デジタル大辞泉
「させる」の意味・読み・例文・類語
させる[助動]
[助動][させ|させ|させる|させる|させれ|させろ(させよ・させい)]《古語の助動詞「さす」の下一段化したもの》動詞の上一段・下一段・カ変活用の未然形に付く。
1 使役の意を表す。「子供にすきなだけ食べさせる」
2 (「させていただく」「させてもらう」の形で)相手方の許しを求めて行動する意をこめ、相手への敬意を表す。「今月限りで辞めさせていただきます」「答えさせてもらう」
3 他の行動に対する、不干渉・放任の意を表す。「どうしても受験したいなら、受けさせるのだな」「好きなだけ食べさせなさい」
4 (多くは「させられる」「させたもう」の形で)尊敬の意を表す。現代では文語調の表現に用いられ、高い敬意を表す。「神よ、人々に恵みを垂れさせたまえ」→しむ →しめる →す →せる
[補説]「させる」は「御覧ぜさせられる」「講ぜさせる」のように、サ変動詞の未然形に付くこともある。
さ・せる[動]
[動サ下一][文]さ・す[サ下二]《サ変動詞「す」の未然形「せ」に使役の助動詞「さす」の付いた「せさす」の音変化から》
1 人にある行為をするようにし向ける。「勉強を―・せる」
「人ニ損ヲ―・スル」〈ロドリゲス日本大文典〉
2 するにまかせる。することを許す。「好きなように―・せる」
[補説]現代の口語文法では、「さ」をサ変動詞「する」の未然形の一とし、それに助動詞「せる」の付いたものとしている。
させ‐る[連体]
[連体]《動詞「さ(指)す」の已然形+完了の助動詞「り」の連体形から。あとに打消しの語を伴って用いる》特に取り立てていうほどの。さほどの。さしたる。
「皆、馬芸、―ことなき事どもなり」〈徒然・二三八〉
[補説]「然せる」とも書いて、副詞「然」に、サ変動詞「す」の未然形、完了の助動詞「り」の連体形が付いたものからとみる説もあるが、「指せる」からとする説に従う。→さしたる
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
させる
〘助動〙 (活用は「させ・させ・させる・させる・させれ・させよ(させろ)」。上一段・下一段活用、カ行・
サ行変格活用の動詞の未然形に付く) さす
(活用は「させ・させ・さす・さする・さすれ・させよ」。上一段・下一段活用、上二段・下二段活用、カ行・サ行変格活用の動詞の未然形に付く)
[一] 使役の意を表わす。
① 他にその
動作をさせる意、またはそのように誘発する意を表わす。…させる。
※竹取(9C末‐10C初)「月の都の人まうで来ば、捕へさせん」
※
徒然草(1331頃)五一「さて、
宇治の里人を召して、こしらへさせられければ」
② そのような動作、作用が行なわれることを許可する、またはそのまま放任する意を表わす。…のままにする。…させておく。
武士ことばとして、受身の「らる」の代わりに用いられることがある。
※源氏(1001‐14頃)絵合「あながちに隠して心安くも御覧ぜさせず、なやまし聞ゆる」
※保元(1220頃か)中「四郎左衛門も、内甲(うちかぶと)を射させて引き退く」
③ 許しを依頼する意を表わす。
※
菜穂子(1941)〈
堀辰雄〉二「此事務所をやめさせて下さいと云ひ出しかけて」
[二] 敬意を表わす。
① (尊敬を表わす語の上に付いて) 尊敬の意を強める。
※源氏(1001‐14頃)
桐壺「御胸つとふたがりて、
つゆまどろまれず、明かしかねさせ給ふ」
※
平家(13C前)四「
法皇もおそれさせ在
(まし)ましければ、元日元三の間、参入する人もなし」
② (謙譲語「聞こゆ」に付けて) 謙譲の意を強める。申しあげる。→
きこえさす。
※枕(10C終)一八四「よろしうだに思ひ聞えさすべきことかは」
[語誌](1)助動詞「す」と接続の上で相補いあう関係にあり、意味は同一である。なお、動詞の活用語尾に準ずるものとして、接尾語とする説もある。
(2)中世後期(室町時代)になると、二段活用の一段化によって下一段活用となる。また、「いま一度重射さしたまへ」〔史記抄‐一一・孫呉〕、「少(ちっと)の間寝さして下さんせ」〔歌舞伎・傾城江戸桜‐中〕などのように、連用形が「さし」となって四段化した例も現われる。さらに、尊敬の用法が衰退し、「随員を従えさせられる」など、「られる」と重ねた形でのみ用いられる。
させ‐る
〘連体〙 (動詞「指す」の命令形に完了の助動詞「り」の連体形の付いた「指せる」が連体詞化したもの)
① (下に打消の語をともなって) 特にこれというほどの。これといった。たいした。さしたる。
※源氏(1001‐14頃)若菜上「させることなきかぎりはきこえうけ給はらず」
※徒然草(1331頃)六一「下ざまより事おこりて、させる本説(ほんぜつ)なし」
② 特にこれと定めた。特にこれこれの。
※浄瑠璃・曾我五人兄弟(1699頃)二「二の宮させる大名なれど、〈略〉工藤祐経をじょうきゃくにて」
[語誌]平安時代には、歌合の判詞や公家の日記に例を多数見る。中世以降、「させる」は「さしたる」へと語形が交代していく。
さ・せる
〘他サ下一〙 さ・す 〘他サ下二〙 (サ変動詞の未然形「せ」に使役の助動詞「させる(さす)」の付いた「せさせる(せさす)」の意に用いた語) 人に、ある動作をするようにしむける。
※宇津保(970‐999頃)国譲下「おまへの朽木に生ひたるくさびらどもあついものにさせ、苦竹など調じて」
※吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉二「もしもの変が起った時取り乱さない位の覚悟をさせるのも」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報