明るさ(読み)あかるさ

精選版 日本国語大辞典 「明るさ」の意味・読み・例文・類語

あかる‐さ【明さ】

  1. 〘 名詞 〙 ( 形容詞「あかるい」の語幹に接尾語「さ」の付いた語 ) 明るいさま。また、その度合。
    1. [初出の実例]「朝霧にやもめ鴉のそぼぬれて 木の葉ちったる森のあかるさ」(出典:俳諧・望一千句(1649)五)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「明るさ」の意味・わかりやすい解説

明るさ (あかるさ)

この部屋は明るい,あるいは暗いなどと日常でよく使っている人間の感覚表現する言葉であるが,色彩学などの専門の分野ではもう少し厳密な使い方をしている。つまり,明るさbrightnessという言葉は光源色のみに対して用いるのである。光源色とは物体を照らす光源の色であり,いわば色そのものであって,物体に対して私たちが見る物体の色,すなわち物体色とは区別されている。その光源色に対して私たちが感ずるいわば強さの感覚を明るさというのである。明るさが弱いときは暗いと表現し,強くなると明るいと表現し,そしてもっと強くなるとまぶしいと表現する。

 一方の物体色に対しては,明るい,暗いという表現よりも,白い,黒いという言い方のほうが私たちの感ずる感覚をよく表している。したがって物体を見て感ずるその表面の明るさには,“明るさ”ではなく明度lightnessという表現を用いる。明度のいちばん弱いのが黒であり,いちばん強いのが白である。真っ黒は光を全然反射しない物体に対して感ずる明度であるし,真っ白はすべてを反射する物体,例えば酸化マグネシウムを固めた表面に対して感ずる明度である。したがって物体色には上下の限界がある。これに対し前述の光源色の場合は光源からの光をいくらでも強くすることができるから上限がない,つまり明るさはいくらでも大きくなりうるのである。

 明るさを数値で表そうとする試みもある。光源色の強さを表すのに例えば輝度という心理物理量がある。いまその単位で10nt(ニト。1nt=1cd/m2)と100ntの光源色とを比べて見たとき,私たちは後者のほうが明るいと感ずるのは当然であるが,10倍明るいとは感じない。その差はもっと小さいのである。心理物理量の輝度Lと心理量の明るさBとの間には,BaL1/3-B0の関係があるという説もある(aB0定数)。

 明度に対応する心理物理量にはルミナンス・ファクターYというのがある。これは物体の反射率に関係する量で,物体が真っ黒の場合は0(%),真っ白の場合は100(%)の値となる。しかしY=50(%)の物体の明度が,明度の最大値の10の半分,すなわち5とはならない。ルミナンス・ファクターYと明度Vとの間には,VL/10,L=116(Y/Yn)1/3-16の関係があるとされている。ここでYnは一般には100となる定数である。1/3乗という表現がここにもでてきたが,明るさという心理量は光の心理物理量の1/3乗に比例すると考えられている。
照度
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「明るさ」の意味・わかりやすい解説

明るさ
あかるさ
brightness

光が目に入ることによって生じる視感覚の属性。日常生活で使われる概念には次のようなものがある。光源の照明能力を表す明るさを光度といい、光源によって照らされた場所の明るさを照度、ある照度のもとに置かれた物体の明るさ、つまり人の目に感じる明るさを輝度または光束発散度という。同一照度のもとでは白い紙は黒い紙よりも光束発散度が高く、目では明るく感じられるので輝度が高いという。

 人は、星明かりの夜から直射日光の当たる真昼の明るさに適応することができるようになっている。視覚の働くことのできる範囲は、照度でいうとおよそ10-3ルクスから105ルクスである。実に1:108の範囲の明るさに順応する。これは目の網膜が明るさに応じて感光度を変化するからである。暗い所で網膜の感光度が高くなる場合を暗順応、逆に明るい所で感光度が低くなる場合を明順応という。また、目の暗順応状態を暗所視、明順応状態を明所視といい、これらの中間の状態を薄明視という。前述の明るさのもとになる光度、照度、輝度および光束発散度の大きさは、明所視における網膜の感度を基礎にして定められている。明るさということばはレンズや色彩にも用いられ、それぞれF数、反射率で表される。

[高橋貞雄]

『照明学会編・刊『最新 やさしい明視論』(1977)』『照明学会編『ライティングハンドブック』(1987・オーム社)』『照明学会編『照明ハンドブック』第2版(2003・オーム社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「明るさ」の意味・わかりやすい解説

明るさ【あかるさ】

光に照らされた物体の明るさを照度といい,光源の明るさは光源が送り出す光の量を光度,面光源を見たときのまぶしさを輝度といって区別する。また天体,レンズ,色などについても明るさという言葉を使い,それぞれ光度(天文),F数明度などで表す。
→関連項目光束

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「明るさ」の意味・わかりやすい解説

明るさ
あかるさ
brightness

光の量ないしは強度に関連して起る視覚的な経験をさす。明るさは輝度照度に応じて変化する視覚の一属性であるが,それは必ずしも光源や物体の表面からの反射光の光量によって一義的に決るものではない。主観的な明るさは種々の条件によって規定され,恒常,対比などの諸現象が観察される。 (→明るさの恒常 )

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の明るさの言及

【色】より

…それぞれ色を表現するのに使われている色の性質なので,その説明と,それを利用して開発された色の表現法,つまり表色法を以下に紹介しよう。
【三属性】
 色には三つの属性があるということで,その三つとは色相,あざやかさ,そして明るさである。色相は赤,黄,緑などで表現するいわゆる色のことである。…

※「明るさ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android