澄ます(読み)スマス

デジタル大辞泉 「澄ます」の意味・読み・例文・類語

すま・す【澄ます/清ます】

[動サ五(四)]
液体の、にごり・よごれなどの不純物を除いて透き通った状態にする。「汲み置いて井戸水を―・す」
気持ちを落ち着かせて雑念のない状態にする。「座禅を組んで心を―・す」
(「耳をすます」「目をすます」の形で)よけいなことを考えないで、その事一つに注意・意識を集中する。「耳を―・して聞く」

㋐そのようなことは自分に関係ないという顔をする。平然と構える。平気でいる。「―・した顔で人を笑わせる」
㋑まじめなようすをする。気どる。「おつに―・している」
洗い清める。
御髪―・し、ひきつくろうておはする」〈・若菜上〉
世の中を落ち着かせる。平定する。
「一天をしづめ、四海を―・す」〈平家・一二〉
(動詞の連用形について)
㋐一つのことに心を集中してその行為をする。「行い―・す」「聞き―・す」
㋑完全に…する。「研ぎ―・す」
[可能]すませる
[類語](1澄む澄みきる冴える冴え渡る冴え返る澄み渡る透き通る清澄透徹/(4㋑)勿体ぶる気取る格式ばるしゃれる勿体臭い見栄を張る虚勢を張る気を持たせる体裁振る背伸び御大層らしい大層らしい仰仰しい誇大大袈裟おおげさオーバー大層事事ことごとしい大仰おおぎょう針小棒大尾鰭おひれを付ける思わせ振りしなを作る大人振る見せ掛け見せ掛ける行い澄ます取り澄ます飾り気虚栄自意識過剰お高くとまるお高い芝居がかる猫かぶり猫をかぶるもっともらしいびるへつらおもねる取り入る胡麻ごますり阿諛あゆおためごかし卑屈へつら取り巻くこびを売る胡麻ごまをする鼻息をうかがう太鼓を叩く機嫌を取る尻尾を振る歓心を買う色目を使う秋波を送る気を引く気を持たせる調子を合わせる追従ついしょうおべっかおべんちゃら諂巧てんこう諂阿てんあ諂曲てんごく諂笑てんしょう諂媚てんび諂諛てんゆ阿付迎合へいへいへいこらぺこぺこ曲学阿世味噌を意を迎える

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精選版 日本国語大辞典 「澄ます」の意味・読み・例文・類語

すま・す【澄・清・洗】

  1. 〘 他動詞 サ行五(四) 〙
  2. 洗ってきれいにする。
    1. [初出の実例]「帯刀が曹司にて、『まづ水』とて、御足すまさす」(出典:落窪物語(10C後)一)
    2. 「御ぐしすましひきつくろひておはする」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜上)
  3. 水などのにごりがなくなるようにする。
    1. [初出の実例]「濁水を澄渟(スマシ)清浄にあらしめつるときには、復滓穢無くなりぬ」(出典:西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)二)
  4. 音がよく響き通るようにする。
    1. [初出の実例]「手づかひいといたう唐めき、ゆのね深うすましたり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)明石)
  5. 心のけがれを除く。また、心を落ち着かせる。
    1. [初出の実例]「景戒性を稟(う)くること儒(さか)しくあら不(ず)、濁れる意澄(スマシ)難し〈興福寺本訓釈 澄 須万之〉」(出典:日本霊異記(810‐824)上)
    2. 「御おこなひにも心すまし給はんことかたくやと見奉り給」(出典:源氏物語(1001‐14頃)幻)
  6. ( 「耳、目をすます」の形で ) ある物事に気持を集中する。
    1. [初出の実例]「やはら此刀をぬき出し、鬢にひきあてられけるが氷などの様にぞみえける。諸人目をすましけり」(出典:平家物語(13C前)一)
  7. 世の中が平安な状態になるようにする。世をしずめる。
    1. [初出の実例]「平家を攻おとし、ことしの春ほろぼしはてて、一天をしづめ、四海をすます」(出典:平家物語(13C前)一二)
  8. 人気がなくなるようにする。
    1. [初出の実例]「只暫し此て有らむ。然て、大路を澄して、歩(かち)より可行き也」(出典:今昔物語集(1120頃か)二八)
  9. 理非道理を明らかにする。
    1. [初出の実例]「訟者をば平にし、理非をきっかとすますべきぞ」(出典:古文真宝笑雲抄(1525)三)
  10. ( 自動詞的に用いて ) まじめそうな顔をする。気取る。また、何も感じていないような、平気な様子をする。
    1. [初出の実例]「すましたるとみゆる所おほし、なべての人、うちとけがたく、心をかれて、人のよりつきすくなし」(出典:評判記・満散利久佐(1656)野関)
    2. 「文三には平気で澄ましてゐるお勢の心意気が呑込めぬ」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉二)
  11. 他の動詞の連用形に付けて、補助動詞のように用いる。
    1. (イ) 心を集中して行なう。精神を統一して…する。
      1. [初出の実例]「いとかぎりなき御琴の音なり。これは、あくまでひきすまし、心にくくねたき音ぞまされる」(出典:源氏物語(1001‐14頃)明石)
    2. (ロ) うまく…する。完全に…する。
      1. [初出の実例]「さしも御秘蔵候いけずきをぬすみすまいてのぼりさうはいかに」(出典:平家物語(13C前)九)
      2. 「キキ sumasu(スマス)〈訳〉良く完全に聞く」(出典:日葡辞書(1603‐04))

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