侍医(読み)じい

日本大百科全書(ニッポニカ)「侍医」の解説

侍医
じい

大宝律令(たいほうりつりょう)において、中務(なかつかさ)省にある内薬司に属して、天皇の脈を診験し、医薬供奉(ぐぶ)する師を医と称し、「おもとくすし」とよんだ。896年(寛平8)に内薬司が宮内省典薬寮に合併されてからは、これに属する宮廷医師を普通、典医とよんでいる。すなわち、医薬のことをもって官に仕える者を一般に典医とよぶが、この典医のうち天皇を診察し治療する者を侍医とよんだ。平日は安福殿薬殿に詰め、天皇が殿上に出御のときは小板敷に侍して竜顔(りゅうがん)を拝した。鎌倉幕府が開かれてからは、京都から典薬寮の医官や施薬使を迎える習慣ができ、将軍の診候をつかさどる者も侍医と称するようになった。これは徳川幕府にも引き継がれ、営中にあって将軍の脈をとる者を奥医師とよんでいるが、通常、侍医と俗称している。明治維新後は宮内省に侍医寮が置かれ、これに属する勅奏任官を侍医と称した。その後幾多の改正を経て、現在では宮内庁侍従職に属している。

[深瀬泰旦]

『山田重臣著『典医の歴史』(1980・思文閣出版)』

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精選版 日本国語大辞典「侍医」の解説

じ‐い【侍医】

〘名〙
① 令制で、内薬司(後に典薬寮)に属し、常に宮中にあって天皇を診察し、医薬を供奉(ぐぶ)することをつかさどる医者。〔令義解(718)〕
天子・王侯貴族などのおかかえの医者。
史記抄(1477)一四「ようも未成に、はや斉国の侍医になったぞ」 〔戦国策‐燕策・王喜〕
③ 宮内庁侍従職に属する職員。明治四年(一八七一)八月に典医の下に位する官として大侍医、権大侍医、小侍医、権小侍医が置かれ、同八年の改正で一等から六等までの侍医に改められた。同一九年二月、宮内省に侍医局が設けられてのち、その職員となる。診候・医薬および、宮中衛生の事をつかさどる勅奏任官。

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デジタル大辞泉「侍医」の解説

じ‐い【侍医】

律令制で、典薬寮に属し、天皇を診察し、医薬を奉った医師。
宮内庁侍従職に属し、天皇や皇族の診療に当たる医師。
[類語]医師医者医家ドクタードクトルホームドクター国手女医名医藪医者主治医船医軍医学校医町医者開業医内科医外科医眼科医目医者歯科医歯科医師歯医者獣医御典医

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