( 1 )「守貞漫稿」によると、近世上方では②の意味で使われている。
( 2 )一方、近世中期の江戸では、すでに「前栽」単独で③の意に使われている。また、近世後半江戸での例に、「前栽物」「前栽売り」などの複合語形で菜園・野菜を意味する例が見られ、東日本方言と考えられる。
平安時代初期からの用語で(《凌雲集》に初見),庭園に植えた草花をさし,〈せざい〉ともいう。当初は菊や萩,薄(すすき),女郎花(おみなえし)など秋の草花が好まれたが,延喜(901-923)のころには春草,夏草も植えられるようになった。平安中期までは《宇津保物語》にみるように,前栽と植木は別個に扱われたが,のち前栽に樹木が含められるようになり,平安後期の《栄華物語》では本来のものを特に草前栽と称している。いずれにしても寝殿造など平安時代の庭園に普遍的なもので,寝殿南庭の一隅,遣水(やりみず)のほとり,野筋(のすじ)や築山の裾,枯山水様の立石に添えるなど,多くの用例がみられる。建物や渡殿(わたどの)(廊下)に囲まれた坪庭(皇居では壺庭)にも最適で,ここに植えたのを坪前栽という。このため後宮の殿舎が,その壺庭に植えられた前栽の木の名から,桐壺,藤壺などと呼ばれた。また前栽の風趣を競い,これにいろいろの趣向を加え,歌をそえてあらそう物合せの遊び〈前栽合〉も行われた。鎌倉・室町時代になると松,桜,椿など樹木が加わることが普通となり,それらの植栽をすべて前栽と称し,鎌倉末期の《徒然草》では庭園そのものを示す言葉として使われている。今日でも関西地方を中心に,〈にわ〉といえば家屋内の通り庭(土間)をいい,石を配し樹草をあしらった庭を前栽と呼ぶのは,こうした意味合いからである。
執筆者:村岡 正
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…当初は菊や萩,薄(すすき),女郎花(おみなえし)など秋の草花が好まれたが,延喜(901‐923)のころには春草,夏草も植えられるようになった。平安中期までは《宇津保物語》にみるように,前栽と植木は別個に扱われたが,のち前栽に樹木が含められるようになり,平安後期の《栄華物語》では本来のものを特に草前栽と称している。いずれにしても寝殿造など平安時代の庭園に普遍的なもので,寝殿南庭の一隅,遣水(やりみず)のほとり,野筋(のすじ)や築山の裾,枯山水様の立石に添えるなど,多くの用例がみられる。…
※「前栽」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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