デジタル大辞泉
「払う」の意味・読み・例文・類語
はら・う〔はらふ〕【払う】
[動ワ五(ハ四)]
1 本体にとって邪魔・不要・無益なものなどを、手や道具を用いて取り除く。除去する。「杉の下枝を―・う」「すすを―・う」「クモの巣を―・う」
2 わきへ追いのける。「手でハエを―・う」
3 横に勢いよく動かす。勢いよく横ざまに振る。「足を―・って倒す」「刀を―・う」
4 貴人の通行や密談などのために、人をその場から去らせる。「人を―・って内密の話をする」
5 力で相手を恐れさせて押さえつける。威圧する。「あたりを―・う風貌」
6 金銭を渡す。支払う。また、納入する。「給料を―・う」「罰金を―・う」「現金で―・う」
7 不要品などを売り渡す。「古道具屋に―・う」
8 自分の物を取り去って、それまでいた所をあける。引き払う。「下宿を―・う」「部屋を―・う」
9 ある目的のために大切なものを使う。費やす。「犠牲を―・う」
10 心を向けたり注いだりする。心を傾注する。「注意を―・う」「敬意を―・う」
11 (「地をはらう」の形で)何もない状態になる。すっかりなくなってしまう。「道義地を―・う」
12 うちほろぼす。討伐する。
「国見しせして天降りまし―・ひ平げ」〈万・四二五四〉
[可能]はらえる
[下接句]辺りを払う・熱火子に払う・御髭の塵を払う・先を払う・重箱の隅は杓子で払え・底を払う・地を掃う・髭の塵を払う
[類語](1)除く・のける・どける・排する/(2)払いのける・はたく/(6)支払う・勘定
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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はら・うはらふ【払・掃】
- 〘 他動詞 ワ行五(ハ四) 〙
- ① 有害・無益・不用のものを取り除く。除去する。
- (イ) 取り捨てる。取り除く。退ける。
- [初出の実例]「この頃の恋の繁けく夏草の刈り掃(はらへ)ども生ひしく如し」(出典:万葉集(8C後)一〇・一九八四)
- 「雲はみなはらひはてたる秋風を松に残して月を見る哉〈藤原良経〉」(出典:新古今和歌集(1205)秋上・四一八)
- (ロ) ちりなどのよごれを除き捨てて清める。はき清める。掃除する。
- [初出の実例]「梓弓欲良の山辺の繁かくに妹ろを立ててさ寝処波良布(ハラフ)も」(出典:万葉集(8C後)一四・三四八九)
- 「二条院にはかたかたはらひみがきて男女待ち聞えたり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)葵)
- (ハ) 罪やけがれを除き去る。→祓う。
- (ニ) 雪、霜、露などを取り除く。また、涙をぬぐう。
- [初出の実例]「御涙をはらひあへ給はず」(出典:源氏物語(1001‐14頃)御法)
- 「まして思へ水のかりねのほどだにぞうはげの霜をはらひわびける」(出典:更級日記(1059頃))
- (ホ) 服従しないものを討ち退ける。乱をしずめる。平定する。
- [初出の実例]「ちはやぶる 人を和(やは)せと まつろはぬ 国を治めと〈一に云ふ掃部(はらへ)と〉」(出典:万葉集(8C後)二・一九九)
- (ヘ) 放逐する。追いやる。
- [初出の実例]「遂に神逐(かむやらひ)の理を以て逐之(ハラフ)〈略〉逐之、此をば波羅賦(ハラフ)と云ふ」(出典:日本書紀(720)神代上)
- (ト) 目前の人を引き下がらせる。先払いをする。また、人払いをする。
- [初出の実例]「帯刀さきに立ちて、道なる人々はらふ」(出典:落窪物語(10C後)二)
- ② ( 「あたりをはらう」などの形で ) まわりのものを圧倒する。威圧する。〔日葡辞書(1603‐04)〕
- ③ 人に売り渡す。売りはらう。処分する。
- [初出の実例]「うぢがきが大なりが致てござるに依て〈略〉在所にてはらふ事がならぬ程に」(出典:虎明本狂言・合柿(室町末‐近世初))
- ④ 上下または左右にはたくような動作をする。
- (イ) 軽くたたく。かすめ打つ。はたく。
- [初出の実例]「池水のみ草もとらで青柳のはらふしづえにまかせてぞ見る〈藤原経衡〉」(出典:後拾遺和歌集(1086)春上・七五)
- (ロ) 刀などを左右に振る。横ざまに切る。なぎ倒す。
- [初出の実例]「敵の靉(むらがっ)て引へたる中へ走り懸り、東西を掃(ハラ)ひ、南北へ追廻し」(出典:太平記(14C後)七)
- (ハ) 軽くはたくようにして、眉づけをする。眉を作る。〔随筆・守貞漫稿(1837‐53)〕
- ⑤ 代金を渡す。支払う。
- [初出の実例]「借(さがり)の有る茶屋・船宿は払ひ給へ清め給へと」(出典:談義本・根無草(1763‐69)前)
- ⑥ ( 注意、関心、尊敬、または犠牲、努力をはらう、などの形で ) 自らの気持をそちらに向けたり力を傾けたりする。
- [初出の実例]「毫も人力に対して尊敬を払(ハラ)はない引き方をする」(出典:満韓ところどころ(1909)〈夏目漱石〉四六)
- 「犠牲を払(ハラ)ふとか献身的態度に出るとか」(出典:青年(1910‐11)〈森鴎外〉一一)
- ⑦ ( 「そろばんをはらう」の形で ) そろばんの玉を、計算する前の御破算の状態にもどす。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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