仕事始め(読み)シゴトハジメ

デジタル大辞泉 「仕事始め」の意味・読み・例文・類語

しごと‐はじめ【仕事始め】

新年になって、初めて仕事をすること。また、その日。 新年》「胸の上に―の葉書束/波郷」⇔仕事納め

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改訂新版 世界大百科事典 「仕事始め」の意味・わかりやすい解説

仕事始め (しごとはじめ)

年初に行われる生業開始の儀礼。年間最初の労働がその年の生業全体に影響を及ぼすという考えに基づき,多分に予祝の意味をこめて行われる。田畑の仕事始めは鍬入れ,作始め,打ちぞめなどといわれ,正月2,4,11日などの早朝にその年の恵方(えほう)に当たる田畑へ出て数鍬うない,持って行った正月飾りや神酒,洗米などを供えてくるが,その際洗米やオソナエ(餅)の砕片を並べて烏呼びをし,どの洗米や砕片を食うかによって作占(さくうら)をする風もある。堆肥を田畑に散らしたりする所もある。山仕事の場合は初山入り,若木迎えなどといわれ,山に入って少し木を切り,正月飾り,神酒,洗米などを供えて山の神をまつるが,切った木は持ち帰って門口に立てたり,まきにして小正月小豆粥や田植のときの昼飯を炊くのに用いる所が多い。農家ではこれらと並行して屋内で縄の綯(な)いぞめ,女性による縫いぞめなどをしてその縄や袋などを年神に供えたり,臼を起こして米の搗(つ)きぞめをしてその米の飯を年神に供え家族も食べる等のことを行っていた。また主として小正月に,繭玉粟穂稗穂などを作って作物豊穣を祈ったり,農作業の諸段階を演技的に行って一年の順調であることを願う予祝儀礼も,広い意味では仕事始めに入るといえよう。漁業の場合には乗りぞめ,船祝いなどといわれ,2日などに,船を出して湾内を一周ぐらいして海中に神酒を注いだり,簡単に漁をしたりし,戻ったあと集まった人々に船上から餅や蜜柑をまいたり,船主,網主宅で祝いをする。商家では2日に盛大に初荷を送り,初売りを行って商売繁昌を願う。鍛冶屋農具の模型を作って金屋子神に供え,大工は道具の手入れをしたり墨差しを作るなど,諸職人もそれぞれの仕事始めを行っている。その他,書初め,謡いぞめや官庁,会社の御用始め,消防の出初式などもある。このように年頭最初の労働を予祝的に行い,新たな気持でよい年を過ごしたいとする心意は,日本人の生活の中に広く行きわたっている。
作事始
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「仕事始め」の意味・わかりやすい解説

仕事始め
しごとはじめ

年の初めにあたり、年間の豊穣(ほうじょう)や繁栄を祈って行われる家業・生業に関する儀礼。事(こと)始めとよばれるほか、行われる仕事によって、ない初(ぞ)め、田打ち正月、鍬(くわ)入れ、初山(はつやま)、舟祝いなどさまざまによばれる。これらの行事は正月の2日、4日、11日、14日、15日などに行われることが多い。商家の初荷・初売りはほぼ2日に一定しており、安売りをして景品を出したりする。女性はこの日に縫い初(ぞ)めといって形だけでも針仕事をしたり、機(はた)織りをしたりした。このほか、書初(ぞ)め、謡初(ぞ)め、舞い初(ぞ)めなどの芸事始めも行われる。農家では藁(わら)を打ってほんのすこし藁仕事をしたりする。早朝に田畑へ行き、鍬を入れて耕作をするまねをしたり、正月の松を稲苗に見立てて田植のまねをしたりすることもあるが、これは11日や小正月に行われることが多い。山仕事に従事する者は2日や11日などに山へ行って木を伐(き)り、山の神に供え物をして仕事の安全を祈る。漁業に従事する者もこのころ舟に集まって舟霊(ふなだま)様を祀(まつ)り、豊漁を祈ったりする。いずれも正月行事の一環として儀礼的に行われるだけで、実際の仕事始めは正月の期間が終わってから順次行われるのである。

[倉石忠彦]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「仕事始め」の意味・わかりやすい解説

仕事始め
しごとはじめ

年頭の生産活動開始の儀礼をいう。畑仕事の場合は鍬入れ,ウナイゾメ,田仕事では御田植え,山仕事では初山入り,漁業では船祝いなどと呼ばれ,それらの行事の日は多く2日,4日,11日に集中している。商家では2日の初荷,11日の蔵開きなどの行事がみられ,その他農作業に関連してわらの打ち始め,牛の使い初,肥料の運び初などの習俗がある。また個人の技能の上達を念願して書初,縫い初などを行なったり,官庁や会社では御用始めが行われたりする。それらの儀礼には共通して年の改まりに際し,労働の模擬行為を演じてその年の豊作,豊漁また商売繁昌などを願う予祝の気持がうかがわれる。

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世界大百科事典(旧版)内の仕事始めの言及

【初荷】より

…商家の仕事始め。正月2日に行われる儀礼的な初商いで,江戸時代からはじまった。…

※「仕事始め」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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