デジタル大辞泉 「ベクレル」の意味・読み・例文・類語
ベクレル(becquerel)
[補説]放射線
翻訳|becquerel
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フランスの物理学者。パリの生れ。祖父アントアーヌ,父アレクサンドルも物理学者で,パリの自然史博物館の教授を務めた。1872年エコール・ポリテクニクに入り,その後土木工学校で工学を学ぶ。78年自然史博物館に職を得て研究を開始,初期には,磁場中での光の偏光面の回転,赤外線スペクトル,結晶による光の吸収など,主として光学の研究に携わった。父の死後,92年同博物館物理学教授職を継ぎ,95年にはエコール・ポリテクニクの教授となった。96年初頭X線発見の知らせを受けると,X線管中で陰極線のあたる蛍光壁からX線が発生することに注目し,ある種の蛍光物質からは同様な放射線が放出されているのではないかと考えた。そしてリン光を発するウラン塩を使用した実験から,ウラン元素そのものに由来すると考えられる新種の放射線(ベクレル線と命名された)を発見(1896),自然放射能の存在を明らかにした。続いて,この放射線の電離作用や,電場・磁場中での屈曲実験などを行い,その性質がX線と異なることも確かめた。1903年自然放射能の発見に対してノーベル物理学賞が授与された。
執筆者:日野川 静枝
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フランスの物理学者.祖父も父もともにパリの自然史博物館物理学教授で科学アカデミー会員.エコール・ポリテクニークと土木学校を卒業.のちにエコール・ポリテクニークと自然史博物館,国立工芸学校の物理学教授を兼任.1889年には科学アカデミー会員となる.初期には赤外線や蛍光現象,偏光,結晶と光など光学の研究をしていた.1895年末のW.C. Röntgen(レントゲン)によるX線の発見に触発されて,蛍光現象とX線の関係を調べるなかで蛍光物質であるウラン塩を研究し,ウラン塩から生じる放射線を発見し,それがウランという元素の性質であることを明らかにした.こうした功績により,1903年M. and P. Curie(キュリー)夫妻とともにノーベル物理学賞を受賞.息子のJean(1878~1953年)も物理学者になった.
放射能または放射性物質量の国際単位系(SI単位)の基本単位.記号 Bq.定義は
1 Bq = 1 s-1.
従来から用いられているキュリー(Ci)単位との関係は
1 Ci = 3.7 × 1010 Bq.
単位の名称は放射能の発見者であるフランスの物理学者A.H. Becquerel(ベクレル)にちなんでつけられた.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
(今井秀孝 独立行政法人産業技術総合研究所研究顧問 / 2008年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
… 一方,X線の発見およびその研究は物理学の進歩に大きな波及効果を及ぼした。例えば,X線の発見に刺激を受けたA.H.ベクレルは,蛍光物質の中にはX線を放射するものがあるのではないかと考え,種々の物質を用いての実験を行ったが,1896年ウラン塩からX線とは異なる放射線が出ていることを発見しているし,また1922年,A.H.コンプトンによる散乱X線のコンプトン効果の発見は,電磁波(光)の粒子性の直接の証拠となったものとして有名である。
[基本的性質]
X線の最大の特徴は,物質を透過する力(透過能という)が大きく,物質に吸収されにくいことである。…
…これらの放射線は親核の寿命のためにしだいに減衰していくのが特徴であるが,これに対し,原子炉での核分裂や,加速器ビームによる核反応の際には,反応と同時に多くの中性子線やγ線が発生する。 放射線は,1896年,フランスのA.H.ベクレルが,ウランから放出されるのを発見したのが最初で,これに引き続いてM.キュリーらによってラジウム,ポロニウムからも同様の放射線が出ていることが明らかにされ,99年にはE.ラザフォードが透過力の小さい放射線にα線,大きいほうにβ線の名を与えた。さらに,1900年,フランスのP.ビラールは,磁場によって曲げられず,非常に透過力の強い第3の放射線が存在することを発見し,この放射線はγ線と呼ばれた。…
…この発見は,1900年にパリで開かれた国際物理学会議でも報告され世界的に認められた。03年には,A.H.ベクレルとともに夫妻でノーベル物理学賞を受賞。放射線の本性や放射線のエネルギー源についての重大な未解決問題は,その後E.ラザフォードを中心に行われる原子の構造解明の研究へと発展する。…
…名は,ラジウムの発見者キュリー夫妻にちなんだものであり,1gのラジウムの放射能はほぼ1Ciである。国際単位系(SI)では1975年にベクレル(Bq)を放射能の単位として採用,キュリーのかわりに用いられることが多い。1Ci=3.7×1010Bqである。…
※「ベクレル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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