淋病(淋疾)(読み)りんびょうりんしつ(英語表記)Gonorrhea

家庭医学館 「淋病(淋疾)」の解説

りんびょうりんしつ【淋病(淋疾) Gonorrhea】

◎早期治療がたいせつ
[どんな病気か]
 淋菌りんきん)が感染しておこる病気で、ほとんどが性交によって感染します。
 男性は淋菌性尿道炎(りんきんせいにょうどうえん)を、女性は淋菌性腟炎(りんきんせいちつえん)や淋菌性頸管炎(りんきんせいけいかんえん)をおこすことが多いのですが、オーラルセックスで口の中の粘膜(ねんまく)に感染し、淋菌性口内炎(りんきんせいこうないえん)になることもありますし、淋菌で汚れたタオルや手指などから目に感染し淋菌性結膜炎(りんきんせいけつまくえん)になることもあります。
 淋菌性腟炎にかかっている母親から生まれた赤ちゃんは、淋菌性結膜炎がおこり、失明の危険があります。
 成人や男性は、風呂(ふろ)やプールで感染することはありませんが、女児は、風呂場のいすや床などにすわったりしたときに感染することがあります。外陰部の粘膜(ねんまく)がおかされ、会陰部(えいんぶ)が赤くただれて下着が汚れるのがその徴候です。
合併症
 早期に医師の治療を受ければ1~2週間で治りますが、治療の開始がおくれたり、かってな治療を行なっていると、男性は前立腺炎(ぜんりつせんえん)(「急性前立腺炎」)や副睾丸炎(ふくこうがんえん)(「急性副睾丸炎(急性精巣上体炎)」)を、女性は卵管炎(らんかんえん)(「子宮付属器炎(卵管炎/卵巣炎)」)、子宮内膜炎(しきゅうないまくえん)(「子宮内膜炎」)、骨盤腹膜炎(こつばんふくまくえん)(「骨盤腹膜炎」)を併発し、不妊症(ふにんしょう)になることがあります。
 また、男女ともに膀胱炎(ぼうこうえん)、腎盂腎炎(じんうじんえん)のほか、まれに関節炎(「化膿性関節炎」)や心内膜炎(しんないまくえん)(「心内膜炎」)がおこることがあります。
後遺症
 不妊症のほか、男性は、尿道が狭くなって尿が出にくくなる尿道狭窄(きょうさく)(「尿道狭窄」)がおこることがあります。
[症状]
 男性は、感染後2~5日で尿道炎になり、排尿(はいにょう)の際にやけつくような痛みがおこり、外尿道口が赤くただれて、膿(うみ)が出たりします。女性は、淋菌性腟炎で始まるので、おりものが多くなって下着が汚れたり、陰部がかゆくなったりしますが、本人は病気に気づかないでいることが多いものです。しかし、尿道にも感染が広がると、排尿時に痛みます。
[検査]
 尿道炎や腟炎は、淋病以外の病気でもおこるので、男性は尿道から、女性は腟や子宮頸管から膿(うみ)を採取し、淋菌の有無を調べます。
 尿検査もします。男性は、初めの3分の1の尿と、残りの3分の2の尿とを2つのコップに分けてとります。女性は、カテーテルという細い管を使って医師などが尿を採取するのが原則ですが、自分でコップにとることもあります。
 これらの検査結果と診察の結果を総合して、治療方針が決められます。
[治療]
 抗生物質を内服か注射で用います。ペニシリン系の抗生物質が有効ですが、耐性菌(たいせいきん)が増えているのでセフェム系の薬剤にきりかえることもあります。
 内服の場合は、医師の指示どおりに服用し、飲料を多めに飲みます。
 薬の副作用らしい症状に気づいたときには、すぐに医師に連絡をしてください。
 治癒(ちゆ)の判定は、医師の判断にゆだねることが必要です。
 症状が消えたからといって、かってに通院や薬の服用をやめると再発や慢性化を招きます。合併症がおこり、入院や手術が必要になって、治療が長びくこともあります。
 治療は、自分だけではなく、自分に病気をうつしたと考えられる人、自分が病気をうつした可能性のある人も検査を受け、必要があれば治療することが必要です。
[日常生活の注意]
 完全に治るまで、セックスと飲酒はやめます。熱がなければ入浴してもかまいませんが、使用したタオルや下着は、熱湯消毒します。
[予防]
 コンドームを使用すれば、性器からの感染は防げますが、ペッティングやオーラルセックスで感染することがあります。
 性交後に排尿するとか、性器を洗うなどは、やらないよりはいいという程度で、予防にはなりません。
 セックスの前後に抗生物質を服用するのも、耐性菌を生じたり診断をおくらせる可能性があり、よくありません。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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