(読み)ヒツ

デジタル大辞泉 「匹」の意味・読み・例文・類語

ひつ【匹】[漢字項目]

常用漢字] [音]ヒツ(漢) [訓]ひき
〈ヒツ〉
対になる相手。「匹偶匹敵
一人の男や女。また、身分の低い者。「匹夫匹婦
馬を数える語。「匹馬馬匹
ひきびき・ぴき)〉「匹物一匹狼いっぴきおおかみ
[名のり]あつ・とも

ひき【匹/×疋】

[名]
2反続きの反物単位として表す語。大人着物羽織とを対で作るときなどに用いる。
銭を数える単位。古くは10文、のち25文を1匹とした。
[接尾]助数詞動物・鳥・昆虫・魚などを数えるのに用いる。上に来る語によっては「びき」「ぴき」となる。「2―の猫」

き【匹/×疋】

[接尾]《「ぎ」とも》助数詞。
馬などを数えるのに用いる。
ゆきやらで雪の尾花と見つるかなひと―ふた―の駒にまかせて」〈夫木・一八〉
反物の布帛ふはくを数えるのに用いる。
「幾―ともえこそ見わかね秋山もみぢの錦よそにたてれば」〈後撰・秋下〉

むら【匹/×疋】

[接尾]助数詞。巻いた織物を数えるのに用いる。
「くれはどりといふ綾をふた―包みてつかはしける」〈後撰・恋三・詞書〉

びき【匹/×疋】

[接尾]ひき(匹)」に同じ。「三―の子猫

ぴき【匹/×疋】

[接尾]ひき(匹)」に同じ。「一―の犬」

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「匹」の意味・読み・例文・類語

ひき【匹・疋】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 布帛、とくに絹織物の長さの単位。古くは四丈、令制では、小尺で五丈一尺または五丈二尺(幅二尺二寸)。広狭、材質、産地および時代によって変化があったが、二端を一匹とするようになり、江戸時代寛文五年(一六六五)に、鯨尺二丈六尺を一端、五丈二尺を一匹と決めた。現在は、鯨尺六丈(約二二・八メートル)で、幅九寸五分を標準とする。
      1. [初出の実例]「凡調絹絁、〈略〉絹絁八尺五寸。六丁成疋。美濃絁六尺五寸。八丁成匹」(出典:令義解(718)賦役)
      2. [その他の文献]〔漢書‐食貨志下〕
    2. 銭を数える単位。十文(もん)の称。銭一貫文が百疋にあたる。中世近世を通じて儀礼的な場合や贈答の際に用いた。明治に入り、明治四年(一八七一)、新貨条例により、一両が一円、一分が二十五銭となった。そこで百疋は二十五銭(一疋は二厘五毛)に置き換えられることになり、旧式の儀礼を踏襲する場合には、昭和初期まで一部にこの単位が用いられた。
      1. [初出の実例]「唐人の物を六七千疋許借てけり」(出典:今昔物語集(1120頃か)二六)
  2. [ 2 ] 〘 接尾語 〙 動物・昆虫・魚などの数を数えるのに用いる。もとは馬や牛など獣類にいったが、次第に小動物にもいうようになった。上に来る語によっては「ぴき」「びき」となる。
    1. [初出の実例]「御むま四十疋」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜上)
    2. 「大なる犬一ぴき出できて」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)一三)
    3. [その他の文献]〔書経‐文侯之命〕

匹の補助注記

「匹」「疋」は、ヒツの音で同字に扱われるが、日本では、古来ヒキと読んできた。このヒキは、馬を引くことに関係のある和語とも説かれるが、たとえば、「下学集」には音読の合符が付されており、一種の字音として慣用されてきたとみられる。


き【匹・疋】

  1. 〘 接尾語 〙 ( 「ひき(匹)」の変化した語か )
  2. ( 「ぎ」とも ) 人を数える語か。
    1. [初出の実例]「愛しき我が邇妹(なにも)の命を、子の一木(ひとつぎ)に易へつるかも」(出典:古事記(712)上)
  3. ( 「ぎ」とも ) 馬を数える語。
    1. [初出の実例]「山辺の 小嶋子ゆゑに 人衒(て)らふ 馬の八つ擬(ギ)は 惜しけくもなし」(出典:日本書紀(720)雄略一三年三月・歌謡)
  4. 布帛の長さの単位に用いる語。ひき。和歌では「木」と掛けて用いられることが多い。
    1. [初出の実例]「幾きともえこそ見わかね秋山のもみぢの錦よそにたてれば〈壬生忠岑〉」(出典:後撰和歌集(951‐953頃)秋下・三八七)

匹の補助注記

( 1 )の「書紀」の例、前田本では「擬」を「ケ」と訓んでいる。
( 2 )の語源を「きる(切)」の語根とする説(大言海等)もある。


ひつ【匹】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. なかま。同類。
      1. [初出の実例]「世界の典籍に若し此の匹を求めるなら」(出典:読書放浪(1933)〈内田魯庵〉東西愛書趣味の比較)
    2. ひき(匹)[ 一 ]
  2. [ 2 ] 〘 接尾語 〙ひき(匹)[ 二 ]

ぎ【匹】

  1. 〘 接尾語 〙き(匹)

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普及版 字通 「匹」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 4画

[字音] ヒツ・ヒキ
[字訓] たぐい・つれあい・ならぶ

[説文解字]
[金文]

[字形] 象形
馬が並んでいる前脚と胸腹部とを、複線的にしるしたもので、もと馬匹を示す字であったと思われる。金文の賜与に馬匹・馬四匹という例があり、四匹は合文の形でしるすことが多い。〔説文〕十二下に「四なり。匸(けい)に從ふ。(かさね)にして一匹なり。は亦聲なり」と布帛の長さをいうとするが、字は(八)に従う形でなく、布帛の長さというのも原義でない。馬匹を複数的に表示するところから匹配・匹の意となり、また匹敵のように用いる。字はまた疋に作る。匹に足の形を加える。

[訓義]
1. たぐい、つれあい、あう、あいて。
2. ならぶ、とも、ともがら。
3. 獣を数える単位、ひき。
4. ひとり、ひとつのもの、匹夫。
5. 布帛の長さ、四丈、八尺を五たび重ねた長さ。

[古辞書の訓]
〔名義抄〕匹 トモ・フタツ・カツ・メグル・ナラブ・アツ・タクラブ・トモガラ・ヒトコロヘリ・ヒトコロリ・ムラ・ヒトシ・タグヒ

[語系]
匹phiet、phiei、配phui、妃phiuiは声近く、みな配匹の意がある。比・妣pieiも同系の語。人の相並ぶを比といい、馬の相並ぶを匹という。

[熟語]
匹帛・匹亜・匹・匹概・匹禽・匹偶・匹・匹群・匹好・匹合・匹儕・匹士・匹似・匹豎・匹処・匹庶・匹如・匹雛・匹製・匹馳・匹儔・匹鳥・匹敵・匹嫡・匹馬・匹配・匹夫・匹婦・匹聘・匹游・匹侶・匹裂・匹練
[下接語]
亜匹・一匹・仇匹・旧匹・偶匹・群匹・好匹・摯匹・丈匹・乗匹・正匹・対匹・儔匹・馬匹・配匹・妃匹・妙匹・無匹・良匹・倫匹・令匹・儷匹・裂匹

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