デジタル大辞泉
「頌」の意味・読み・例文・類語
じゅ【×頌】
《〈梵〉gāthāの訳》梵語やパーリ語の詩体の一。仏教では仏・菩薩の功徳や思想などを述べた詩句をいい、漢訳されたものはふつう四言・五言の形をとる。偈。「頌を唱える」「頌偈」
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しょう【頌】
- 〘 名詞 〙
- ① 「詩経」の六義(りくぎ)の一つで、風、雅とともに内容上の分類の一つ。君主の盛徳をほめ、祖先神に告げる宮廷歌。周頌・商頌・魯頌の三つに分かれる。
- [初出の実例]「和歌有二六義一。一曰風、二曰賦〈略〉六曰頌」(出典:古今和歌集(905‐914)真名序)
- [その他の文献]〔詩経大序〕
- ② 人の徳や物の美などをほめたたえることば。また、そのことばを入れた詩歌。頌詞。
- [初出の実例]「頌 いはひ歌の心」(出典:ささめごと(1463‐64頃)上)
- 「温泉頌」(出典:俳諧・芭蕉真蹟懐紙(温泉頌)(1689))
- ③ キリスト教で三位一体の神に対する讚美の歌詞をもつ歌。
- [初出の実例]「ミゼレエレ、メイ、ドミネ、憐を我に垂れよ、主よの句に取りたるにて、第五十頌の名なり」(出典:即興詩人(1901)〈森鴎外訳〉精進日・寺楽)
- ④ ⇒じゅ(頌)
じゅ【頌】
- 〘 名詞 〙
- ① 仏語。中国で、一般に韻文体の歌謡、詩句、聖歌などをいうが、狭義には経文中の韻文体の詩句をいい、広義には散文・韻文にかかわらず、字数が三二からなる一節をいう。→偈(げ)。
- [初出の実例]「諸行無常のしゅをば、ただ涅槃経の偈とのみこそしりたりつれ」(出典:栄花物語(1028‐92頃)鶴の林)
- ② ⇒しょう(頌)
ず【頌】
- 〘 名詞 〙 仏語。漢訳経文中の、一般には四句からなる韻文体の歌謡・詩句・偈文などをさす。じゅ。→偈(げ)。
- [初出の実例]「なにともなき経の端うち誦み、倶舎(くさ)のずなど誦(ず)しつつありく」(出典:枕草子(10C終)一二〇)
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普及版 字通
「頌」の読み・字形・画数・意味
頌
人名用漢字 13画
(旧字)
13画
(異体字)
19画
[字音] ショウ・ヨウ・ジュ
[字訓] たたえる
[説文解字]
[金文]
[字形] 形声
声符は(公)(こう)。に(訟)・(松)(しよう)の声がある。は前の公廷の平面形。その公廷で祝頌のことを行う。〔説文〕九上に「皃(かたち)なり」というのは、重文にの字があり、その字形によっていうものであろう。頁(けつ)は儀容を整えた形。公廷に拝舞して祖徳を頌することをいう。阮元の〔釈頌〕に頌を容とし、また王国維の〔釈頌〕に、頌を舞詩とすることを執一の見として廃し、「其の風に異なるものは聲に在り」とするが、の字形は声・容に関せず、公廷で祖徳を頌するにある。公廷で祖に訴えることをといい、はいずれも公廷をいう。
[訓義]
1. たたえる、先人の徳をたたえる、その歌辞。
2. うらかたのことば。
3. 容と通じ、さま、かたち。
4. 従容、ゆるやか、ゆとり。
[古辞書の訓]
〔名義抄〕 ホム 〔字鏡集〕 カタチ・ウタフ・ホム
[語系]
・ziongは同声。先公の公廷で、その徳をたたえるをといい、哀告することをという。
[熟語]
頌偈▶・頌歌▶・頌義▶・頌▶・頌辞▶・頌酒▶・頌述▶・頌称▶・頌椒▶・頌声▶・頌嘆▶・頌▶・頌徳▶・頌読▶・頌美▶・頌▶・頌礼▶・頌儀▶
[下接語]
謳頌・歌頌・賀頌・吟頌・偈頌・詩頌・祝頌・称頌・推頌・善頌・追頌・碑頌・賦頌・褒頌・名頌・誄頌・勒頌
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頌 (しょう)
sòng
中国における詩の六義(りくぎ)の一つ。〈風〉〈雅〉と並んで《詩経》の一分野を構成する。周王室および魯・宋(商)の諸侯が宗廟で祖先をたたえた神楽歌(かぐらうた)である(《古今集序》は〈いはひうた〉と訓ずる)。そこから発展して,韻文の文体の一種となり,主として個人の功業をたたえる内容をもつ。4字句から成り,偶数句で押韻する。《詩経》の伝統を承けて,典雅な趣が貴ばれる。このほか仏の徳を賛美する韻文も頌(じゆ)と称される。
執筆者:興膳 宏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
頌
しょう
古くは、中国最古の詩集『詩経(しきょう)』において、全詩を六つのジャンル(六義(りくぎ))に分類したうちの一つで、宗廟(そうびょう)の祭礼における舞楽の歌をいう。「ほめうた」の意。一種特有の文体で、農事の神々、祖先、君王の盛徳、成功を形容し、賛美、頌揚、祈求するものであった。その後、頌揚の対象が鬼神帝王から一般人や普通の事物へと拡大され、漢の揚雄(ようゆう)の「趙充国(ちょうじゅうこく)頌」、晋(しん)の劉伶(りゅうれい)の「酒徳頌」、唐の韓愈(かんゆ)の「子産が郷校を毀(やぶ)らざるの頌」などがそれである。
[杉森正弥]
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頌
しょう
Song
中国,文体の一種。もと『詩経』の作品を風,雅,頌の3体に分けた一つで,周の宗廟の祭祀にあたって奏され,先祖の功徳をたたえる韻文であったが,のち一般に人や物事をほめる内容の文章の一体をさすことになり,散文でも韻文でもつくられるようになった。前漢の揚雄の『趙充国頌』,六朝時代晋の劉伶の『酒徳頌』,陸機の『漢高祖功臣頌』などが有名。
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世界大百科事典(旧版)内の頌の言及
【頌】より
…《詩経》の伝統を承けて,典雅な趣が貴ばれる。このほか仏の徳を賛美する韻文も頌(じゆ)と称される。【興膳 宏】。…
【偈】より
…サンスクリットのqāthāを音訳して偈陀(げた)・伽陀(かだ),意訳して偈頌(げじゆ),略して頌という。韻文で1句が五言,または七言で表現され,4句をもって一偈とするが,とくに長いものは重頌と称する。…
【詩】より
…さらに,文字の発明以前には,それぞれの共同体の存在理由,歴史,習慣や規律などを口誦によって伝承する必要があり,そこから,記憶にも便利で聴き手にも感銘を与える韻律形態をととのえた,叙事詩や教訓詩が生まれてきたと考えてよい。 したがってどの民族も,その文明の最初期の段階から,宗教的な頌歌,説話的な叙事詩,抒情的な歌謡などを持っていたものと思われる。くり返し享受されているうちにしだいにテキストが定まり,とりわけ祭儀や宮廷行事などの場を中心に専門的な朗吟者が,ついで専門的な作者が出るようになったものだろう。…
【詩経】より
…孔子以来,儒家の経典とされた。諸国の民謡を集めた〈風〉,宮廷の音楽〈雅〉,宗廟の祭祀の楽歌〈頌〉の三部分から成る。〈風〉は,〈国風〉とも呼ばれ,周南・召南・邶(はい)・鄘(よう)・衛・王・鄭・斉・魏・唐・秦・陳・檜・曹・豳(ひん)の15国160編,〈雅〉は,小雅74編・大雅31編,〈頌〉は,周頌31編・魯頌4編・商頌5編を収める。…
※「頌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」