表現の自由のうち,言語による表現行為の自由。また,言論が表現行為のなかでも最も象徴的な意味をもつことから,広く表現の自由一般の別称としても用いられる。(1) 日本国憲法上の言論の自由 日本国憲法は,「集会,結社及び言論,出版その他一切の表現の自由は,これを保障する」と規定している(21条)。言論の自由は,ほかの自由,権利の保障を不断に監視し,かつ立憲民主主義の維持にとって不可欠である自由な意見の交換を形成するところから,その保全には格別の配慮が要求される(→事前抑制,検閲)。(2) アメリカ合衆国憲法上の言論の自由 連邦に対してはアメリカ合衆国憲法修正第1条のなかで「信教・言論・出版・集会の自由,請願権」について明示的に保障されており,州に対しても 1925年のギトロウ対ニューヨーク州裁判 Gitlow v. New York によって適用されることが判示された。1791年の修正第1条の成立当初の「出版」pressとは,新聞,出版を意味したが,今日ではすべてのマスメディアを含むと解されている。修正第1条の問題として論じられる範囲はきわめて広く,純粋な言論,表現ばかりでなく,ストライキにおけるピケッティング(ストライキの呼びかけ,ストライキ破りの防衛など),デモ(→示威運動),名誉毀損,政治的結社,避妊用具の使用(→受胎調節)などにも及ぶとされる。言論の自由は絶対無制約であるという説もあるが,通説は一定の制約を認めており,言論の自由の範囲を確定する判例理論が,第1次世界大戦直後から集積されてきた(→明白かつ現在の危険)。