馬の耳に念仏(読み)ウマノミミニネンブツ

デジタル大辞泉 「馬の耳に念仏」の意味・読み・例文・類語

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

ことわざを知る辞典 「馬の耳に念仏」の解説

馬の耳に念仏

馬を相手にありがたい念仏をいくら唱えてもむだである。いくらよいことを言い聞かせても、まるで理解できなかったり、まともに耳をかたむける気がなく、何の効果もないことのたとえ。

[使用例] 「これはみんな個人の蔵書なのかい?」〈略〉「個人ときたね」浦辺は鼻の先で笑った。「当館の特色は、個人と公の境界が無限にファジーなところにある。〈略〉要するに学長私物を図書館の予算から購入するための隠れ蓑なんだよ。さすがに理事会から改善を勧告されているんだが、学長には馬の耳に念仏さ」[紀田順一郎*第三閲覧室|2003]

[使用例] 約束を守らぬ国、条約を無視する国なのだ、その国に対して条約論をやっても、馬の耳に念仏じゃないか[吉田茂*大磯随想|1962]

[解説] 「馬」は、もちろん比喩で、批評の対象となるのは聞く耳をもたない人間です。ことわざは、本人に聞く気がなければ馬と同じことで、いくら道理を説いてもむだなことを強調しています。ほかにも、「牛に経文」や「犬に論語」、「猫に経」など、動物とありがたい教えを組み合わせた類例がありましたが、今日では、「馬の耳に念仏」が最もよく使われています。
 古くは「馬に念仏」といわれていたものが、江戸中期に、当時よく知られていた「馬の耳に風」(これは漢語の「馬耳東風」に由来します)と一体化して日本独自の印象的な表現となり、しだいに広まったものと推定されます。

英語〕There's none so deaf as those who will not hear.(聞こうとしない者ほど聞こえぬ者はない)

中国〕対牛弾琴(牛に向かって琴をひく)

朝鮮쇠귀에 경읽기(牛に読経

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