精選版 日本国語大辞典 「梅」の意味・読み・例文・類語
うめ【梅】
(平安以後「むめ」と表記された例がかなり多い)
[1] 〘名〙
① バラ科の落葉高木。中国原産で奈良時代以前に渡来したといわれ、各地で栽培されている。宮崎、大分県の一部の山間には、野生状態のものが見られ、園芸品種は三〇〇以上ある。高さ六~一〇メートルに達する。樹皮は堅く黒褐色。葉は卵形で先が急に狭くなり、縁には浅い鋸歯(きょし)がある。早春、葉に先立って香りのよい五弁花が咲く。色は白、紅、淡紅などがあり八重咲きもある。実は直径三センチメートルほどの球形か楕円形で一方に浅い溝をもち中央に堅い核があり、この中に種子が一つはいっている。梅雨の頃に熟し、食用とするが、未熟のものは青酸を含み有毒。梅干し、梅酒、梅びしおなどを作る。果肉を煮つめたものや皮をむいて薫製とした烏梅(うばい)は胃腸薬、下痢止め、咳止めとされる。また、室町頃から樹皮の煎じ汁を褐色の染料に用いた。材は器物を作る材料とする。好文木(こうぶんぼく)。木花(このはな)。かざみぐさ。《季・春》
▼うめの実《季・夏》
※万葉(8C後)五・八一八「春さればまづ咲く宿の烏梅(ウメ)の花ひとり見つつや春日(はるひ)くらさむ」
※十訓抄(1252)六「散しほれける梅は有ける。好文木とぞ云ける」
② 特に、紅梅と区別して、白梅をいう。
※源氏(1001‐14頃)末摘花「むめはけしきばみほほゑみ渡れる、とりわきて見ゆ。はしがくしのもとの紅梅、いと疾(と)く咲く花にて色づきにけり」
③ =うめがさね(梅襲)
※枕(10C終)八七「御使に、白き織物のひとへ、蘇芳(すはう)なるはむめなめり」
④ 紋所の名。梅の花を図案化したもの。うめのはな、うらうめ、むかううめ、うめつるなど多くの種類がある。
※洒落本・突当富魂短(1781)品川遊び「それから世界が酒となり、梅や三な九で九でと見せも引ければ」
⑥ (もと、揚げ代が二五匁で、天神の祭日の二五日と同じ数だったことから、天神としてまつられた菅原道真が梅を愛したという故事に結びつけて) 江戸時代の遊女の位の一つである「天神」の異称。太夫に次ぐ高位。天職。梅の位(くらい)。〔評判記・色道大鏡(1678)〕
⑦ 花札で、二月を表わす梅を描いた札。梅に鶯(うぐいす)の一〇点札、赤短の五点札、および、かす札二枚がある。
[2]
[二] 荻江節。四世荻江露友作曲。作詞者、初演年代未詳。「松」「竹」とともに三部曲をなす。梅に鶯を配して、春ののどかさをうたった小品。
[語誌](1)万葉仮名では「宇米」「有米」「烏梅」などと表記され、平安時代になると「むめ」と記されることが多い。
(2)「万葉集」では、梅の歌は、植物としては萩に次いで多く、桜をしのぐ。万葉歌の梅はすべて白梅と解されるが、平安時代には、「木の花は、濃きも薄きも紅梅」〔枕‐三七〕など紅梅に言及する例も登場し、「和漢朗詠集」にも梅・紅梅双方の項目が設けられる。
(2)「万葉集」では、梅の歌は、植物としては萩に次いで多く、桜をしのぐ。万葉歌の梅はすべて白梅と解されるが、平安時代には、「木の花は、濃きも薄きも紅梅」〔枕‐三七〕など紅梅に言及する例も登場し、「和漢朗詠集」にも梅・紅梅双方の項目が設けられる。
ばい【梅】
〘名〙
① 植物「うめ(梅)」の漢名。
※拾玉得花(1428)「桜・ばい・桃・梨なんどの、色々の花木にもわたるべし」
② 「てんじん(天神)(一)⑤」の別称。
※浮世草子・傾城禁短気(1711)一「昔よりの身躰に応じ、松梅(バイ)鹿の位を分かち」
むめ【梅】
〘名〙 ⇒うめ(梅)
うめ【梅】
姓氏の一つ。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報