奈良県明日香村にある円墳。1972年に「飛鳥美人」と呼ばれる西壁女子群像などの人物群像や、四神などの極彩色壁画が国内で初めて見つかり、全国的に注目された。壁画は文化庁による管理で非公開とされ、現地で保存されてきたが、2004年に劣化が判明。07年に修復のために石室ごと解体する異例の措置が取られ、同村の修復施設でクリーニング作業が続く。文化庁の検討会で、修復完了後も墳丘内に戻さない方針が決まっており、古墳近くに展示ができる保存施設を整備する方向で議論が進んでいる。
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飛鳥時代後半の壁画古墳。奈良県高市郡明日香村平田の丘陵南斜面にある直径約20m,高さ約5mの小円墳で,1972年発掘された。墳丘は土質の異なる土を互層につき固めた版築積みで,中央に凝灰岩製の石棺式石室を築き,石室前の墓道には方形の礼拝石を置く。石室内部の全壁面にしっくいを塗り,東壁中央に青竜,西壁中央に白虎,北壁に玄武(南壁には朱雀が描かれていたと推定されるが剝落している)の四神を配し,青竜の上に日輪,白虎の上に月輪を配する。東西壁の手前には男性4人,後方に女性4人の群像,また天井および側壁面には円形の金箔を朱線で結んだ星宿を描く。石室内の漆塗木棺の表面には金箔を貼る。棺の装飾として,金銅製の透し飾金具,円形飾金具と,鐶座金具の八角形座金具が出土した。副葬品は白銅製海獣葡萄鏡,銀装大刀外装具,ガラス玉,琥珀玉がある。人骨は熟年男性1体があった。石室前には壁画保存の施設を作り,壁画は現状のまま保存している。江戸時代文武陵に推定された時,墳頂に1本の松があったところから,高松塚の名がある。
執筆者:猪熊 兼勝 壁画の発見は,考古学にとどまらず古代史,美術史など関連学界に多くの影響を与えたが,ことに極彩色の四神,男女群像また星宿の壁画は,中国初唐末706年(神竜2)の永泰公主墓壁画中の男女群像や,朝鮮半島高句麗の墳墓壁画中の四神図などとの深い関係を示すものとして注目された。さらに壁画中に見いだされる文様や壁画技法には,法隆寺金堂壁画に共通する点が多く,その製作年代や各モティーフの源流を考えるうえで重要である。
執筆者:百橋 明穂
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飛鳥(あすか)の古墳を代表する7世紀末~8世紀初頭の壁画古墳。特別史跡。奈良県高市(たかいち)郡明日香(あすか)村平田の丘陵南斜面に築かれた直径約20メートル、高さ約5メートルの円墳。
埋葬の施設は墳丘中央で南に開口する凝灰岩製の石棺式石室。内法(うちのり)は長さ265.5センチメートル、幅103.5センチメートル、高さ113.4センチメートル。石室内部の壁、天井、床に漆食(しっくい)を塗り、東・西・北壁と天井に壁画を描く。東壁の中央に青竜(せいりゅう)、上に日像、南に男子4人群像、北に女子4人群像。西壁も中央に白虎(びゃっこ)、その上に月像を配し、南に男子4人群像、北に女子4人群像、また北壁の中央に玄武(げんぶ)を描く。天井には径9ミリメートルに切り抜いた金箔(きんぱく)を星とし、朱線で結ぶ星宿をつくる。
石室前には中軸線上に幅3メートルの墓道が墳丘外へと開き、石壁扉石より南5メートルには発掘の動機となった方形切り石の礼拝石がある。石室を覆う墳丘土は土質の異なる盛土(もりつち)を互層に叩(たた)きしめた版築で築く。石室西寄りに出土した漆塗り木棺は内面を白土の下地に朱彩。外面は漆膜上に金箔を貼(は)る。人骨は熟年男性一体分があった。棺は装飾されたらしく、金銅製の透飾金具、円形飾金具、金銅製座金具がある。中世に盗掘にあったが、残された副葬品は白銅製海獣葡萄鏡(ぶどうきょう)、銀装大刀外装具、ガラス玉、琥珀(こはく)玉があった。出土品は国立飛鳥資科館で展示している。
1972年(昭和47)3月の壁画発見は、考古学、古代史、美術史をはじめ、関連分野にも多くの影響を与えた。また社会的にも関心が集まり、壁画保存のため保存科学の総力をあげた保存施設がつくられた。古墳横に壁画の模写を展示する高松塚壁画館がある。
[猪熊兼勝]
『猪熊兼勝・渡辺明義編『高松塚古墳』(『日本の美術217』1984・至文堂)』▽『高松塚総合学術調査会編『高松塚古墳壁画』(1974・便利堂)』
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奈良県明日香村上平田にある古墳終末期の円墳。石室に四神,星宿(せいしゅく)と人物像の彩色壁画が描かれていたことで著名。奈良盆地南部の丘陵上に築かれ,直径18m,高さ5mある。1972年(昭和47)の調査で凝灰岩の切石をくみあわせた石棺式石室が発見された。石室は長さ2.7m,幅1m余,高さ1.2mの内法をもち,墳丘は版築(はんちく)している。壁画は内壁に漆喰(しっくい)を塗った上に描かれ,東壁に青竜と日輪,西壁に白虎と月輪,奥壁に玄武(げんぶ)があり,南壁の朱雀(すざく)は欠落している。東西両壁の手前に4人の男性,後方に4人の女性を華麗に配し,天井から側壁にかけて金箔の点を朱線で結んで星宿を表す。漆塗木棺・棺金具・金銅八花形透彫飾金具・海獣葡萄鏡・銀装飾大刀・玉類が出土した。壁画の表現技法は中国・朝鮮半島の壁画古墳と関係が深い。7世紀末~8世紀初頭の築造とみられる。国特別史跡。壁画は国宝,文部科学省保管。出土品は重文。
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【絵画】
彫刻に比して絵画の遺品は皆無に近い。おもなものに仏画では法隆寺金堂壁画,世俗画では高松塚古墳の壁画があるにすぎない。法隆寺金堂壁画の制作年代には諸説あるが,現存する黄地平絹幡(ばん)(法隆寺献納宝物)が持統6年(692)に法隆寺へ献納されたとの銘文をもち,《法隆寺資財帳》が同7年に天蓋を,同9年に金光明経を法隆寺に下賜されたと伝えるなど,この時期に関係史料が集中している。…
※「高松塚古墳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...
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