(読み)チョウ

デジタル大辞泉 「張」の意味・読み・例文・類語

ちょう【張】[漢字項目]

[音]チョウチャウ)(呉)(漢) [訓]はる
学習漢字]5年
たるまずに、ぴんとはる。横に広がりのびる。「張力拡張緊張伸張怒張膨張
意見などを大いに打ち出す。「誇張主張
[名のり]つよ・とも
[難読]尾張おわり

ちょう〔チヤウ〕【張】

[名]二十八宿の一。南方の第五宿。海蛇座の一部にあたる。ちりこぼし。張宿。
[接尾]助数詞
弓・琴など、弦を張ったものを数えるのに用いる。
「弓は一人して二―三―、矢は四腰五腰も用意せよ」〈盛衰記・二二〉
幕や蚊帳かやなど、張りめぐらすものを数えるのに用いる。
「幕一―」〈延喜式大蔵省
紙や皮などを数えるのに用いる。
「懐の中より一―の文書を抜き出でて」〈今昔・六・四一〉

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精選版 日本国語大辞典 「張」の意味・読み・例文・類語

はり【張】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( 動詞「はる(張)」の連用形の名詞化 )
    1. たるみなく、のびたり、ふくらんだり、開いたりすること。また、その具合。
      1. [初出の実例]「目のはりりんとして」(出典:浮世草子・好色五人女(1686)三)
    2. 博打(ばくち)で、物や金銭などを賭(か)けること。また、その賭け具合。
      1. [初出の実例]「因果とはりがかたっつりになって、あき目へあき目へと出でければ」(出典:黄表紙・莫切自根金生木(1785)中)
    3. 引いたり、踏みこたえたりする力。「張りの強い弓」
      1. [初出の実例]「弓と曲げても張の弱い腰に無残や空辨当を振垂(ぶらさ)げて」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一)
    4. 肉付き、声、気持などが引き締まっていること。
      1. [初出の実例]「気象は張(ハリ)がなくって、少しグウタラの方のやうだが」(出典:当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉七)
      2. 「部屋の中から『どうぞ!』と、はりのある若い声が返ってきた」(出典:われら戦友たち(1973)〈柴田翔〉一)
    5. 特に、義太夫・謡曲などで上音(じょうおん)にうたう節。
      1. [初出の実例]「『をぐるまの』、『まの』をはりにていふて」(出典:申楽談儀(1430)犬王)
    6. 物事を行なおうとする意欲。物事をするかい。張合い。
      1. [初出の実例]「生きて行くはりとでもいふ奴なんだらう」(出典:白鳥の歌(1948)〈内村直也〉)
    7. 自分の意志や意見をどこまでも通そうとする強い精神。意地。いきじ。いきはり。
      1. [初出の実例]「はり少くて、いきも足らず」(出典:評判記・難波物語(1655))
    8. 色恋の相手としてつけねらうこと。
      1. [初出の実例]「最うよもや張(ハリ)にはあるけめへ」(出典:滑稽本浮世床(1813‐23)二)
    9. はりて(張手)」の略。
  2. [ 2 ] 〘 接尾語 〙
    1. 弦をはった弓・琴などの類を数えるのに用いる。
    2. 張って作ったもの、張りめぐらして用いるもの、すなわち、ちょうちん・幕・蚊帳などを数えるのに用いる。
      1. [初出の実例]「かや三はり」(出典:咄本・軽口御前男(1703)四)

ちょうチャウ【張】

  1. [ 1 ] 〘 接尾語 〙
    1. 弓・琴など、弦を張ったものを数えるのに用いる。
      1. [初出の実例]「御弓壱佰張 梓御弓八十四張」(出典:正倉院文書‐天平勝宝八年(756)六月二一日・東大寺献物帳)
    2. 幕・蚊帳(かや)など張りめぐらすものを数えるのに用いる。
      1. [初出の実例]「鋪設〈略〉長茵肆拾玖張 廿六枚麻席廿三枚縄席」(出典:多度神宮寺伽藍縁起資財帳‐延暦二〇年(801)一一月三日)
      2. [その他の文献]〔春秋左伝‐昭公一三年〕
    3. 紙や皮などを数えるのに用いる。
      1. [初出の実例]「懐の中より一張の文書を抜き出でて」(出典:今昔物語集(1120頃か)六)
  2. [ 2 ] 〘 名詞 〙 きばること。見えをはること。
    1. [初出の実例]「朝から芸子やおやまぐるひも、あんまり張(チャウ)でござらふ」(出典:浄瑠璃・桂川連理柵(おはん長右衛門)(1776)下)
  3. [ 3 ] 二十八宿の南方七宿の五番目。南方に位するもの。海蛇(うみへび)座のμ(ミュー)。中国の星座、朱鳥(しゅちょう)の張っている翼の部分にあたる。張宿。ちりこぼし。

ばり【張】

  1. 〘 接尾語 〙
  2. 人数を表わす数詞に付いて、弓の強さを表わす。その人数をもってつるを張るような強さの弓の意。
    1. [初出の実例]「五人張の弓」(出典:保元物語(1220頃か)上)
  3. 名詞や人の名の下に付けて、それに似ていること、その流儀を真似ていることを表わす。
    1. [初出の実例]「これ如々楽助張(バリ)の煙筒(きせる)をふけば」(出典:俳諧・三千風笈さがし(1701)上)

はらろ【張】

  1. 〘 連語 〙 ( 動詞「はる(張)」に、完了の助動詞「り」の連体形の付いた「張れる」にあたる上代東国方言 ) ふくらんでいる。芽をふいている。
    1. [初出の実例]「青柳の波良路(ハラロ)川門(かはと)に汝(な)を待つと清水(せみど)は汲まず立処(たちど)ならすも」(出典:万葉集(8C後)一四・三五四六)

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普及版 字通 「張」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 11画

[字音] チョウ(チャウ)
[字訓] はる・ひろげる

[説文解字]
[その他]

[字形] 形声
声符は長(ちよう)。〔説文〕十二下に「弓の弦を施すなり」とあり、〔段注〕に「弦を(し)く」の誤りであるという。長は長大にする意。〔礼記、雑記下〕に「一張一弛は武のなり」とあり、緩急の宜しきを得ることをいう。

[訓義]
1. はる、ゆみのつるをはる、はりひろげる。
2. ひろげる、ひらく、つらねる、ほどこす。
3. 大きくする、のばす、つよめる、さかんにする。
4. たぶらかす、あざむく。

[古辞書の訓]
名義抄〕張 ハル・ヒラク・ヤドル・マサル・マク・オホイナリ・アザムク/張 タチコハル/張里 ムマグスシ 〔立〕張 アクロナリ・マサル・ハル・ヒル・ヒラク・ヒコクルナリ 〔字鏡集〕張 ユミハル・ハル・ツネニ・ヤドル

[語系]
張・漲・脹tiangは同声。水の満つるを漲、腹のふくれるを脹という。暢thiangは、伸暢の意。掌tjiangも声近く、手をひろげ掌握する意がある。

[熟語]
張飲・張宴張乖・張解・張楽・張弓・張狂張弧・張口・張皇・張施張睛・張設・張胆・張陳・張眉張榜・張本・張網・張目・張羅
[下接語]
一張・乖張張・拡張・虚張・緊張・弧張・誇張・更張・高張・弛張・施張・鴟張・主張・伸張・設張・増張・惆張・張・張・怒張・奮張・膨張・雄張

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