翻訳|lockout
労働者の争議行為に対して使用者の行う争議対抗行為の一つで、作業所閉鎖のこと。工場閉鎖ともいう。ロックアウトは、かつては労働者の団結を破壊し争議行為を切り崩すために、労働者を全員解雇し工場から閉め出すという形で行われた。しかし、今日では、憲法で争議権が保障されているのは労働者であって使用者ではないから、このような攻撃的なロックアウトは認められない。そうはいっても、憲法が労使の力の対抗関係を通じて新たな労使関係を形成することを認めている以上、使用者にいっさいの争議対抗行為が禁止されているとは考えられない。認められるのは、労働者の争議権を否定しない範囲内で、つまり、労働者が争議行為を開始したあとから、それに対抗する必要性のある限りである。たとえば、サボタージュや部分スト(組合員の一部に行わせるストライキ)のように、組合側が賃金喪失を最小限に抑えて全面ストと同様な効果をねらっている場合も、原則として部分ロックアウトが認められるにすぎない。ただし、部分ストによって全面スト以上に多大な損害をもたらし、労使間の衡平を著しく損なうような場合は、全面ロックアウトも正当である。
ロックアウトは、単にその旨の宣言や通告だけでは成立せず、労働者を工場から排除するなり、それができない場合も操業を停止するために電源を切断するなどの行為が必要と考えられる。なお、ロックアウトが有効に成立すれば、使用者はその期間中の賃金支払い義務を免れる。
[吉田美喜夫]
『浅井清信著『ロックアウト法理の再検討』(1985・法律文化社)』
使用者が争議にはいった工場や事業場を閉鎖し,労働力の購入を一括して一時中止すること。工場閉鎖とか作業所閉鎖とも呼ばれる。ロックアウトによって,使用者は賃金支払義務を免れ,労働者に経済的圧迫を加えることができ,また就労の拒否であるから労働者の心理的動揺をさそうことができる。ロックアウトは,使用者がとりうる合法的なほとんど唯一の争議対抗手段である(労働関係調整法7条)。通例,労働者の部分ストとかサボタージュの争議形態に対抗して行われる。日本国憲法は労働者にのみ争議権を認めて使用者には争議権を認めていないが,判例・学説とも使用者による争議対抗手段としてのロックアウトは認めている。ただしロックアウトの正当性は,労働者の争議行為による使用者の損害が著しい場合で,労使の勢力均衡の回復に相当と認められる範囲に限られる。したがって,ロックアウトは受動的・防衛的なものが正当とされ,先制的・攻撃的なものは正当でないとされる。
執筆者:遠藤 公嗣
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…使用者の態度が強硬であったり要求が過度である場合にはストライキが長期化し,スト破りや組合分裂が起こる。使用者が対抗的にスト破りを導入したり,逆に労働者の就業を禁止するロックアウト(閉め出し)を行う場合もある。 労使が合意した労働条件は労働協約に盛り込まれ,労使双方を拘束する。…
…労働組合法,労働基準法および労働関係調整法は労働三法といわれる。労働組合法は集団的な労使関係を規律する最も基本的な法律で,労組法と略称する。1949年6月1日に制定され,同日に施行された。
[制定までの経緯と変遷]
戦前にも労組法制定に向けた努力が存在したとはいえ,大正時代から昭和の初頭にいたるまでの間に約20の法案が登場したものの,いずれも日の目をみることはなかった。終戦直後の1945年12月に公布,46年に施行された旧労組法が,日本最初の労組法であった。…
…労使関係は資本主義社会においては経済的利益を追求する当事者間の自由な契約関係であり,自己の主張にもとづいて契約を拒否することは当然の権利とみなされ,労働争議はその権利の行使と理解されている。使用者が労働者の就業を拒否するロックアウトのような使用者側の争議行為もあるが,一般には労働組合の活動を指す。労働者の争議行為は通常労働組合などの団体行動として行われ,団体交渉の一環として実施される。…
※「ロックアウト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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