真綿(読み)まわた

精選版 日本国語大辞典 「真綿」の意味・読み・例文・類語

ま‐わた【真綿】

〘名〙 繭(まゆ)を煮て引き伸ばして作った綿。多く生糸(きいと)にならない屑繭を用いる。純白で光沢があり、やわらかくて軽い。着物に入れるなど用途が多い。《季・冬》
今堀日吉神社文書‐(永祿三年)(1560)一一月九日・近江得珍保内商人中申上事書案「木綿・真綿保内へ取候条々」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「真綿」の意味・読み・例文・類語

ま‐わた【真綿】

くず繭などを煮て引き伸ばして作った綿。じょうぶで軽く、保温力が大きい。防寒用衣類、紬糸つむぎいと原料などに用いる。 冬》
[類語]羊毛純毛ウールカシミアモヘア木綿綿めん純綿コットンジュート本絹正絹しょうけん人造絹糸シルク化学繊維

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「真綿」の意味・わかりやすい解説

真綿
まわた

くず繭を平面状に引き伸ばして綿のようにしたもの。製糸の原料とならない出殻(でがら)繭や玉繭などを、灰汁(あく)またはソーダを加えて煮沸精練し、よく水洗いしたのち水中で一顆(か)ずつ手で広げ、四角になるように四か所に釘(くぎ)を打った框(かまち)の上に広げ、釘に端をひっかけて方形にし、数枚重ねて乾燥する。これを角真綿という。近年は自家用としている傾向にあり、市場では見られなくなった。今日は袋真綿といい、袋状になっているものが市場に出ている。これは、繭の中に手を入れて広げ、袋状につくり、数枚重ねて乾燥したものである。江戸時代には帽子型のような型に、繭を袋状にしてかぶせ、何枚も重ねてつくった。当時の小袖(こそで)には真綿が用いられ、その需要は大であった。真綿は弾力性は小さいが、引っ張りに強く、切れにくく、保温性に優れている。産地は福島県、長野県、滋賀県などである。

 真綿は木綿綿の進出によって、敷き真綿として木綿綿の綿入れの補強に用いられていたが、近年はふとん、丹前などには敷き真綿を用いなくなっている。真綿は充填(じゅうてん)材、補強用として用いられるだけではなく、織糸としても用いられる。すなわち、真綿を細く引き伸ばし、これに撚(よ)りをかけて経糸(たていと)、緯糸(よこいと)をつくり、染色し、織機にかけて織り、紬(つむぎ)織物をつくる。これの代表的なものは、伝統織物として重要無形文化財になっている結城(ゆうき)紬があげられる。近年、袋真綿の大きいものを背負い真綿とよび、防寒用として市販されている。これは背を十分に覆う大きさのものである。ガーゼをかぶせ、背に負うと暖かい。軽くて暖かいので老人に喜ばれる。

[藤本やす]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「真綿」の意味・わかりやすい解説

真綿 (まわた)

繭を煮て引き伸ばし綿状にしたもの。生糸の副蚕である汚繭,揚繭,出殻繭や玉繭等の製糸のしにくいもの,不能のものをセッケン,灰汁(あく),ソーダ等のアルカリ剤で精練してよく水洗,1粒ずつ水の中で広げて引き伸ばし,中のさなぎ(蛹)や不純物を除去し,ゲバと称する真綿掛枠に広げて掛け,乾燥させる。これを角真綿(かくまわた),袋真綿,ひじ掛け真綿と呼ぶ。白くて光沢があり,柔らかく保温性に富む。良質のものは手紬糸の原料とし紬織物になる。防寒衣や丹前,どてらの引綿や布団綿に利用される。江戸時代の綿帽子は真綿で作られた。精練したものを機械的に引き伸ばした機械真綿は,紡績原料にしたり,篠状(しのじよう)にしてキルティングを行い防寒衣に使用したりする。産地は長野,滋賀,福島県が多く,近年は中国,韓国からの輸入が増えている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「真綿」の意味・わかりやすい解説

真綿【まわた】

屑繭(くずまゆ)を煮沸,精練ののち綿状に引きひろげたもの。丈夫で伸びがよく,軽くて保温力が大きい。綿入れなどの防寒衣類の中入綿や寝具などの引綿に用い,つむぎ糸の原料にする。
→関連項目玉繭綿

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「真綿」の意味・わかりやすい解説

真綿
まわた
floss silk

からつくった綿。玉繭または屑繭をソーダ,石鹸,灰汁 (あく) などの液で煮沸,精練してから,よく水洗いして引伸ばす。引伸ばし方によって,角 (つの) 真綿と袋真綿の2種類に分けられる。じょうぶで軽く,保温力に富み,光沢がある。紬 (つむぎ) 糸の原料とされるほか,綿入れの引綿,ふとん綿,防寒用中入綿などに用いられる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

化学辞典 第2版 「真綿」の解説

真綿
マワタ
floss silk

玉まゆまたはくずまゆを弱アルカリ剤を用いて,セリシンを溶解し,これを広げた形にしたもので,軽くて,柔らかく,含気量が多く,保温性にすぐれているため,防寒用材料として用いるとともに,つむぎ糸の原料などにも用いる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の真綿の言及

【ワタ(棉∥綿)】より

…パンヤのまくらは江戸時代のぜいたくの一つであった。(2)絹綿 真綿を指すこともあるが,繭の外側の毛羽に木綿綿を混ぜたもので,軽く暖かなのが特徴。高級布団や着物にする。…

※「真綿」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android