(読み)しるし

精選版 日本国語大辞典 「著」の意味・読み・例文・類語

しる・し【著】

〘形ク〙
① はっきりしている。他からきわだっている。明白である。いちじるしい。
※書紀(720)允恭八年二月・歌謡「我が夫子が 来べき宵なり ささがねの 蜘蛛のおこなひ こよひ辞流辞(シルシ)も」
※源氏(1001‐14頃)澪標「六位の中にも、蔵人は青色しるく見えて」
② 特に、妊娠徴候がいちじるしい。
※源氏(1001‐14頃)若紫「三月になり給へば、いとしるき程にて人々見たてまつりとがむるに」
③ あらかじめ言った事や思った事の通りの結果がはっきりあらわれる。
落窪(10C後)一「さる事はありなんやと思ふもしるく」
方丈記(1212)「世の乱るる瑞相とか聞けるもしるく」
④ 努力したかいが明らかに現われる。
※催馬楽(7C後‐8C)藤生野「標(し)めはやし いつき祝ひし之留久(シルク) 時にあへるかもや 時にあへるかもや」
しる‐げ
〘形動〙
しる‐さ
〘名〙

いち‐じる・し【著】

〘形ク〙 (「いち」は、勢いの盛んな意、「しるし」は、はっきりしている意。古くは「いちしるし」) =いちじるしい(著)
※書紀(720)孝徳即位前(北野本訓)「皎(イチシル)きこと日月の如し」
※源氏(1001‐14頃)若菜上「かやうにききていかにいちしるく思ひあはせ給はん」
日葡辞書(1603‐04)「Ichixirǔ(イチシルウ)
※人情本・貞操婦女八賢誌(1834‐48頃)初「元来(もとより)当社の神徳は、古(いにしへ)より明白(イチジル)く」
[語誌]「いちしろし」が古い形とされる。中古以降「いちしるし」の語形が中心となるが、「観智院本名義抄」には「いちしろし」の例もある。中世に入り「いちじるし」の例も見られるようになるが、「日葡辞書」にあるような清音の形が普通の言い方であったか。

いち‐じるし・い【著】

〘形口〙 いちじるし 〘形シク〙 (ク活用の「いちじるし」がシク活用に転じたもの) 物事が目だってはっきりしている。明白である。顕著である。また、人についてその性情の顕著なさまをいう。
源平盛衰記(14C前)三「入道もいちじるしき人にて、思ひ直さるる事も有りなん」
黄表紙金々先生栄花夢(1775)「そもそも目黒不動尊霊験いちじるしく」
[語誌]「源平盛衰記」や抄物にはク活用とシク活用の例が併存する。近世においてもク活用が多く、シク活用が一般化したのはかなり後のようである。→「いちじるし(著)」の語誌。
いちじるし‐さ
〘名〙

ちょ【著】

〘名〙
書物を書きあらわすこと。また、その書物。著述著作。著書。
史記抄(1477)一一「李斯が、是は韓非が著でさう、今韓にいきさふと云たほどに」
② 明らかであること。明瞭。顕著。
※名人伝(1942)〈中島敦〉「小を視ること大の如く、微を見ること著(チョ)の如くなったならば」

いち‐しろ・し【著】

〘形ク〙 (「いちじるし(著)」の古形) =いちじるしい(著)
※万葉(8C後)一七・三九三五「隠沼(こもりぬ)の下ゆ恋ひ余り白波の伊知之路久(イチシロク)出でぬ人の知るべく」
※観智院本名義抄(1241)「皛 アキラカナリ アラハス ウツ イチシロシ」

しろ・し【著】

〘形ク〙 =しるし(著)
※狭衣物語(1069‐77頃か)二「あかつき月夜のさやかなるに、いとしろうさらぼひて」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「著」の意味・読み・例文・類語

ちょ【著】[漢字項目]

[音]チョ(呉)(漢) チャク(漢) ジャク(ヂャク)(呉) [訓]あらわす いちじるしい つく つける
学習漢字]6年
〈チョ〉
書きつける。書物にあらわす。「著作著者著述著書著録共著編著
あらわした書物。「遺著旧著高著新著拙著大著名著
目立つ。いちじるしい。「著効・著聞著名顕著
〈チャク〉つく。つける。「著心・著到」
[補説]「着」はもと「著」の俗字であるが、を「著」、を「着」と使い分けるようになった。
[名のり]あき・あきら・つぎ・つぐ

ちょ【著】

書物を書きあらわすこと。また、その書物。著書。「新進作家のになる書物」
明らかであること。
「微を見ること―の如くなったならば」〈中島敦・名人伝〉
[類語]著書著作著述述作著す著作物原著主著近著新著旧著前著前書単著共著自著

ちゃく【著】[漢字項目]

ちょ

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

今日のキーワード

潮力発電

潮の干満の差の大きい所で、満潮時に蓄えた海水を干潮時に放流し、水力発電と同じ原理でタービンを回す発電方式。潮汐ちょうせき発電。...

潮力発電の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android