犯罪の嫌疑があるうえに,逃走または罪証隠滅のおそれがある被疑者および被告人は,刑事訴訟法上の強制処分である勾留によりその身柄を刑事施設に収容されることがある。この刑事施設を拘置所という。裁判所による有罪判決が確定し自由刑を執行するために受刑者を収容する施設は刑務所と呼ばれる。現行法上は,刑務所も拘置所も〈監獄〉の一種である(監獄法1条1項)。
現在,東京,名古屋,京都,大阪,神戸,広島,北九州の7都市に本所として拘置所(そのほか,刑務所・拘置所等の所轄の支所として106の拘置支所)がおかれている。
被勾留者も,拘置所において収容生活上の一定の規制を受けるが,勾留の主目的は被勾留者の逃走および罪証隠滅を防ぐことにあり,また被勾留者には〈無罪の推定〉を受ける刑事訴訟の当事者として手続上の防御権が保障されている点で,刑務所に収容される受刑者の場合と異なるため,その法的地位に応じた適正な収容生活の確保が拘置所に望まれている。法律上も,監獄法では,たとえば,作業につくか否かは本人の希望にまかせ(26条),なるべく独居拘禁に付することとしている(監獄法施行規則24条)ほか,衣類・寝具や糧食の自弁を許し(監獄法33,35条),接見や信書の発受に関してその相手方,度数などに制限をおかず(監獄法45,46条,監獄法施行規則123,129条1項参照),調髪の自由を認める(監獄法36条)など,受刑者とは違った配慮がみられる。
監獄法は〈警察官署ニ付属スル留置場〉を監獄に代用することを認めている(1条3項)。これを代用監獄という。実際上も,とくに被疑者を勾留する場所として広く活用され,現在では,起訴された被告人の勾留は拘置所,被疑者勾留は代用監獄が原則というのが実情といわれる。しかし,近時,代用監獄の活用の当否について,監獄法改正問題とも関連させながら,理論上および実務上多様な論議が交わされている。
なお,死刑の判決が確定し,その執行に至るまで,死刑確定者も拘置所に収容され,その処遇について,ほぼ被勾留者の場合に準ずることとされている(同法1条1項4号,9条)。
執筆者:三井 誠
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法務省設置法上の名称で、主として被勾留(こうりゅう)者や死刑確定者等を収容し、処遇する刑事施設のこと。「刑務所、少年刑務所及び拘置所組織規則(平成13年法務省令第3号)」に基づき、2010年時点で、東京都葛飾区、立川市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市、広島市、福岡市に本所としての拘置所が設けられ、そのほかに全国104の拘置支所が置かれている。
[石川正興]
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…被疑者,被告人や受刑者を収容する刑事施設の総称として,大正期から,監獄に換えて用いられている語。1947年の法務省設置法では,刑事施設として,刑務所,少年刑務所,拘置所の3種が規定されており,そこでいう刑務所は主として受刑者を収容して自由刑の執行を行う施設(行刑施設)とされる。上記の3種に,少年院,少年鑑別所,婦人補導院を加えて,矯正施設ともいう。…
…室町幕府になると,使庁の獄は不明確になり,中期には侍所頭人の邸の一画に牢を作ることがあり,法華僧日親もこれに籠められている。【羽下 徳彦】
[近世]
江戸時代の牢屋は拘置所たる性格をもつもので,その最大の機能は,刑事事件で取調中の者(ただしそのすべてではなく,重罪に相当するとの推定を強く受けたもの)を勾留することにあった。しかしこのほか,次の三つの機能をも有した。…
※「拘置所」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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