日本大百科全書(ニッポニカ) 「ローム」の意味・わかりやすい解説
ローム
ろーむ
loam
語意と用法のうえで、二つの側面をもつことばである。本来の意味は、土粒や堆積(たいせき)物の粒子の集まりぐあいを区別して表すときに、その区分の一つに対してつけた呼称であって、粗粒子(すなわち砂)と細粒子(粘土)および中間粒子(シルト)の重量比が土性区分ダイアグラムの三角座標の中の中央下部の領域内に入るときに、国際土壌学会法でロームとよぶ。砂と粘土がほぼ半々に混じっているものと理解してよい。おおよその目安であるが、大小の粒子の集合物としてローム(ローム質、ローム状)は中間的な粗さを示し、より粗い砂質と、またより細かい粘土質(埴質(しょくしつ))と区別する上で便利である。この区別の仕方は、砂質ローム、粘土質ローム(埴質ローム、クレイローム)など中間的な粗さを言い表すこともでき、それが土壌における土性区分法となる。
一方、第二の側面は、ロームとは関東ロームの語で知られるように、火山灰の堆積物の層が褐色に風化した緻密(ちみつ)な、しかし削り取りやすい堅さの地層(赤土(あかつち)と俗称)として崖(がけ)などで観察されることから、この層をローム層とよび、この物質をロームとよぶことになったいきさつである。ここでいうロームは、風成火山灰の風化物すなわち赤土が、火山から放出された地質物質とはわからなかった初期の研究段階(明治末期から大正年間)に、地質学者が、砂礫(されき)層でもなく海や湖底の粘土層でもないこの特殊な赤土層を、その粒状から、まさに第一の意味(粒子集合物の粗さの名称)で便宜上ロームと名づけていた。のちの研究でこれが火山起源のものとわかってからも、習慣は抜けきらずそのままロームとよぶことに定着して今日に至っている。ただし赤土の物質は、火山灰の風化物としては細粒化が進んでいて、手ざわりの予測より粘土含有率は高く、薬剤で分散すると土性区分上はロームでなく、クレイロームまたはクレイに入る場合が多く、この点でも赤土をロームとするのは正しくない。
[浅海重夫・渡邊眞紀子]