加える(読み)クワエル

デジタル大辞泉 「加える」の意味・読み・例文・類語

くわ・える〔くはへる〕【加える】

[動ア下一][文]くは・ふ[ハ下二]
今まであるものに、さらに他のものを添えて合わせる。現在あるものの上に付け足す。また、そのようにして数量や度合いを増す。「だし汁を―・える」「規約に一項を―・える」「列車速度を―・える」
同じことをする人の集まりに含める。仲間に入れる。「一行に―・える」「役員に―・える」
ある作用を他におよぼす。影響を与える。「危害を―・える」「一撃を―・える」「手心を―・える」「説明を―・える」
あるものを付ける。載せる。
「それに判を―・へよ」〈今昔・三一・二四〉
[補説]室町時代以降はヤ行にも活用した。→加ゆ
[用法]くわえる・そえる――「もう一品加える(添える)」「言葉を加える(添える)」などでは相通じて用いる。◇「加える」はあるものに他のものを入れて一つにしたり、何らかの作用を他に与えたりすること。「二に三を加える」「仲間に加える」「攻撃を加える」などと用いる。◇「添える」はすでに満たされ、完成しているものに、さらに何かを付け加える意。「贈り物手紙を添える」「舞台に花を添える」◇類似の語に「足す」がある。「足す」は、必要量が満たされるように足りないものを補い加える意。「煮物が焦げないように水を足す」などと用いる。
[類語]足す添える加わる付け足す付け加える付ける付する継ぎ足す花を添える添加添付付加肉付け加味追加割り増し

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「加える」の意味・読み・例文・類語

くわ・えるくはへる【加】

  1. 〘 他動詞 ア行下一(ハ下一) 〙
    [ 文語形 ]くは・ふ 〘 他動詞 ハ行下二段活用 〙
  2. ある事物の上にさらに事物を添える。つけたす。添える。付加する。
    1. [初出の実例]「或本(あるふみ)に、学問僧知弁(ちへん)義徳(きとく)、学生坂合(さかあひ)部連(むらし)磐積(いはつみ)を以て増(クハヘ)たり」(出典:日本書紀(720)白雉四年五月(北野本訓))
  3. 程度を増す。
    1. [初出の実例]「女は今よりそひたる身のなげきくはへて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)浮舟)
  4. 位などを上げる。のぼす。
    1. [初出の実例]「『左中弁にくはへさせ給へ』と申しければ」(出典:今鏡(1170)一)
  5. 仲間に入れる。とり入れる。
    1. [初出の実例]「住吉の浜といふをくはへてうみつらをよめ」(出典:阿波国文庫旧蔵本伊勢物語(10C前)六八)
    2. 「つくろふべき所々のあづかり、今くはへたる家司(けいし)などに仰せらる」(出典:源氏物語(1001‐14頃)松風)
  6. 置く。当てる。
    1. [初出の実例]「延暦寺に寄する寄文を書儲て、其に判を加へよと押責ければ」(出典:今昔物語集(1120頃か)三一)
  7. ある作用を他に及ぼす。また、特に、好ましくないことを相手にこうむらせる。
    1. [初出の実例]「彼れは怨を為りと雖も、而も報を加(クハヘ)ず」(出典:地蔵十輪経元慶七年点(883)四)
  8. 治療、あわれみなどを施す。
    1. [初出の実例]「宋朝より勝(すぐれ)たる名医わたれり。〈略〉是をめし請(しゃう)じて医療をくわへしめ給へ」(出典:平家物語(13C前)三)
  9. たし算をする。たす。〔数学ニ用ヰル辞ノ英和対訳字書(1889)〕

加えるの補助注記

室町時代頃から「くはゆ(る)」が使われたが、その明らかな例は「くわゆ」の項にあげた。→くわゆ

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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