翻訳|scapegoat
〈贖罪のヤギ〉などと訳される。古代ユダヤには白いヤギに人間の罪や苦難を背負わせて荒野に放す習慣(《レビ記》16章)があったが,ここから転じて他のものの責任の身代りとして,社会から迫害,圧迫される個人や社会層を指す。ナチズムにおけるユダヤ人や,スターリン主義下のトロツキスト,クラーク,日本では関東大震災における朝鮮人等が代表例である。これらの場合は,大きな政治的-社会的変動のなかで従来の社会制度がうまく機能していないため,人々が不安や挫折感を有している状況において,支配層が人々の不満や憎悪のはけ口を,他の,本来は無関係な対象に投射し,攻撃するように操作する。大衆の側では,本来の不安定の原因や責任を追及することよりも,社会的劣者や特定の社会層に攻撃の対象を見いだすことで,嗜虐的欲求が満たされ,不安や不満もいちおう解消される。このように偏見を利用して,大衆を操作するためのメカニズムがスケープゴートである。
執筆者:下斗米 伸夫
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…〈スケープゴート〉の典拠として〈アザゼルの羊〉の形での引用が一般的な聖書中の語。旧約聖書《レビ記》16章に贖罪行事とのかかわりで言及があるが,アザゼル自体の解釈は古来分かれている。…
…次に,荒野の悪霊アザゼルのために選ばれたヤギに,民衆のすべての罪を背負わせて荒野に送る。このヤギを〈贖罪のヤギ(スケープゴート)〉と呼ぶ。これは,神と交わるために,人間はすべての罪から潔(きよ)められていなければならないという考え方に基づく祭儀である。…
…悪魔の王たるサタンも,しばしばヤギの姿で図像化されている。 なお,身代りのヤギ,つまりスケープゴートということばは,旧約時代,人々が自分たちの罪を1頭のヤギになすりつけ,荒野に放って死に至らしめた儀式に基づくといわれる。この表現からわかるように,社会内的汚れをヤギに転移させ,それを野に放つことで汚れをはらう儀礼が,地中海世界にはあった。…
※「スケープゴート」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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