不束(読み)フツツカ

デジタル大辞泉 「不束」の意味・読み・例文・類語

ふつつか【不束】

[形動][文][ナリ]
気のきかないさま。行きとどかないさま。不調法。「不束な点はお許しください」
太くて丈夫なさま。
「いと大きやかに、―に肥え給ひつるが」〈宇津保・蔵開上〉
太くてぶかっこうであるさま。
「指の―になるをいとひて」〈浮・禁短気・三〉
風情がなく、下品であるさま。無骨。
山賤やまがつき木を負へる如くなる、いかにも―なる我が身に」〈仮・竹斎・上〉
[派生]ふつつかさ[名]
[類語](1つたない不肖野育ち至らぬ半人前青臭い未熟不慣れ不調法不行き届き不十分不完全不備不徹底不敏浅はか浅薄浅慮浅才無考え愚か愚かしい足りない不見識無定見生半可

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「不束」の意味・読み・例文・類語

ふつつか【不束】

  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙
  2. 太く丈夫なさま。
    1. [初出の実例]「ふつつかにこえ給つるが」(出典:宇津保物語(970‐999頃)蔵開上)
  3. 太くいやしげなさま。下品でぶかっこうなさま。不細工なさま。
    1. [初出の実例]「この大夫のさもふつつかにみゆるかな」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)
    2. 「むまれつきふつつかなる上に、近い比楊梅瘡の出た跡一めんにくへて」(出典:浮世草子・傾城色三味線(1701)大坂)
  4. 風情がないさま。無風流なさま。無骨なさま。
    1. [初出の実例]「礼義をもしらず、よろづふつつかなる緩怠をいたし」(出典:仮名草子・浮世物語(1665頃)三)
  5. ( 「ふつづか」とも ) 心が至らないさま。ゆきとどかないさま。不調法なさま。
    1. [初出の実例]「不幸に愁にしづめる人の、かしらおろしなどふつつかに思ひとりたるにはあらで」(出典:徒然草(1331頃)五)
    2. 「自分は〈略〉、不束(フツツカ)ながら今日迄生きてゐる」(出典坑夫(1908)〈夏目漱石〉)
  6. 江戸時代、吟味筋(刑事裁判)の審理が終わり、被疑者に出させる犯罪事実を認める旨の吟味詰(つま)りの口書の末尾の詰文言の一つ。叱り、急度叱り、手鎖過料などの軽い刑に当たる罪の場合には「不束之旨吟味受、可申立様無御座候」のように詰めた。
    1. [初出の実例]「御叱り、急度御叱り、手鎖、過料等に可成と見込之分は、不束或は不埒と認」(出典:聞訟秘鑑‐一口書詰文言之事(古事類苑・法律部三一))

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