切れ(読み)キレ

デジタル大辞泉 「切れ」の意味・読み・例文・類語

きれ【切れ】

[名]

㋐物の切れ端。「板の切れ」「布切れ
㋑(「布」「裂」とも書く)織物を切ったもの。また、織物。ぬの。「木綿切れ」「余り切れぎれ
書画などの、古人の筆跡断片断簡。「高野切れぎれ」「古筆切れぎれ
刃物の切れぐあい。切れ味。「包丁の切れがにぶる」

㋐頭脳や技術の働きの鋭さ。「頭の切れのいい人」「技に切れがない」
㋑投げた球の曲がりぐあいの鋭さ。「カーブ切れがいい」
㋒さらっとして後に残らない口あたり。「切れのいいウイスキー」

㋐水気などがなくなること。また、そのぐあい。「油の切れがよくないフライ」
㋑付着していたものや残っていたものがなくなること。また、そのぐあい。「泡の切れのよい洗剤」「たん切れをよくする薬」
目じりの切れ込みのぐあい。「切れの長い目」
石材の体積の単位。一切れは1尺立方で、約0.028立方メートル。
(「ぎれ」の形で)名詞の下に付き、そのものを使い切っている意を表す。「期限切れ」「在庫切れ
同類の中の末端の一人。はしくれ。
「望んでいくさに立ってこそ男の―ともいふべけれ」〈浄・用明天王
[接尾]助数詞
切ったものを数えるのに用いる。「たくあん一切れ」「ようかん二切れ
江戸時代一分金を数えるのに用いる。
「白銀五百匁二包み、小判二十五両一歩合わせて四十―」〈浄・二枚絵草紙〉
[下接語]板切れ紙切れ半切れ一切れ棒切れ襤褸ぼろ切れ(ぎれ)当て切れ有り切れ歌切れ・裏切れ・恵比須えびす切れ木切れきん切れ小切れ切れ古代切れ古筆切れこま切れ時代切れ竹切れ裁ち切れ継ぎ切れ出切れ共切れ布切れ切れふる切れ名物切れ寄せ切れ
[類語]切片切れ端端くれ断片こく飲み口

ぎれ【切れ】

き(切)れ7」に同じ。「時間切れ」「種切れ

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「切れ」の意味・読み・例文・類語

きれ【切・布】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( 動詞「きれる(切)」の連用形の名詞化 )
    1. 切れて残った、物の一部分。切れ端。
      1. (イ) 木、紙、髪などの切れ端。
        1. [初出の実例]「宮法師になりて、髪のきれをおこせ給へるを」(出典:和泉式部集(11C中)上)
      2. (ロ) 布帛(ふはく)の切れ端。また、広く反物(たんもの)、織物をもいう。
        1. [初出の実例]「腰には薦のきれをまきてぞありける」(出典:閑居友(1222頃)上)
      3. (ハ) 書画などの、古人の筆跡の断片。断巻。「高野切」「本阿彌切」「つたぎれ」など。
        1. [初出の実例]「弘法大師の心経のきれを三くだりばかり求め出して」(出典:咄本・昨日は今日の物語(1614‐24頃)上)
      4. (ニ) ほんのわずか。
        1. [初出の実例]「又は我家に食物のきれがない程に鳥も不来と云心ぞ」(出典:四河入海(17C前)一三)
    2. 数多い同類の中の一人。多く、「とるにたりない者だが」という謙遜の気持を含めていう。はしくれ。
      1. [初出の実例]「とをい国に王のきれにないて名ばかり王にしてをかれたぞ」(出典:玉塵抄(1563)四三)
    3. つながっているもの、続いているものなどが切れること。また、その切れ目や切れぐあい、刃物の切れあじ。
      1. [初出の実例]「この百両を手切(てきれ)にやり、お主へ御恩を送らせて、それを切(キレ)にさっぱりと、縁を切ってしまふほどに、どうぞその金下さんせいな」(出典:歌舞伎・曾我綉侠御所染(御所五郎蔵)(1864)五幕)
    4. ( 目について ) 目じりの方へ切れ込んでいるぐあい。
      1. [初出の実例]「癇癖知るる眼尻のきれ、色白にして柔和なれど侮り難き風情あるは」(出典:椀久物語(1899)〈幸田露伴〉二)
    5. 小判などに付いた、きず。また、きずのついた小判。
      1. [初出の実例]「其小判は切(キレ)もなく、かる目もないかととへば」(出典:浮世草子・好色二代男(1684)三)
    6. 端女郎が色を売るのに、時間を区切ること。
      1. [初出の実例]「きれをうるとは、いかなるゆへとたづね侍れば」(出典:随筆・吉原失墜(1674))
    7. 遊女をいった、和泉国(大阪府)堺の語。
      1. [初出の実例]「伊勢の遊び女を彦右といひ、尾州にては壁むしり〈略〉泉州堺にてはきれといふ」(出典:評判記・色道大鏡(1678)一四)
    8. ( 「一切れ」のかたちで ) 男女のかりそめの情事
      1. [初出の実例]「しんぞ一きれふるまひたい」(出典:浄瑠璃・淀鯉出世滝徳(1709頃)上)
    9. 立花で、枝の前に十文字になるように他の枝を出すこと。
      1. [初出の実例]「よその枝のよこへ出たるまへへ立(たて)に出し、たてに出たる前へよこに出して、十文字になすべからず。切(キレ)とてきらふ事也」(出典:男重宝記(元祿六年)(1693)三)
    10. 石材の一尺(約三〇センチメートル)立方のもの。
    11. 人の才能や技術などの鋭さ。「頭の切れがいい」「切れのいい論文」
    12. 投げた球などの勢いや冴え。また、その曲がりぐあいの鋭さ。「カーブの切れが悪い」
  2. [ 2 ] 〘 接尾語 〙
    1. 切ったものを数えるのに用いる。
      1. [初出の実例]「汝が身は先(まづ)二百にきりさきて、おのおの一きれづつ取りてんとす」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)八)
    2. 江戸時代、一分金を数えるのに用いる。枚または個の代わりに使われる。
      1. [初出の実例]「右入用の金有増金一分十六万八百十六切と云々」(出典:坂上池院日記‐万治四年(1661))

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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