまま野菜、果物のドレッシングとして用いたり、ヨーグルトケーキ、ババロアなどの製菓材料として利用されるほか、調理材料として肉類のつけ込み、シチューやカレーなどの煮込み料理に加えるなど、広く利用されつつある。

[新沼杏二・和仁皓明]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヨーグルト」の意味・わかりやすい解説

ヨーグルト
yogurt; yoghurt

を乳酸菌を用いて凝固させた発酵乳(→乳酸発酵)。発祥地には諸説があるが,トルコとみられる。原料にはウシヒツジヤギスイギュウなどの乳が使用され,今日では脱脂乳が多く用いられている。乳酸菌の種類によって種々の風味のものができるが,日本の市販のものにはラクチドバチルス・ブルガリクス Lactobacillus bulgaricus を用いたものが多く,砂糖,香料のほかに寒天ゼラチンなどの硬化剤を加えて固めたものが一般的である。ロシアの微生物学者イリヤ・メチニコフが,乳酸菌の飲用が腸内細菌を抑制して老衰を防ぐのに役立つと主張し,世界的に広まった。今日では,液状にした飲用のものや,プレーンと呼ばれる糖分を添加しないのもの,冷凍したものなど多くの商品種がある。(→乳製品

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百科事典マイペディア 「ヨーグルト」の意味・わかりやすい解説

ヨーグルト

発酵乳の一つ。ふつう濃縮した脱脂乳に脱脂粉乳,砂糖,香料を加え,90℃に加熱殺菌し,33〜35℃に冷却後,スターターの乳酸菌を加えて発酵,凝固させてつくる。爽快(そうかい)な風味をもつ。消化がよく,生きた乳酸菌を含むので整腸効果がある。おもな種類には,ショ糖を約10%加えたプリン状のハードヨーグルト,ショ糖を添加しないプレーンヨーグルト,半流動状にしてイチゴやパイナップルなどを加えたソフトヨーグルト,液状のドリンクヨーグルト,アイスクリーム状に凍結させたフローズンヨーグルトなどがある。
→関連項目乳製品

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化学辞典 第2版 「ヨーグルト」の解説

ヨーグルト
ヨーグルト
yogurt, yoghurt

発酵乳の一種.脱脂乳に練乳,ショ糖を加えて均質化し,加熱殺菌したのち乳酸菌Lactovacillus bulgaricusスターターを加え,発酵させて冷蔵する.酸度(乳酸として)0.6~1.2.消化良好な食品で,整腸作用もある.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

栄養・生化学辞典 「ヨーグルト」の解説

ヨーグルト

 発酵乳の一種.家畜の乳もしくは脱脂乳に,乳酸菌を接種して生成する酸によりカゼインを凝固させたもの.

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世界大百科事典(旧版)内のヨーグルトの言及

【酸乳】より

…牛乳や脱脂乳を乳酸菌により発酵させてつくる酸味を有する液状または半流動状の製品。この種の製品は,日本の規格では無脂乳固形分と菌数の基準により発酵乳(ヨーグルトなど)と乳酸菌飲料に分類される。(1)ヨーグルト 酸乳では最古のものとして知られている。…

【乳】より

…牧夫は今でも,実母を失った子を育てるため,他の乳雌の間に哺乳・授乳関係を成立させるのに苦労している。他の乳雌から搾乳して子に与える経緯の中で,残った乳が乳酸化してヨーグルト状になったとき,初めて家畜の乳はヒトにとっての食物となったのではなかろうか。ただ,実母を失った子家畜のための搾乳といっても,家畜はふつう簡単にヒトに乳房を触らせ,搾ることを許すものではない。…

※「ヨーグルト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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