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愛知県北西部、犬山扇状地上、木曽(きそ)川に臨む市。1954年(昭和29)古知野(こちの)、布袋(ほてい)、宮田の3町と草井(くさい)村が合併して市制施行。江南の江は木曽川をさす。名古屋鉄道犬山線、国道155号が通じ、木曽川を挟んで各務原(かかみがはら)市(岐阜県)との間に愛岐(あいぎ)大橋がある。
名刹(めいさつ)曼陀羅寺(まんだらじ)は国指定の重要文化財が4件(正堂、書院、銅鐘、絹本著色浄土五祖像)あり、藤祭りで有名。郷土芸能は安良(やすら)の棒の手、今市場(いまいちば)の獅子(しし)芝居で、いずれも県指定無形民俗文化財。農業は明治・大正時代は養蚕業中心、第二次世界大戦後は都市近郊の野菜、花卉(かき)栽培へと推移。工業も絹から化繊、カーテン地などの室内装飾品織物、さらに機械工業へと変わっている。名古屋市のベッドタウン化が進み、飛保(ひぼ)には3800戸余の江南団地が建設されるなど、住宅地造成が著しい。面積30.20平方キロメートル、人口9万8255(2020)。
[伊藤郷平]
『『江南市史』8冊(1975~2001・江南市)』
埼玉県北部、大里郡(おおさとぐん)にあった旧町名(江南町(まち))。現在は熊谷市(くまがやし)の南西部を占める地域。旧江南町は1985年(昭和60)町制施行。2007年(平成19)熊谷市に編入。江南の地名は荒川の南にあることによる。旧町域の北部は荒川の沖積低地、南部は洪積台地にあり、東部を熊谷東松山道路が通っている。台地は古くから開発された土地で、考古遺跡が多く、塩古墳群をはじめ多数の古墳群がある。米、養蚕を主としていたが、その後養蚕は衰退し、米、麦、ダイズの輪作が行われるようになった。特産物にクリ、ブルーベリーがある。また、自動車関連産業など、工場の進出もみられる。県立循環器・呼吸器病センターや県農林総合研究センター、畜産研究所など県施設が多い。旧町域北部の樋春(ひはる)には、国指定重要文化財の平山家住宅がある。
[中山正民]
『柴田玄史郎著『江南村史』(1960・関東新報社)』▽『『江南町史』全11巻(1995~ ・江南町)』
中国、長江(ちょうこう/チャンチヤン)(揚子江(ようすこう/ヤンツーチヤン))下流部の南方にある江蘇(こうそ/チヤンスー)省南部から浙江(せっこう/チョーチヤン)省北部にかけての地域をいう。その主要部分は太湖周辺のデルタ地帯で、江南デルタとよばれる。きわめて低平で、長江岸の自然堤防および海岸部の浜堤(ひんてい)よりも低く、無数の水路が縦横に走る水郷地帯をなす。米の生産性も非常に高く、古来「蘇(州)常(州)熟すれば天下足る」と称せられた穀倉地帯であるが、中国でもっとも早くワタ作の行われた地域でもあり、また養蚕業も盛んである。現在は中国第一の大都市上海(シャンハイ)、江蘇省省都の南京(ナンキン)、浙江省省都の杭州(こうしゅう/ハンチョウ)、古都蘇州(そしゅう/スーチョウ)のほか多くの工業都市や郷鎮企業(1980年以降に生まれた町村営農村企業)が発達し、中国最大の機業と電子工業の地域でもある。
歴史的には江南は長江以南全般をいい、春秋から漢代にかけては湖北(こほく/フーペイ)省南部と湖南(こなん/フーナン)、江西(こうせい/チヤンシー)両省一帯をさしていた。唐代の江南道は四川(しせん/スーチョワン)省以東福建(ふっけん/フーチエン)省までの長江南方地域全体をさし、宋(そう)代の江南は江西省以東を称した。清(しん)代初期にはいまの江蘇、安徽(あんき/アンホイ)両省をあわせた地域を江南省とよび、その後2省に分かれたあとも江南と総称する慣習が残った。
[河野通博]
愛知県北西部の市。1954年市制。人口9万9730(2010)。濃尾平野の北部,木曾川左岸に位置する。中世は稲木荘,村久野荘に属し,1320年代には後醍醐天皇の命で曼陀羅寺(正堂,書院などは重要文化財)が創建されている。近世に入り宮田用水,般若用水などができて新田開発が盛んに行われたが,近世後期以降は養蚕業が盛んになり,それに伴って生糸業,絹織物業が発達し,尾北地方の商工業の中心になった。第2次大戦後は化繊織物に転じ,カーテン地など室内装飾品織物の生産が多くなっている。また鉄工機械,コンクリート,食料品加工業などの大工場の立地,古知野や名鉄犬山線布袋駅前への大型店舗の進出,さらには大規模な住宅団地の造成などにより名古屋市の衛星都市化が進んでいる。農業は野菜栽培が中心。古墳時代中期の曾本二子山古墳があり,曼陀羅寺はフジの名所としても知られる。
執筆者:溝口 常俊
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
言葉の意味は長江以南の地域をさすが,狭義には江蘇省の蘇州,松江,常州,浙江(せっこう)省の嘉興(かこう),湖州の五つの府を中心とする長江下流域の三角州地帯をいう。後漢末から三国時代にかけて華北から移住者が急増し,水田開発が開始された。宋代からは圩田(うでん),囲田,湖田など,湿地帯を堤防で囲んで干拓する新田開発が普及した結果,「蘇湖熟すれば天下足る」という俗諺(ぞくげん)に象徴されるように,この地域が中国でも有数の穀倉地帯に成長した。明清時代には手工業生産が盛んとなり,商業化・都市化が進んで経済的先進地域としての地位を堅持した。近代になるとその中心は上海に移ったが,現在もなお改革・開放経済発展の中心的地域としての役割を担っている。
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※「江南」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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