四日市(市)(読み)よっかいち

日本大百科全書(ニッポニカ) 「四日市(市)」の意味・わかりやすい解説

四日市(市)
よっかいち

三重県北部、伊勢(いせ)湾に臨む商工業・港湾都市。1897年(明治30)市制施行。1930年(昭和5)塩浜(しおはま)、海蔵(かいぞう)の2村、1941年富田(とみだ)、富洲原(とみすはら)の2町と常磐(ときわ)、日永(ひなが)、羽津(はしづ)の3村、1943年四郷(よごう)、内部(うつべ)の2村、1954年小山田(おやまだ)、川島(かわしま)、神前(かんざき)、桜、三重、県(あがた)、八郷(やさと)、下野(しもの)、大矢知(おおやち)、河原田(かわらだ)の10村、1957年水沢(すいざわ)、保々(ほぼ)の2村と三鈴(みすず)村の一部を編入。2005年(平成17)楠町(くすちょう)を編入。四日市の地名は1473年(文明5)6月の「外宮(げくう)庁宣」に初出。当時、港町として急速に発展しており、このころすでに「四の日」の定期市も定着していたものであろう。

 市域は、東は伊勢湾岸から西は滋賀県境の鈴鹿山脈(すずかさんみゃく)鎌(かま)ヶ岳に及び、その間の地形は鈴鹿山脈東麓(ろく)の断層崖(がい)とそれに続く丘陵、ここから流下する朝明(あさけ)、海蔵、三滝(みたき)、鈴鹿などの河川によって形成された扇状地沖積平野からなる。市街は湾岸沿いに南北に発達し、近年は西方の丘陵地に工業団地や宅地が形成されている。東海道の渡津(としん)として発達した四日市港は、現在国際拠点港湾の指定を受けており、中国、韓国、シンガポールなどに定期航路がある。陸上交通では名古屋へ約30分で達する近畿日本鉄道(近鉄)名古屋線とJR関西本線が幹線鉄道で、ほかに津市と結ぶ伊勢鉄道や、近鉄湯の山線、三岐鉄道(さんぎてつどう)三岐線、四日市あすなろう鉄道の八王子線・内部線がある。道路は国道1号、23号、306号、365号、477号のほか、東名阪自動車道が通じ、市内に四日市東、四日市の二つのインターチェンジがあり、四日市ジャンクションで伊勢湾岸自動車道、新名神高速道路と接続する。

 古くから東海道の海陸交通の要地であったが、江戸初期に東海道五十三次の宿駅が定められたとき、四日市もその一つとなり、桑名とともに宮(みや)宿(名古屋市熱田(あつた))への海上路の拠点としてにぎわった。東海道から分岐して伊勢へ向かう参宮街道の日永の追分(おいわけ)もあり、交通と商業の都市として栄えた。明治維新後、1872年3月から翌年の12月まで三重県庁が四日市に置かれた。近代港湾としての四日市の発展は、1873年以来の稲葉三右衛門(いなばさんえもん)らの築港事業への献身に負うところが大きく、1899年には開港場に指定され、名古屋の外港の役割を果たした。官営鉄道の東海道線が四日市を外れて関ヶ原経由に決定したことは、交通都市四日市にとっては大打撃であったが、これに対抗して地元資本は1888年に関西鉄道会社を設立し、港を利用して紡績、食品、窯業をおこし工業都市への転換を図った。第二次世界大戦後、四日市港の旧海軍燃料廠(しょう)跡に三菱(みつびし)系資本を中心とする大規模な石油化学コンビナートが出現し、最盛期には、コンビナートの工業出荷額が市全体の工業出荷額の70%を占めた。一方、コンビナートからは大量の硫黄(いおう)酸化物が排出され、周辺住民に「四日市喘息(ぜんそく)」の公害病をもたらした。近年は内陸に精密機械、電子工業などの工場立地が進み、中京工業地帯の一角をなしている。伝統工芸としては茶器製造を主とする万古焼(ばんこやき)がある。

 文化・芸術面ではみるべきものが少ないが、1988年には市も出資した私立の四日市大学、2007年には私立の四日市看護医療大学が開学した。さらに1993年(平成5)にはプラネタリウムを併設した市立博物館、1997年には全天候型スポーツ施設「四日市ドーム」が開場している。なお、観音寺(かんのんじ)の慈恵大師坐像(ざぞう)、大聖院(だいしょういん)の不動明王立像、善教寺の阿弥陀如来(あみだにょらい)立像などの国指定重要文化財があり、1996年には四日市旧港港湾施設が近代化遺産として国の重要文化財に指定された。富田の鳥出神社の鯨船行事は国指定重要無形民俗文化財で、ユネスコの無形文化遺産に登録。またイヌナシ・アイナシ自生地、御池沼沢(おいけしょうたく)植物群落は国指定天然記念物。鎌ヶ岳や宮妻渓谷(宮妻峡)は鈴鹿国定公園の一部。面積206.52平方キロメートル、人口30万5424(2020)。

[伊藤達雄]

『『四日市市史』(1960・四日市市)』『『四日市市史』全20巻(1988~2002・四日市市)』


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