退ける(読み)シリゾケル

デジタル大辞泉 「退ける」の意味・読み・例文・類語

しり‐ぞ・ける【退ける/斥ける】

[動カ下一][文]しりぞ・く[カ下二]
後方へ下がらせる。引き下がらせる。その場から遠ざける。「通訳を―・けて会談する」
こちらに向かって来るものを負かしたり、寄せつけず追い返したりする。撃退する。「攻め来る敵を―・ける」「凡打に―・ける」「誘惑を―・ける」
申入れ・主張などを受け入れないで、拒む。「審議会勧告を―・ける」「控訴を―・ける判決
職や地位を辞めさせる。「反対派役員から―・ける」
[類語](1追い出す追い立てる追い払う追っ払うたたき出すはじき出すつまみ出す追い落とす打ち払う追い散らす蹴散らす駆り立てる追い返す駆逐追放放逐/(3断る拒むはねつける突っぱねる否む辞する謝する謝絶する拒絶する拒否する辞退する固辞する遠慮する一蹴する不承知難色拝辞する峻拒しゅんきょする/(4免ずる降ろす

の・ける【退ける/除ける】

[動カ下一][文]の・く[カ下二]
そこから他の場所へ移したり、行かせたりする。しりぞける。「道に積もった雪を―・ける」「人を―・けて密談する」
取りのぞく。除外する。「不良品を―・ける」
取り分けて残す。別にする。「売約済の品を―・けておく」
仲間からはずす。のけものにする。「グループから―・けられる」
間に隔たりを置く。離す。
「(横笛ノ)この穴を吹くときは、かならず(吹キ口カラ口ヲ)―・く」〈徒然・二一九〉
補助動詞)動詞の連用形接続助詞「て」を添えた形に付いて、やりにくいことをみごとに、また、思いきってやってしまう意を表す。「少ない日程で作業をやって―・ける」「言いたいことを相手構わず言って―・ける」
のぞ[用法]
[類語]除くどける払う排する

ど・ける【退ける】

[動カ下一][文]ど・く[カ下二]場所をあけるために、そこにあったものを他の場所へ移す。のける。どかす。「故障車を―・ける」
[類語]除くのける払う排する

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「退ける」の意味・読み・例文・類語

の・ける【退・除】

  1. 〘 他動詞 カ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]の・く 〘 他動詞 カ行下二段活用 〙
  2. [ 一 ] のかせる。その位置から離れさせる。どかせる。離す。
    1. 今までいた場所を離れ去らせる。立ちのかせる。
      1. [初出の実例]「立てる車どもをただのけにのけさせて」(出典:枕草子(10C終)二三七)
    2. 距離をおかせる。間を隔てる。
      1. [初出の実例]「この穴を吹く時は必ずのく。のけあへぬ時は物にあはず」(出典:徒然草(1331頃)二一九)
    3. ほかの場所に移す。どける。とりはずす。
      1. [初出の実例]「其の鉢、忽に女の鼻の上に付ぬ。取て去(のけむ)と為(す)るに、更に不落ず」(出典今昔物語集(1120頃か)三)
    4. のぞく。はぶく。除外する。
      1. [初出の実例]「そのいるま言葉をのけて、まんぞくなか、満足になひかおしゃれ」(出典:虎明本狂言・入間川(室町末‐近世初))
    5. ( 「のけておく」の形で用いる ) 別によせて残す。別にする。
      1. [初出の実例]「榎堂で取れたなまこのけて置ておまする程の真実に、外心はなかりき」(出典:洒落本・古契三娼(1787))
  3. [ 二 ] 補助動詞。動詞の連用形に「て」の付いた形に付いて「…てしまう」の意を表わす。
    1. しにくいことをあえてする意を表わす。
      1. [初出の実例]「焼て灰にないてのけて」(出典:史記抄(1477)一八)
      2. 「情談のどさくさ紛れにチョックリチョイといって除(ノ)ける」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一)
    2. 事態がはやくも、あるいは不本意にも起こってしまう意を表わす。
      1. [初出の実例]「小人が政をする程に政は乱てのくるぞ」(出典:京大二十冊本毛詩抄(1535頃)一八)
      2. 「こりゃたわけ、お末はどこに置て来た。アアほんにどこでやらおとしてのけた」(出典:浄瑠璃・心中天の網島(1720)中)

しり‐ぞ・ける【退・斥】

  1. 〘 他動詞 カ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]しりぞ・く 〘 他動詞 カ行下二段活用 〙
  2. あとへひかす。ひきさがらせる。後ろへのかす。
    1. [初出の実例]「呂氏を誅する事を以て斉王に告げしめ、兵を罷(シリソケ)しむ」(出典:史記呂后本紀延久五年点(1073))
  3. 武力腕力をもって、あとへひかす。撃退する。
    1. [初出の実例]「今度平氏の頸ども大路をわたされずは、自今以後なんのいさみあってか凶賊をしりぞけんやと」(出典:平家物語(13C前)一〇)
  4. おいやる。おいはらう。また、よせつけないで遠ざける。
    1. [初出の実例]「王女を屏(シリソケ)宮妃を郤(シリソクル)ことを言ふ」(出典:漢書楊雄伝天暦二年点(948))
    2. 「おのれをつづまやかにし、おごりを退けてたからをもたず」(出典:徒然草(1331頃)一八)
  5. 地位を落とす、またはやめさせる。官職をやめさせる。
    1. [初出の実例]「彼の輔臣を責め〈略〉或は黜(シリソ)け或は放ち」(出典:大唐西域記長寛元年点(1163)三)
  6. 相手の主張・要求・願いなどをことわる。否定する。聞き入れないようにする。
    1. [初出の実例]「山崎闇斎、是を嫉みて、尽く其言を絀(しりぞけ)て」(出典:東潜夫論(1844)王室)

ど・ける【退】

  1. 〘 他動詞 カ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]ど・く 〘 他動詞 カ行下二段活用 〙 その場から離れさせる。他の場所に移す。のける。
    1. [初出の実例]「正月のかざり藁アどけておいて釣瓶縄にするし」(出典:滑稽本・続膝栗毛(1810‐22)一一)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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