出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
建築物において,葺(ふ)き下ろした屋根の端が柱や壁から外へ突き出た部分をいう。かつては檐,簷の字を用いた。木造建築では柱通りあるいはそこから持ち出して軒桁を通し,垂木(たるき)を斜めに架けて構成されており,柱や壁を風雨からまもる重要な役割を果たす。日本建築の軒は地(じ)垂木だけの一軒(ひとのき),地垂木と飛檐(ひえん)垂木からなる二軒(ふたのき)のほか,まれに飛檐垂木を二重に設けた三軒(みのき)があり,さらに垂木の打ち方によって平行である繁(しげ)垂木と疎(まばら)垂木,ほぼ放射状となる扇垂木,隅だけ放射状の隅扇垂木,それに垂木を打たない板だけの板軒などに分かれる。したがって,二軒繁垂木,一軒板軒というように表示する。古くは垂木だけで支持されたが,鎌倉時代末以降,桔木(はねぎ)が加えられ,江戸時代には桔木だけで支持されるものも現れた。日本建築では,軒の出が深く隅で反り上がるのが普通で,軒の出の割合や軒反りの形などが全体の美しさを左右する大きな要素となり,同時に,深い軒の支持や反り上りの処理が技術上最もむずかしい部分でもある。出入口上部などの軒につける唐破風(からはふ)を軒唐破風といい,雨を左右に落とす役目を果たす。また古くから端午の節供には,軒端に病難よけのまじないとして菖蒲を挿すことが行われ,釣り忍(つりしのぶ)も中世の絵巻にみえる。
執筆者:浜島 正士
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
建物の屋根で、外壁の線から外に突出した部分をいう。通常は建物の外周に沿って連続した形となり、開口の上部など部分的に取り付けられる庇(ひさし)と区別する。軒は強い日差しに対し影をつくり、激しい風雨から壁面や開口を保護する役目をもち、深い軒はモンスーン地帯の建築に共通する意匠上の特徴ともなっている。しかし勾配(こうばい)の急な屋根を突出させ深い軒をつくれば、軒先が低くなって建物の使用上不便を生じる。日本建築ではこれを解決するために野屋根(のやね)や化粧軒裏がくふうされた。その結果、軒下が屋内と屋外をつなぐ重要な生活空間として活用できるようになり、広い縁側をとることも可能となった。
軒裏の垂木(たるき)を軒桁(のきげた)から軒先まで1本の材で通すものを一軒(ひとのき)、2段に分けるものを二軒(ふたのき)という。通常の和風建築は一軒であるが、薬師寺東塔以降の主要な仏寺ないしその影響を受けた建物では二軒にするのが通例である。
[山田幸一]
…室町時代に五山では庵居の風習が盛んとなって多く設立され,幕府では塔頭造営を規制したことがある。山号をもたず,院,庵,軒などの称号をもった。独立した一寺ではないが,所領を保有して末寺をもち,同門の派徒のよりどころ,一派の拠点となって規模も拡大し,実質的には一寺としての発展をみる。…
…このため建物の外観は軽快となり,量感に乏しくなる。これは構造から生じた必然的な結果でもあるが,自然にそうなったというより,大きな壁面を構成できる大壁造の城郭においても,多くの軒や破風などによって壁を区切り,量感よりも軽快さを求めているから,意匠の好みといってよかろう。構造材である柱や梁などがすべて露出される結果,構造材はそのまま化粧材となる。…
※「軒」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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