日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
バック(Linda B. Buck)
ばっく
Linda B. Buck
(1947― )
アメリカの医学者。ワシントン州シアトル生まれ。ワシントン大学で心理学を学んだ後、テキサス・サウスウエスタン医科大学で免疫学博士号を取得。コロンビア大学、ハワードヒューズ医学研究所、ハーバード大学などを経てフレッド・ハッチンソン癌(がん)研究センター部長となる。
アクセルとともに、鼻の奥にある嗅覚(きゅうかく)細胞には匂(にお)いの受容体が約1000種類もあることをマウスの実験で明らかにして1991年に共同で論文を発表した。人間には、この受容体は350種類ほどあることが分かってきた。
一つの嗅覚細胞は一つの受容体だけをもち、この受容体は複数の似た構造をもつ匂い物質を識別できる。匂いを認識した嗅覚細胞は、大脳の下部にある糸球に情報を集め、その糸球には匂いを識別する細胞群があり、匂いの地図もある。この情報はさらに大脳の匂い中枢に送られ、そこで匂いの認識や過去の匂いの思い出しなど高度な感情的な情報と結びついていることなどの事実を二人は解明した。このメカニズムは、視覚、聴覚など他の知覚システムでも同じであるとされており、業績は高く評価された。
2004年「匂い受容体と嗅覚システムの発見」の業績により、アクセルとともにノーベル医学生理学賞を受賞した。
[馬場錬成]