デジタル大辞泉
「稲妻」の意味・読み・例文・類語
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いな‐ずま‥づま【稲妻・電】
- 〘 名詞 〙 ( 「稲の夫(つま)」の意 )
- ① 雷雨のとき、空中電気の放電によってひらめく電光。雷鳴が聞こえないで、電光だけがひらめく場合にもいう。いなびかり。いなつるび。いなだま。《 季語・秋 》
- [初出の実例]「あきのたのほのうへをてらすいなづまの光のまにも我やわするる〈よみ人しらず〉」(出典:古今和歌集(905‐914)恋一・五四八)
- ② ①のひらめくのにたとえていう。
- (イ) 行動や動作のすばやいこと。
- [初出の実例]「かげろふ、稲妻、水の月かや、姿は見れども手に取られず」(出典:大観本謡曲・熊坂(1514頃))
- (ロ) 時間のきわめて短いこと。瞬間。
- [初出の実例]「敵を〈略〉蝶鳥稲妻石の火の、見あへぬ程に切り給へば」(出典:大観本謡曲・関原与市(室町末))
- ③ 「いなずまおれくぎ(稲妻折釘)」の略。〔日本建築辞彙(1906)〕
- ④ 「いなずまがた(稲妻形)」「いなずまもよう(稲妻模様)」の略。
- ⑤ 紋所の名。①のひらめく形に似ているところからいう。稲妻、稲妻菱、四つ稲妻菱など数種類ある。
稲妻菱@三階稲妻@四つ稲妻菱@三つ稲妻亀甲
- ⑥ 柄の稲妻形に曲がっている錐(きり)。〔日本建築辞彙(1906)〕
- ⑦ ( その形が①に似ているところから ) 蔵などの鍵。
- [初出の実例]「稲妻の折れを女狐くわへてる」(出典:雑俳・柳多留‐三七(1807))
- ⑧ 江戸時代、遊女などが、かんざしを多くさしている様子を見立てていう語。
- [初出の実例]「稲妻は女郎の植た田へ通ふ」(出典:雑俳・川傍柳(1780‐83)三)
- ⑨ ( ①のようにきらきら光るところから ) 金屏風のこと。
- [初出の実例]「いなづまを拝借に行暑い事」(出典:雑俳・柳多留‐一六(1781))
- ⑩ ( 電 ) 金モール、銀モールのこと。
稲妻の語誌
「いなつるび」(「つるび」は交配の意)ともいい、古代では雷光が稲の穂と結合し、穂を実らせると信じられていた。稲の開花結実のころによく雷光が発するためであったか。→「いなびかり(稲光)」の語誌
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稲妻(映画)
いなづま
日本映画。1952年(昭和27)、成瀬巳喜男(なるせみきお)監督。原作は林芙美子(ふみこ)。バスガイドの清子(高峰秀子)は下町に暮らす4人兄弟の末っ子だが、それぞれ父親が違う。現状に嫌悪感を抱く清子は家を出て、山手の住宅街で下宿生活を始める。作品内の人物間の摩擦は、悪意というよりは利己心によって生まれたものであり、こうした摩擦を成瀬は日常性に即した視点できめ細かく描いている。またときおり登場する猫や下町の描写は、作品に豊かな情感を与えている。物語を通して主人公たちの家族の状況は好転するわけではなく、問題は残されたままであるが、それはむしろ安易な甘さを排しているといえよう。だからこそラストで清子と母(浦辺粂子(うらべくめこ)、1902―1989)とが互いの真情を吐露して和解する場面は一つの浄化であり、作品にささやかな救いを与えている。
[石塚洋史]
『『世界の映画作家31 日本映画史』(1976・キネマ旬報社)』▽『『映画史上ベスト200シリーズ 日本映画200』(1982・キネマ旬報社)』▽『佐藤忠男著『日本映画史2』増補版(2006・岩波書店)』▽『猪俣勝人・田山力哉著『日本映画作家全史 上』(社会思想社・現代教養文庫)』
稲妻(いなずま)
いなずま
一般には電光と同じ意味に用いられているが、雷雲が遠いために電光の形が見えず、雲に反射して明滅する明かりをとくにさすという説もある。
[三崎方郎]
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稲妻〔映画〕
1952年公開の日本映画。監督:成瀬巳喜男、原作:林芙美子、脚本:田中澄江、音楽:斎藤一郎。出演:高峰秀子、三浦光子、村田知英子、丸山修、浦辺粂子、植村謙二郎、中北千枝子ほか。第3回ブルーリボン賞作品賞、監督賞受賞。第7回毎日映画コンクール音楽賞、女優助演賞(中北千枝子)ほか受賞。
稲妻〔小説〕
米国の作家エド・マクベインの警察小説(1984)。原題《Lightning》。「87分署」シリーズ。
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稲妻【いなずま】
雷放電の際に生ずる電光。稲光(いなびかり),いなつるびとも。歳時記では初秋の季語。
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世界大百科事典(旧版)内の稲妻の言及
【雷】より
…この種の放電を火花放電,スパークとよぶ。自然が起こす火花放電が雷で,このとき放射される光が電光,稲妻,あるいは稲光lightningで,音が雷鳴thunderである。この火花放電は,雨,雪,ひょう等を降らせる対流雲の発電作用によって生じ,その規模はきわめて大きく,放電路の長さは2~20km(代表値5km)で,中和する電荷は3~300C(代表値25C)である。…
【日本刀】より
…これには丁子様の映や棒状の棒映がある。異質の鋼が交じって線状に強く光るものを〈地景〉(地にあるもの),〈稲妻〉(刃にあるもの),〈金筋〉という。
[彫物]
刀身に施した彫刻には,太刀や刀には〈棒樋(ぼうび)〉(鎬地の全面を彫る),〈二筋樋〉(鎬地に2本の樋を並べて彫ったもの)などがあり,短刀には〈護摩箸(ごまはし)〉(2本の細い棒状のもの)と〈剣(すけん)〉(柄(つか)のない剣のことであるが,柄付のものもある),〈くりから竜(俱梨伽羅竜)〉(剣にからまりつき剣頭をのみこもうとするもの)などが多い。…
【成瀬巳喜男】より
…同期の小津安二郎ほどの厳密さはないが,固定画面を多用し,日本建築の廊下や縁側にたたずむ人物たちから抑制の利いた抒情性を引き出したその空間感覚によって世界的に評価されるに至る。《妻よ薔薇のやうに》(1935)での女性像(千葉早智子)の鮮やかさは,《鶴八鶴次郎》(1938)の山田五十鈴,《めし》(1951)の原節子などにうけつがれ,《稲妻》(1952)に始まる高峰秀子とのコンビを決定的なものにする。林芙美子原作の《浮雲》(1955。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」