浅い(読み)アサイ

デジタル大辞泉 「浅い」の意味・読み・例文・類語

あさ・い【浅い】

[形][文]あさ・し[ク]
表面から底まで、また入り口から奥までの距離が短い。深さが少ない。「―・い池」「―・いなべ」「―・い洞窟どうくつ」⇔深い
物事の程度や分量、また、かかわりなどが少ない。「傷は―・い」「経験が―・い」「眠りが―・い」「つきあいが―・い」⇔深い
その状態になってから日数や時間が少ししかたっていない。「勤めてから日が―・い」「春まだ―・い」「夜もまだ―・い時刻
色が薄い。淡い。「―・い緑」⇔深い
香りが淡い。
「―・からずめたる紫の紙に」〈明石
位や家柄が低い。
「九条殿の君達は、まだ御位ども―・ければ」〈栄花・月の宴〉
情愛がうすい。
「当時の博士、あはれ―・く貪欲深くして」〈宇津保・祭の使〉
[派生]あささ[名]あさみ[名]
[類語](1浅め浅み浅場遠浅/(4薄い淡い淡淡しい薄める薄れる薄らぐ

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精選版 日本国語大辞典 「浅い」の意味・読み・例文・類語

あさ・い【浅】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]あさ・し 〘 形容詞ク活用 〙
  2. 空間的に表面、外面などの基準面から内部方向への隔たりが小さい、距離が短い。深くない。奥深くない。
    1. [初出の実例]「沢田川袖つくばかりや 安左介礼(アサケレ)ど はれ 安左介礼(アサケレ)ど くにの宮人や 高橋渡す」(出典:催馬楽(7C後‐8C)沢田川)
    2. 「Asai(アサイ) ヤマ」(出典:日葡辞書(1603‐04))
  3. 感情、情趣、思慮、分別、思考、知覚心理などが、表面的で単純である。
    1. (イ) 感情が痛切でない。情愛が薄い。思い方や思いやりが不十分である。
      1. [初出の実例]「安積香山(あさかやま)影さへ見ゆる山の井の浅(あさき)心をわが思はなくに」(出典:万葉集(8C後)一六・三八〇七)
      2. 「汝不孝の子ならば、親にながき嘆きあらせよ。孝の子ならば、あさき思ひのあさきにあひむかへ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)俊蔭)
    2. (ロ) 思慮、分別に乏しい。軽率で軽々しい。あさはかである。
      1. [初出の実例]「ゆくりかに、あやしくはありしわざぞかし、とはさすがにうち覚ゆれど、おぼろげにしめたるわが心からあさくも思ひなされず」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜下)
      2. 「ココロノ asai(アサイ) ヒト〈訳〉単純で策略のない人」(出典:日葡辞書(1603‐04))
    3. (ハ) 情趣や美の到達度が不十分である。浅薄である。
      1. [初出の実例]「これは、いとあさく侍り。人の国などに侍る海山の有様などを御覧ぜさせて侍らば、いかに御絵いみじうまさらせ給はむ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若紫)
    4. (ニ) 感情、情趣などがおさえられて、あっさりとしている。
      1. [初出の実例]「音曲を本として、風体をあさく舞などをも」(出典:花鏡(1424)奥段)
  4. 物事と関係しあう程度が薄い。かかりあい方が深くない。
    1. (イ) 縁、恩、交際などの人間関係が薄い。
      1. [初出の実例]「げに思ひ給へより難きついでに、かくまで、のたまはせ、きこえさするも、あさくはいかが」(出典:青表紙一本源氏(1001‐14頃)若紫)
      2. 「一樹の陰にやどるも先世の契あさからず」(出典:平家物語(13C前)七)
    2. (ロ) ある行為や状態の程度・度合などが深くない。「傷は浅いぞ、しっかりしろ」
      1. [初出の実例]「慈悲ふかうおはする仏だに、三宝そしる罪は浅しとやは説い給ふなる」(出典:紫式部日記(1010頃か)消息文)
    3. (ハ) 伝統、知識、経験などがまだ十分でない。
      1. [初出の実例]「なに事もまだあさくて、たより少くこそ侍らめ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜上)
      2. 「チエノ asai(アサイ) ヒト〈訳〉知恵のすくない人」(出典:日葡辞書(1603‐04))
  5. 色や香がかすかである。
    1. (イ) 色が薄い。淡い色である。
      1. [初出の実例]「藤の花色のあさくもみゆるかなうつろひにけるなごりなるべし」(出典:大和物語(947‐957頃)六一)
      2. 「Asai(アサイ) ミドリ」(出典:日葡辞書(1603‐04))
    2. (ロ) 香が強くない。香がほのかである。
      1. [初出の実例]「花の香は散りにし枝にとまらねど移らむ袖にあさくしまめや」(出典:源氏物語(1001‐14頃)梅枝)
    3. (ハ) 霧や霞などが多くなく、うっすらとかかっている。
      1. [初出の実例]「浅くのみ春は霞みて 麦の色はつかに青し」(出典:落梅集(1901)〈島崎藤村〉小諸なる古城のほとり)
  6. 家柄、身分地位が低い。いやしい。→あさき(浅)根差し
    1. [初出の実例]「位などもあさう、人々しからぬ有様にてあるにや」(出典:栄花物語(1028‐92頃)見はてぬ夢)
  7. 始まりから、それほど日時がたっていない。
    1. (イ) その季節になってからまもない。また、そのために季節(特に春)らしさの現われが、十分でない。
      1. [初出の実例]「春あさき篠(すず)の籬(まがき)に風さえてまだ雪消えぬ信楽(しがらき)の里」(出典:山家集(12C後)中)
    2. (ロ) 日がまだ長くたっていない。
      1. [初出の実例]「出京後日数が浅(アサ)いので兎角(とかく)馴染がない」(出典:油地獄(1891)〈斎藤緑雨〉一)
  8. 出番が)早い。寄席芸人の間でいう。「出番が浅い」「浅いとこに出る」

浅いの語誌

動詞「浅(あ)す(浅せる)」と同根。ある基点からの内部方向への隔たりを表わし、「深い」と対義関係になって、その隔たりの大小を表わす。用法は「深い」の対義語は「薄い」と類義語。ただし色については「浅」は「あさみどり」のように青系統の色に用い、「薄色」は紅・紫の赤系統の色に用いる。また、地位や身分をいうは和歌には見えず、物語類に見える表現で、「高い」の対義語であったが、中世以降は新たに生じた「低(ひき)し」が用いられるようになる。

浅いの派生語

あさ‐さ
  1. 〘 名詞 〙

浅いの派生語

あさ‐み
  1. 〘 名詞 〙

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