デジタル大辞泉
「出世」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
しゅっ‐せ【出世】
〘名〙
① 仏語。仏が衆生を救うために仮にこの世に現われ出ること。しゅっせい。
※
法華義疏(7C前)一「於
レ是衆生。歴
レ年累
レ月。蒙
レ教修行。漸漸益
レ解。至
下於
二王城
一始発
中一大乗機
上、称
二会如来出世之大意
一」
※源平盛衰記(14C前)二八「近くは
慈尊の出世
(シュッセ)を待ち遠くは三世に動転なしとかや」
※続日本紀‐天平宝字元年(757)一一月壬寅「皇帝皇太后、如
二日月之照臨
一並治
二万国
一。若
二天地之覆載
一長育
二兆民
一。遂使
下為
二出世之良因
一成
中菩提之妙果
上」 〔
摩訶止観‐三・下〕
③
叡山や興福寺などで、堂上貴族の
子息の出家して、妻帯しないもの、または
僧侶の高位に昇ったもの。出世者。
※太平記(14C後)九「中納言僧都経超、二位寺主浄勝二人より外は、供奉仕りたる出世・坊官一人も候はず」
④ 門跡などの貴種に近侍し教学を支える僧。出世者。
※醍醐寺新要録(1620)「貞和二年〈略〉十一日早旦入堂。出世等々相伴了」
⑤ (━する) 世の中に生まれ出ること。世に現われること。
※雑談集(1305)九「先老子出世(シュッせ)し、次孔子出」
⑥ 仏語。禅宗寺院の制度で、首座(しゅそ)から西堂(せいどう)に転ずることをいう。
※百丈清規抄(1462)三「大方西堂は出世して
嗣法の定た事ぞ。〈略〉出世の時こそ嗣法は定れぞ」
⑦ 仏語。禅宗寺院の住持となること。また、特に
公家の奏達によって、紫衣を賜わり、師号を受け、あるいは勅宣を蒙って官寺の住持となることをいう。立身出世の
観念はここから生まれたもの。
※正法眼蔵(1231‐53)礼拝得髄「つひに発心して、園頭をつとむること始終三年なり。のちに出世せりしとき、衆にしめしていはく」
⑧ (━する) 世に出て立派な身分になること。世に栄えること。立身。栄進。しゅっせい。
※不審条々(1403)「
故殿の御時も、余に入目に御座候て、御出世も遅々候」
※浮世草子・
武家義理物語(1688)一「しかも次第に出世
(シュッセ)の侍なれば」
⑨
女郎が一本立ちして張り見世に出ること。
遊郭の勤めに初めて出ること。
※
評判記・
色道大鏡(1678)三「太夫の新艘、出世
(シュッセ)の日より三ケ日の間、さげ髪にて後帯する法也」
しゅっ‐せい【出世】
〘名〙 (「せい」は「世」の漢音)
※仮名草子・夫婦宗論物語(1644‐46頃)「釈尊御入滅既に後五百歳に及び、慈尊彌勒の出世(シュッセイ)未遠しといへども、仏法を尋ぬるに」
※落語・孝行娘(1898)〈六代目桂文治〉「渡って聞いた耳学問、按摩取りから出世(シュッセイ)して、それから仕出した風薬」 〔李白‐竄夜郎於烏江留別宗璟詩〕
③ 世にぬきんでること。人よりはるかにすぐれていること。〔長恨歌伝〕
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
普及版 字通
「出世」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
世界大百科事典(旧版)内の出世の言及
【住職】より
…古くからある住持職([住持])の略称。住職になることを出世(しゆつせ)といい,住職として実際にその寺に入ることを入院(じゆいん),あるいは晋住(しんじゆう),また晋山(しんざん)という。住職という呼称は,今日では宗派を問わず多く用いられているが,歴史的にみると,寺院最高位の僧職の呼称は時代により宗派により,またそれぞれの寺院によって,さまざまの異称や尊称がある。…
【上人】より
…その綸旨を受けると,香衣を着ることができた。浄土宗では上人号を受けることを出世といった。浄土系諸宗や日蓮宗では僧の通号となっている。…
※「出世」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」