広くは分立する諸党派が小異を捨てて,共通する大きな目的のために団結することをいい,このような動きは歴史上たびたびあらわれたが,狭義には1891年末に開かれる第1議会に向けて,在野諸党派が連合もしくは合同しようとした動き,すなわち大同団結運動を指す。民権運動は,1884年には自由党の解党で停滞していたが,86年10月星亨,中江兆民らが発起人となり,旧自由党・改進党有志の全国有志大懇親会が開かれたのがきっかけとなり,再び活発になる。そこでは両党の過去のいきがかりを忘れ〈小異を捨てて大同を採らざるべからず〉と発起人は訴えた。翌年には条約改正問題で世論は沸騰,三大事件建白運動(地租軽減,言論集会の自由,外交失政の挽回)のため各地から有志が上京したが,保安条例による要注意人物の皇居外三里への追放により,かえって地方における運動が広がる結果となった。大同団結運動が起こるのはこの時である。しかし第1議会の〈民党〉形成までにはなお紆余曲折の経過をたどった。(1)自由党系と改進党系の対立,(2)自由党系各派の内部対立(東北派,土佐派,関東派,九州派),(3)屈辱的条約改正反対の立場から自由党系に合流した国権派と改進党との確執などがからみ合い,この運動自体,内部の軋轢(あつれき)の激しさを示している。一般に大同団結は,この場合と同様,過去のいきがかり,主導権争いによる対立などがかえって浮かび上がる傾向がある。
執筆者:寺尾 方孝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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