酒田港の北西約三九キロに位置する日本海の小島。海を挟んで東に鳥海山を望み、鳥海国定公園に含まれる。江戸時代には漁労の島として、また酒田湊の補助港として知られた。本土との間の海は比較的深く、付属島はすべて無人で、
本島南部に縄文時代の
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
山形県北西方,酒田港より北西約39kmにある日本海上の島。酒田市に属する。主として新第三紀中新世の玄武岩質凝灰角レキ岩から成る隆起海食台地で,南北約3km,周囲約10km,面積約2.5km2。最高点の標高は69m。対馬海流の影響で冬季も温暖で,タブノキの群落やムベ,モチノキなど暖地性の常緑広葉樹が多い。居住の歴史は古く,縄文時代の居住跡がある。近世には庄内藩に属し,飛島港は西廻海運が盛んなころは西風に強い避難港,風待港,中継港として利用され,問屋も置かれた。明治以降は交通手段の変化に伴い中継港の機能は失われたが,昭和初期から港湾の整備も進み,日本海沿岸のイカ,タラ漁などの基地となった。北海漁場への出稼ぎが盛んとなった明治中ごろからは,出稼ぎさせるための南京小僧と呼ばれるもらい子制度がみられた。酒田港から定期船の便があり,春から秋にかけて磯釣りなどの観光客でにぎわう。島全体が鳥海国定公園に属し,西沖合約1kmの御積(おしやく)島とともにウミネコの繁殖地(天)で知られる。
執筆者:中川 重
法木(ほうき),中村,勝浦の3集落とも,夏のイカ漁と冬のタラ漁を営んできたが,島内で収穫される米はわずか50石程度であり,江戸時代から行商船が米どころの庄内や由利地方(現,秋田県南西部)へ通う慣行があった。島の女が乗り組んで〈ダンカ〉と呼ばれる得意先を回り,毎年同じダンカに泊まって,春には五月(さつき)船が田植肴(ざかな)と呼ばれる鮮魚を,秋の米の収穫期には秋船がワカメなどの海藻,イカやサザエの塩辛,タナゴ,トビウオ,ハツメなどの干物を売り,米を買った。
執筆者:高桑 守史
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
山形県北西方、酒田(さかた)港の北西約40キロメートルの日本海上にある島。古くはトドの来る島から「とど島」ともよばれた。酒田市に属する。日本海沿岸の奥尻海嶺(おくしりかいれい)の主峰が海上に現れたもので、面積2.75平方キロメートル。南北約3キロメートル、周囲12キロメートル。新第三紀中新世の玄武岩質凝灰角礫(かくれき)岩からなる堆積(たいせき)岩を主とし、部分的に玄武岩、流紋岩、安山岩などの貫入がみられる。地形的には全般的に平坦(へいたん)で、海岸段丘が発達し、最高地点でも68メートルにすぎない。遠望すると海岸線を急崖(きゅうがい)で限られた台状を呈す。島の南西に火山岩からなる御積(おしゃく)島や烏帽子(えぼし)諸島がある。対馬海流(つしまかいりゅう)の影響で冬季も温暖で、タブの群落やムベ、モチノキなどの常緑広葉樹も多く、暖地性植物の北限地、またオノミチサンゴの最北生息地。縄文時代の土器や人骨が出土した海食洞のテキ穴遺跡がある。近世には庄内(しょうない)藩に属し、漁業を生業としたが、勝浦、中村、法木(ほうき)の3集落間に激しい漁場争いもあった。また西廻航路(にしまわりこうろ)が盛んなころは西風に強い避難港、風待ち港、中継港として利用され、十数軒の問屋もあった。1914年(大正3)酒田―勝浦間に定期便が就航。1932年(昭和7)勝浦築港以後は港湾としての整備も進み、日本海のイカ、タラ漁など沿岸・沖合漁業の基地となっている。現在は離島振興法などによる発電設備やダム築堤による簡易水道も完成、民宿もできて5~10月にかけては磯(いそ)釣りなどの観光客でにぎわう。庄内浜および飛島の漁撈用具は国指定重要有形民俗文化財。ウミネコ繁殖地として国の天然記念物に指定。鳥海(ちょうかい)国定公園に属す。人口は1950年の1618人をピークに減少を続け、2009年(平成21)には272人となった。
[中川 重]
『『鳥海山・飛島』(1972・山形県総合学術調査会)』
愛知県西部、海部郡(あまぐん)にある村。村域のほとんどが日光川、筏(いかだ)川下流の干拓によってできた土地で、水田地帯で稲作が行われている。伊勢湾岸(いせわんがん)自動車道、名四国道(国道23号)が東西に、名古屋第二環状自動車道、国道302号が南北に走り、伊勢湾岸自動車道の飛島インターチェンジと名古屋第二環状自動車道の飛島北インターチェンジがある。名古屋市との結び付きが強い。海抜ゼロメートル地帯で、伊勢湾台風(1959)で長期冠水したが、災害復興事業によって土地改良が進んだ。南部の湾岸には埋立地ができ名古屋港西部臨海工業地帯の木材工業地区の集結地となっている。埋立地の先端に西名古屋火力発電所がある。面積22.42平方キロメートル(境界一部未定)。人口4575(2020)。
[伊藤郷平]
『『飛島村史』全3巻(1999~2001・飛島村)』
岡山県南西部、瀬戸内海の笠岡(かさおか)諸島の島。大飛島(おおびしま)(1.05平方キロメートル)と小飛島(こびしま)(0.3平方キロメートル)からなり、笠岡市に属す。両島間は干潮時に長さ350メートル、幅10~30メートルの砂州が発達し徒歩で渡ることができたが、潮流の変化などにより現在は砂州の規模が小さくなっている。海運業が主産業であるが、近年は出稼ぎ人口が多い。瀬戸内海国立公園の一部。大飛島の洲の南遺跡は奈良時代から平安時代にかけてのもので、出土品は国の重要文化財に指定され、一部が笠岡市立郷土館で展示されている。人口は大飛島108(2009)、小飛島31(2009)。
[由比浜省吾]
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