日置荘(読み)ひおきのしょう

百科事典マイペディア 「日置荘」の意味・わかりやすい解説

日置荘【ひおきのしょう】

鹿児島県日吉(ひよし)町(現・日置市)北東部に比定される豊前宇佐(うさ)神宮弥勒(みろく)寺領の荘園。〈へき〉とも読む。古代の薩摩国日置郡が分割されて成立。1197年の薩摩国図田帳に日置北(ひおきほく)郷(日置市日吉町)内として〈日置庄三十町〉がみえ,領家弥勒寺,下司(げし)は小野太郎家綱であった。小野家綱はのちの史料に当荘の地頭としてみえる大江家綱と同一人物であろう。1310年日置北郷地頭方から米・稲を借りた又太郎らが日置荘内に逃げ込んだため訴えられ,当荘の下司忠純が質物を返済するよう命じられている。1340年足利直義(ただよし)は島津宗久の日置荘地頭職を安堵しているが,ここにみえる日置荘は日置北郷をさす可能性がある。その後の日置荘については不詳だが,日置北郷と併せて日置荘・日置と呼ばれるようになったと推測される。日置北郷は1187年に平重澄によって摂関(近衛)家に寄進され,1192年には島津忠久惣地頭に任じられた。以後,本所(ほんじょ)近衛家・領家(りょうけ)奈良興福寺一乗院(承久の乱後)・惣地頭島津氏(のち伊作島津氏)・下司薩摩平氏一族(親純系)という支配体制となった。鎌倉時代に惣地頭と領家・下司の間で相論が繰り返されたが,1324年の下地中分(したじちゅうぶん)によって一応決着した。南北朝時代には伊集院(いじゅういん)氏が勢力を伸ばし,伊作島津氏との間で抗争した。応永(1394年−1428年)ころからは島津本宗家の所領となったとみられる。

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改訂新版 世界大百科事典 「日置荘」の意味・わかりやすい解説

日置荘 (ひおきのしょう)

〈へきのしょう〉とも呼ぶ。薩摩国薩摩郡日置郷(現,鹿児島県日置市など)を母体とする荘園。平安時代末期,同郷は南北2郷に分かれ,うち北郷内70町と南郷内36町は荘国両属の寄郡(よせごおり)として摂関家領島津荘に加えられたが,1187年(文治3)本領主系譜をひき下司職をもつ平重澄はこれを島津荘の一円領として寄進しなおしたので,こののちはしばしば島津荘内日置荘(日置北庄,日置南庄)とも呼ばれるようになった。また残る日置郷内のうち北郷内30町は同じく平安時代末までに宇佐弥勒寺領荘園として立券され,これも同じく日置荘と呼ばれ,日置を名字とする大江姓の本領主が下司として存続した。しかし,1186年惟宗(これむね)(島津)忠久が鎌倉幕府から薩摩・大隅・日向3国にまたがる巨大荘園島津荘の惣地頭に任じられて以後,その一族の伊作氏が,島津荘内日置荘に地頭として君臨し,在来荘園領主(本家摂関家の下に立つ領家興福寺一乗院)や下司たる本領主らと抗争をくりかえし,14世紀初頭までに和与・下地中分を通し着実に現地支配権を拡大した。また,隣接する弥勒寺領日置荘にも,御家人となった本領主を介して同様の圧迫を加え,やがて南北朝以降には両荘ともに島津本宗家の全面的な支配の下におかれ,名称として荘名は残るものの荘園としての実体は消滅した。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「日置荘」の意味・わかりやすい解説

日置荘
ひきしょう

大阪府中央部、堺市(さかいし)東区の一地区。旧日置荘町。地名は、古代日置部(ひきべ)の居住地、中世日置荘の荘園名に由来。現在南海電気鉄道高野(こうや)線が通じ、近郊住宅地として開けている。

[編集部]

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世界大百科事典(旧版)内の日置荘の言及

【日置荘】より

…薩摩国薩摩郡日置郷(現,鹿児島県日置郡)を母体とする荘園。平安時代末期,同郷は南北2郷に分かれ,うち北郷内70町と南郷内36町は荘国両属の寄郡(よせごおり)として摂関家領島津荘に加えられたが,1187年(文治3)本領主の系譜をひき下司職をもつ平重澄はこれを島津荘の一円領として寄進しなおしたので,こののちはしばしば島津荘内日置荘(日置北庄,日置南庄)とも呼ばれるようになった。また残る日置郷内のうち北郷内30町は同じく平安時代末までに宇佐弥勒寺領荘園として立券され,これも同じく日置荘と呼ばれ,日置を名字とする大江姓の本領主が下司として存続した。…

※「日置荘」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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