澄む(読み)スム

デジタル大辞泉 「澄む」の意味・読み・例文・類語

す・む【澄む/清む】

[動マ五(四)]
水や空気などに濁りがなくなり、透きとおった状態になる。「池の底まで―・んで見える」「―・んだ高原の空気」⇔濁る
光や色などに曇りがなく、はっきり見える。「明るく―・んだ月」「―・んだ目」「―・んだ水色
音がさえてよく響く。「―・んだ声」⇔濁る
心配や邪念がなく、心がすっきりしている。「―・んだ心で人とつきあう」
清音に発音する。「『輝く』は、古くは『かかやく』と―・んで発音した」⇔濁る
雑音がおさまって静かになる。
「家も―・みて人も無かりければ」〈今昔・三〇・四〉
すましこむ。気取る。
「舟のかぢ取りたるをのこども…うそぶいて見回し、いといみじう―・みたるさまなり」〈更級
上品で落ち着いている。地味な感じがする。
「薄鈍色の綾、中には萱草くわんざうなど―・みたる色を着て」〈・手習〉
物事筋道がはっきりする。道理が明らかになる。
「理が―・マヌコトヂャ」〈日葡
[動マ下二]
濁りをなくしてきれいにする。
「心ヲ―・メテ世ノちりニ汚サレザル人」〈ロドリゲス日本大文典
道理を明らかにする。
「理ヲ―・ムル」〈日葡
[類語]澄みきる冴える冴え渡る冴え返る澄み渡る透き通る澄ます清澄透徹

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「澄む」の意味・読み・例文・類語

す・む【澄・清】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 マ行五(四) 〙
    1. 空気や液体などに濁りがなくなってきれいになる。和歌では「住む」にかけて用いることが多い。
      1. [初出の実例]「淵も瀬も清くさやけし博多川千歳を待ちて須売(スメ)る川かも」(出典:続日本紀‐宝亀元年(770)三月・歌謡)
      2. 「世とともに雨ふるやどの庭たつみすまぬに影は見ゆる物かは〈よみ人しらず〉」(出典:拾遺和歌集(1005‐07頃か)雑恋・一二五四)
    2. 月の曇りが消えてはっきりする。
      1. [初出の実例]「その夜の月のいみじう明かくすみて」(出典:和泉式部日記(11C前))
    3. 音や声がよく響きとおる。さえる。
      1. [初出の実例]「世尊の声を発したまふときは〈略〉明かに朗かにして清(スミ)徹れり」(出典:彌勒上生経賛平安初期点(850頃))
      2. 「ひびきすみ、声高きことすぐれたる琴(きん)なれば」(出典:宇津保物語(970‐999頃)楼上下)
    4. 邪念が消えて、心にけがれがなくなる。心に迷いがなくなって落ち着く。
      1. [初出の実例]「思ひ立つほどは、いと心すめるやうにて世にかへりみすべくも思へらず」(出典:源氏物語(1001‐14頃)帚木)
    5. 不正なことがなくなる。正義が行なわれる。
      1. [初出の実例]「清世と申してすめる世には、直縄のまがれる木をけづらするやうに、非をすて是を用る也」(出典:日蓮遺文‐南条兵衛七郎殿御書(1264))
    6. 人柄書体、色合いなど、落ち着いた品格をもつ。すっきりと、あかぬける。
      1. [初出の実例]「いといたう筆すみたるけしきありて、書きなし給へり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)梅枝)
      2. 「こまやかになまめかしう、すみたるさまして、あてにうつくし」(出典:増鏡(1368‐76頃)七)
    7. ひとけがなくなって静まる。また、気まずくてしんとする。
      1. [初出の実例]「家も澄(すみ)て人も無かりければ」(出典:今昔物語集(1120頃か)三〇)
    8. 筋道が明らかになる。
      1. [初出の実例]「さらば以金受免とようだらば、義がすまうぞ」(出典:史記抄(1477)四)
    9. 清音に発する。清音である。「濁る」に対していう。
      1. [初出の実例]「行法も、ほふの字をすみていふ、わろし。濁りていふ」(出典:徒然草(1331頃)一六〇)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 マ行下二段活用 〙
    1. けがれをなくす。濁りを去ってきれいにする。
      1. [初出の実例]「モシ カタチヲ ヤツシ、ココロヲ sumete(スメテ)、ヨノ チリニ ケガサレザル ヒト スラ発心集〕」(出典:ロドリゲス日本大文典(1604‐08))
    2. 筋道を明らかにする。
      1. [初出の実例]「リヲ sumuru(スムル)〈訳〉道理を明らかにする」(出典:日葡辞書(1603‐04))

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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