翻訳|bias
増幅回路や変調回路などに用いる電子管やトランジスタに動作の基準を定めるため、制御電極に定常的に加える直流電圧。バイアス電圧は電子管やトランジスタなどに入力信号がないときの安定値となる。この値を電子管の陽極電流またはトランジスタのコレクタ電流が最大電流の半分程度流れる点に設定するのをA級増幅、電流が流れ始める点に設定するのをB級増幅、全然電流が流れない点に設定するのをC級増幅といい、増幅しようとする信号の大小、必要とする出力の大きさ、波形ひずみの許容の程度、あるいは入力が搬送波であるか被変調波であるかによって、適した級のバイアス値を選択する。バイアス電圧は電子管では制御格子に負の電圧として与える。トランジスタでは種類によってコレクタに加える電圧の極性が異なるが、コレクタに加えた極性と同じ極性のバイアス電圧を与える。
テープレコーダーではひずみや雑音の少ない録音を行うために録音ヘッドに可聴周波数より高い高周波をつねに加えておくが、これはテープの励磁の度合いを一定にして録音の安定化を図るものであり、高周波バイアスとよばれている。テレビの撮像管では被写体の像に重ねて一定の光で光電面を照らす場合があり、これをバイアス光とよんでいる。
[石島 巖]
あらかじめ電圧をかけたり,電流を流したりしておくことによって,動作にかたよりをもたせること。電流を流してそれに対応する音を発生するスピーカーの場合,音声電流で直接電磁石を動作させると,電流の極性にかかわりなくその大きさに応じて鉄片などを引きつける力が決まってしまう。これでは,例えば1kHzの音声電流を流すと,音声電流が正のときも負のときもそのピークで引力も最大となって2kHzの音が出てしまう。これに対し,音声電流に直流バイアスをかけてやると,音声電流の極性に応じて,バイアス電流による引力を強めたり弱めたりすることになって目的を達する。増幅器の動作点を決めるバイアスのかけ方には多くの方法があり,入力交流信号の極性にかかわらずほぼ忠実に波形を増幅するには,入力バイアスは,ダイナミックレンジのほぼ中央にするA級がよく,逆に波形は乱れてもさしつかえない場合にはダイナミックレンジをはずした深いC級バイアスとして電力効率の高いパルス状増幅が用いられることもある。
執筆者:曽根 悟
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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