転ぶ(読み)コロブ

デジタル大辞泉 「転ぶ」の意味・読み・例文・類語

ころ・ぶ【転ぶ】

[動バ五(四)]
ころころと回転しながら進む。ころがる。「子犬が―・ぶように駆けてくる」
からだのバランスを失って倒れる。転倒する。「ぬかるみで滑って―・んだ」
物事の成り行きが他の方向に変わる。事態がある方向へ向かう。「どちらへ―・んでも大勢は変わらない」

江戸時代キリシタン幕府弾圧されて仏教に改宗する。
権力誘惑に負けて、今までの主義主張などを変える。転向する。「金に―・んで言いなりになる」
芸者などがひそかに売春をする。
「二貫も御祝儀を遣りゃすぐ―・ぶっていうんで」〈荷風腕くらべ
[可能]ころべる
[類語]転がる転げるこける倒れるひっくり返るくつがえ転倒する横転する転覆する倒壊する卒倒する昏倒こんとうする潰れる

まろ・ぶ【転ぶ】

[動バ五(四)]
ころがる。
「犬のように―・びながら」〈有島クララ出家
ひっくりかえる。倒れる。ころぶ。
「地響して横様に―・びしが」〈紅葉金色夜叉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「転ぶ」の意味・読み・例文・類語

ころ・ぶ【転】

  1. 〘 自動詞 バ五(四) 〙
  2. ころころと回転する。ころがる。まろぶ。
    1. [初出の実例]「『馬共おといてみん』とて、鞍をき馬をおいおとす。或は足をうちおって、ころんでおつ、或はさうゐなく落ちて行もあり」(出典:平家物語(13C前)九)
  3. 倒れる。現代では、人などがつまずいて倒れる場合にいう。こける。
    1. [初出の実例]「桑は上は小にして根が深う入た程に、根かへりがせいで始終ころばぬぞ」(出典:土井本周易抄(1477)二)
  4. 横になる。臥す。寝ころぶ。
    1. [初出の実例]「僕はさっき芝生に転んでた時、柔かい草が身体に触っていい気持だったよ」(出典:人生の幸福(1924)〈正宗白鳥〉二)
  5. キリシタンがその信仰を捨てて仏教などに改宗する。江戸時代、弾圧を受けたキリスト教徒についていう。転じて、自己の主義、主張を捨てて転向する。
    1. [初出の実例]「日本人のきりしたんころふと云をば、命をたすけ、ころはざるをば諸国にて死罪に行るること数百人におよべり」(出典:慶長見聞集(1614)三)
  6. 男女が私通する。
    1. [初出の実例]「われらがやうなるいやしき雲の下人は〈略〉ころび申事も、中々わきまへざるなり」(出典:仮名草子・薄雪物語(1632)上)
  7. 芸者、遊女、しろうと女などがひそかに売色する。
    1. [初出の実例]「京に京にはやる、おきゃがりこぼしやよ、とのだに見ればつひころぶ」(出典:虎明本狂言・二人大名(室町末‐近世初))
  8. 物事のなりゆきが別の方向に変わる。ある事態になる。また、ある方向に気持が移る。なびく。
    1. [初出の実例]「望みといふは古風なお仕着(しきせ)、大概知れた紋切り形、女の手切れは、金と転(コロ)んで」(出典:歌舞伎・東海道四谷怪談(1825)四幕)
  9. (「ころんでいる」の形で)何もしないでぶらぶらしている。
    1. [初出の実例]「其所で、何時迄転んで居てもしやうは無いから、と無理に勧めて同道して」(出典:少年行(1907)〈中村星湖〉一〇)

まろ・ぶ【転】

  1. 〘 自動詞 バ四段活用 〙
  2. ころがる。ころげる。
    1. [初出の実例]「まろふ玉あふ方つひにあるものをうちはへ恋ひばなどかとぞ思ふ」(出典:古今和歌六帖(976‐987頃)五)
  3. ひっくりかえる。倒れる。ころぶ。
    1. [初出の実例]「大地震ありき。古き堂のまろばぬなし」(出典:愚管抄(1220)五)

まる・ぶ【転】

  1. 〘 自動詞 バ四段活用 〙まろぶ(転)
    1. [初出の実例]「おつる・くづるる・やぶるる・まるぶなど申すは、強き響きなれば、ふりも強かるべし」(出典:風姿花伝(1400‐02頃)六)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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