三審制の例外として、控訴審を省略し、直接上告審を求める上訴をいう。飛躍上告あるいは飛越上告(とびこしじょうこく)ともいう。
[内田一郎・田口守一]
刑事訴訟法上は二つの跳躍上告がある。一つは、地方裁判所、家庭裁判所または簡易裁判所がした第一審判決に対して、その判決において法律、命令、規則もしくは処分が憲法に違反するものとした判断、または地方公共団体の条例もしくは規則が法律に違反するものとした判断が不当であることを理由として、控訴を省略して直接に最高裁判所に上告することである。もう一つは、検察官が前記各裁判所のした第一審判決に対して、その判決において地方公共団体の条例または規則が憲法または法律に適合するものとした判断が不当であることを理由として、最高裁判所に上告することをいう(刑事訴訟規則254条、255条)。上告を許す判決は、原則として高等裁判所の第一審または第二審の判決であるが、最高裁判所は、例外として、法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件については、その判決確定前に限り、前記の規則の定めるところにより、自ら上告審としてその事件を受理することができる(刑事訴訟法406条)。
[内田一郎]
民事訴訟法上、第一審の終局判決後、当事者双方が上告をする権利を留保して、控訴をしない旨の合意をしたときは、第一審の終局判決に対し直接に上告することができる(281条1項但書)。これが認められるのは、事実問題についてはもはや争いがなく法律問題についてだけ不服があるとき、形式的に三審制を固執して控訴を強制することは訴訟経済に反するからである。跳躍上告の管轄裁判所は通常の上告の場合と同様で、第一審が地方裁判所のときは最高裁判所、第一審が簡易裁判所のときは高等裁判所である。
[内田武吉・加藤哲夫]
第一審判決に対して,控訴をしないで直接に上告をすること。飛越(とびこし)上告,飛躍上告とも呼ばれる。民事訴訟では,当事者が上告をする権利を留保して控訴をしない旨の合意(跳躍上告の合意)をした場合にすることができる(民事訴訟法281条1項但書,311条2項)。刑事訴訟では,地方裁判所,家庭裁判所または簡易裁判所がした第一審判決中で,法律,命令,規則,処分が憲法に反するという判断がなされた場合,または地方公共団体の条例,規則が法律に反するという判断がなされた場合には,その判断が不当であることを理由として,検察官も被告人も最高裁判所に上告をすることができる(刑事訴訟規則254条1項)。また地方裁判所,家庭裁判所または簡易裁判所の第一審判決中で,地方公共団体の条例,規則が憲法または法律に適合するという判断がなされた場合,検察官は,その判断が不当であることを理由に最高裁判所に上告をすることができる(254条2項)。ただし,どちらの場合も相手方の控訴審の審理を経る利益(審級の利益)を害さないように,控訴の申立てがあったときは,跳躍上告は効力を失う(255条)。
執筆者:大須賀 虔
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