(読み)ジ

デジタル大辞泉 「慈」の意味・読み・例文・類語

じ【慈】[漢字項目]

常用漢字] [音](呉) [訓]いつくしむ
いつくしむ。情けをかける。恵み深い。「慈愛慈雨慈善慈悲慈母仁慈大慈
母のこと。「家慈」
[名のり]しげ・しげる・ちか・なり・やす・よし
[難読]慈姑くわい

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精選版 日本国語大辞典 「慈」の意味・読み・例文・類語

じ【慈】

  1. 〘 名詞 〙 いつくしむこと。また、なさけぶかいこと。
    1. [初出の実例]「無慈詐親是彼怨」(出典:日蓮遺文‐開目抄(1272))
    2. [その他の文献]〔老子‐六七〕

いつくし‐み【慈】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「いつくしむ(慈)」の連用形名詞化 ) 慈愛。恵み。恩沢。
    1. [初出の実例]「いつくしみのこころは、たへにおほきなるくものごとし」(出典:妙一本仮名書き法華経(鎌倉中)八)

うつくしび【慈】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「うつくしぶ(慈)」の連用形の名詞化 ) 慈愛。恩沢。いつくしみ。〔書陵部本名義抄(1081頃)〕

いつくし‐び【慈】

  1. 〘 名詞 〙いつくしみ(慈)

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普及版 字通 「慈」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 13画

(旧字)
14画

(異体字)
11画

[字音] ジ・シ
[字訓] いつくしむ

[説文解字]
[金文]

[字形] 形声
声符は(じ)。生・育の意があり、その情をという。〔説文〕十下に「愛なり」とみえる。古くは子をその意に用い、金文の〔大盂鼎(だいうてい)〕に「故に天、異(翼)臨(よくりん)し、子(いつくし)みて先王を(法)保したまへり」、また〔也(やき)〕に「懿(いほ)は廼(すなは)ち子まん」のように用いる。

[訓義]
1. いつくしむ、いつくしみ、なさけ、あわれみの心。
2. 父母にやさしくつかえる。
3. また子の字を用いる。

[古辞書の訓]
〔名義抄〕 ウツクシビ・ウツクシブ・ウタフ・タノム 〔字鏡集〕 タノム・アハレフ・ウツクシ・ウレフ・ツタフ

[語系]
・字dzi、子・tziは声義近く、子を動詞化したものが字・となった。

[熟語]
・慈愛慈渥・慈意・慈育・慈陰慈烏・慈雨慈媼慈恩慈誨・慈顔慈訓慈恵慈姑・慈護慈孝・慈旨・慈石慈恤・慈祥・慈親・慈仁・慈善・慈孫慈衷・慈・慈悲慈愍慈憫慈父慈撫・慈母・慈涙・慈恋・慈和
[下接語]
温慈・家慈・矜慈・恵慈・慶慈・孝慈・仁慈・聖慈・息慈・大慈・不慈・父慈・令慈・和慈

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「慈」の意味・わかりやすい解説



maitrī; maitra

仏教用語。語源的には「友」「親しきもの」を意味する mitraという単語から派生したものであり,真実の友情,純粋の親愛の念を意味している。南方アジアの上座部仏教では,「 (同朋に) 利益と安楽とをもたらそうと望むこと」と注解している。大乗仏教でも,「衆生を愛念することに名づけ,常に安穏と楽事とを求めて,以て衆生に施し利益を与えること」 (『智度論』) と述べている。慈はしばしば「悲」 karuṇāとともに用いられ,慈悲と称される。悲とは,人々から苦しみを除こうとする心情をいう。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【愛】より

…際限なく増大してゆく〈欲望〉というのが,仏教の基本的な,愛の見方である。 梵〈プレーマンpreman〉,巴〈ペーマpema〉:〈愛・愛念・慈〉。〈愛情〉のことで,肯定も否定もされうるが,〈他人・衆人を愛すること〉と〈人々に愛されること〉とは,仏教徒としても大事であるとされた。…

【慈悲】より

…サンスクリットでマイトリーmaitrīあるいはカルナーkaruṇāという。慈と悲と区別していう場合は慈がマイトリー,悲がカルナーに相当する。慈は人びとに楽を与えること,悲は人びとの苦を抜いてあげることをいう。…

※「慈」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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