デジタル大辞泉
「詔」の意味・読み・例文・類語
しょう【詔】[漢字項目]
[常用漢字] [音]ショウ(セウ)(呉)(漢) [訓]みことのり
天子の命令。みことのり。「詔書・詔勅/聖詔・大詔」
[名のり]のり
みこと‐のり【詔/▽勅】
《「御言宣」の意》
1 天皇の言葉。仰せ言。大御言。
2 古文書の様式の一。天皇の命令を直接に下す文書。養老令の公式令には詔と勅の二つの様式が規定されている。
しょう〔セウ〕【詔】
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みこと‐のり【詔・勅】
- 〘 名詞 〙 ( 「御言宣(みことのり)」の意 )
- ① 天皇が仰せになること。また、そのおことば。仰せ言。大御言(おおみこと)。
- [初出の実例]「疑ひて有司(つかさ)に命(ミコトノリ)して其の玉を所得(えし)由を推問はしめたまふ」(出典:日本書紀(720)仁徳四〇年是歳(前田本訓))
- ② 古文書の様式の一つ。天皇の命令を直接に下す文書。養老令の公式令(くしきりょう)には詔と勅の二つの様式が規定されており、詔は臨時の大事の場合、勅は尋常の小事の場合の文書とされる。勅は漢文体で書かれ、詔には漢文体のものと宣命体のものがあり、宣命体のものは宣命使が直接に、官人・衆庶に読み聞かせた。詔(しょう)。詔書(しょうしょ)。勅(ちょく)。勅旨(ちょくし)。
- [初出の実例]「天皇(すめら)が詔旨(おほみこと)らまと今勅(のりたま)へる御事法(みことのり)は、常の事には有らず」(出典:続日本紀‐天平元年(729)八月二四日・宣命)
- ③ 天皇が親しく国民にあらわされる御心。法律・勅令等法定の形式によらないで天皇が表示される御心。
しょうセウ【詔】
- 〘 名詞 〙 令制で、天皇の命令を直接下達する文書。養老令の公式令(くしきりょう)では臨時の大事は詔で、尋常の小事は勅で伝えると規定している。詔の草案は中務省の内記が作成し、これに宸筆で御画日(ぎょかくにち)(=天皇が日付の数字を書き入れる)を施し、中務卿に賜う。これは中務省に案として留め、別に一通を写して太政官に送り、大臣・大納言が自署を加え、宸筆で御画可(ぎょかくか)(=「可」字を書き入れる)を施し、太政官に施行(しぎょう)させる。詔は本来読み聞かせるのが主意であり、そのための文体で書かれた詔を宣命という。みことのり。→詔勅。
- [初出の実例]「詔書式。〈謂。詔書勅旨。同是綸言。但臨時大事為レ詔。尋常小事為レ勅也〉」(出典:令義解(833)公式)
- [その他の文献]〔文体明弁‐詔〕
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
普及版 字通
「詔」の読み・字形・画数・意味
詔
常用漢字 12画
[字音] ショウ(セウ)
[字訓] つげる・みことのり
[説文解字]
[字形] 形声
声符は召(しよう)。召は祝して、霊の降下を求める意。その神霊の告げるところを詔という。〔説文〕三上に「ぐるなり」とあり、詔誥の意とする。秦以後、天子の勅命をいう。
[訓義]
1. つげる、神のつげおしえること、おしえ、たすける。
2. おおせごと、みことのり。
3. めす、いたす。
[古辞書の訓]
〔新字鏡〕詔 奈豆久(なづく)、、与不(よぶ) 〔名義抄〕詔 ツグ・ヲシフ・ミチ・オモナフ・オツル・ミチ・タスク・オホセノモト・メス・ソシル/詔旨 コトトフニ 〔字鏡集〕詔 ワラフ・ツグ・ヲシフ・ミチ・ヨキコトバ・オホセ・ミコト・ノタマフ・メス・ヲモノフ・ヲクル・ソシル・タスク
[語系]
詔・招tji、召diは声義近く、召は神霊の降下を求めて祈る、招はその動作・行為、神の告げるところを詔という。詔はのち詔勅の意となる。
[熟語]
詔恩▶・詔可▶・詔格▶・詔記▶・詔黄▶・詔告▶・詔獄▶・詔策▶・詔冊▶・詔旨▶・詔使▶・詔辞▶・詔書▶・詔召▶・詔制▶・詔宣▶・詔籌▶・詔勅▶・詔板▶・詔命▶・詔諭▶・詔令▶
[下接語]
哀詔・遺詔・応詔・恩詔・下詔・嘉詔・銜詔・口詔・黄詔・手詔・受詔・書詔・署詔・承詔・称詔・親詔・制詔・聖詔・宣詔・大詔・待詔・天詔・伝詔・内詔・拝詔・布詔・扶詔・封詔・奉詔・鳳詔・褒詔・密詔・明詔・優詔・綸詔
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
詔 (しょう)
天皇のことばそのもの,または天皇のことばを宣(の)べ伝えること,あるいはその文書。法隆寺金銅薬師像の推古15年(607)の銘に見える〈詔〉は天皇のことばを意味し,《日本書紀》大化元年(645)条に〈巨勢徳太臣,高麗使に詔す〉と見えるのは,詔が天皇のことばを宣べ伝える意味に用いられた例である。やがて令の制定により公文書制度が整えられるに従い,詔も文書として記されるようになり,天皇のことばをそのまま和文で表現する詔すなわち宣命と,中国風の漢文の詔の両様式が成立した。この詔書の書式および作成・施行の手続を定めたのが,大宝・養老公式令の詔書式である。詔書式は詔書の冒頭の文言として〈明神御宇日本天皇詔旨〉以下5形式を定めているが,これらの文言は実例では宣命体の詔に見られるものであるから,書式例は宣命体のものを掲げたことが知られる。しかし詔書の作成・施行の手続については,宣命体,漢文体の双方について規定したと考えるべきであろう。《延喜式》中務式に見える漢文体の詔書の書式は,詔書式を補足する規定であると考えられる。これらから知られる詔書作成・施行の手続は次のとおりである。すなわち内記が起草した本文に,天皇が宸筆で日付を書き加える。これを御画日といい,案として中務省に保管される。別に1通を写して内印を加え,中務卿,大輔,少輔が位署して太政官へ送る。太政官では太政大臣以下が署名し,大納言が覆奏する。裁可になれば宸筆で可の字が加えられ,案として保管される。さらに1通を写し,宣告を行った後施行される。施行の方法については《令義解》に,在京諸司に対しては詔書の写しに官符をそえ,諸国に対しては詔書を写した官符を作成して施行するとあり,《類聚符宣抄》に元慶9年(885)の詔書を施行する官符の実例が見られる。詔書の原本として,1489年(延徳1)や1789年(寛政1)の改元の詔書が伝えられているが,これらには宸筆の画日や画可が加えられており,詔書式の書式にのっとっていることが知られる。
→勅
執筆者:柳 雄太郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
詔
しょう
天皇の意志を公布する文書。詔書,みことのり。臨時の大事や大権の施行に関する勅旨を伝える場合に用いられ,中務省の内記が作成した。宣命 (せんみょう) も同義で,詔とともに「みことのり」と読み,いわゆる万葉がなによる国文体の文章 (宣命体) を用いた。平安時代中期頃から宣し読む「みことのり」を宣命といい,文章に書き表わすもの (漢文体のもの) を詔というようになった。料紙は黄麻紙 (おうまし) を用いた。 1907年の勅令でも,皇室の大事,大権施行は詔書をもって公布することが定められたが,47年この名称は廃止された。 (→詔勅 )
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報