ウラン(読み)うらん(その他表記)Uran ドイツ語

デジタル大辞泉 「ウラン」の意味・読み・例文・類語

ウラン(〈ドイツ〉Uran)

アクチノイドに属する天然放射性元素の一。単体は銀白色の金属。せんウラン鉱(ピッチブレンド)やカルノー石などに含まれる。天然に存在するウランの同位体は3種あり、質量数238が99.276パーセント、235が0.720パーセント、234が0.0057パーセント。ウラン235は熱中性子を衝突させると核分裂を起こし、臨界量以上あると連鎖反応によって核爆発を起こすため、原子炉燃料・核兵器原料となる。1789年、ドイツのクラプロートが発見し、1781年発見の天王星(Uranus)にちなみ命名。元素記号U 原子番号92。原子量238.0。ウラニウム

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共同通信ニュース用語解説 「ウラン」の解説

ウラン

放射線を出す元素の一種。自然界に存在する天然ウランには核分裂しやすいウラン235は約0・7%しか含まれず、大半は核分裂しにくいウラン238が占めるため、原発燃料などに利用するにはウラン235の割合を高める濃縮作業が必要となる。その過程で生じる廃棄物は劣化ウランといい、ウラン235の割合が天然ウランよりも低い。ウランそのものは微量であれば、放射線が周囲へ与える影響は小さいとみられる。

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精選版 日本国語大辞典 「ウラン」の意味・読み・例文・類語

ウラン

  1. 〘 名詞 〙 ( [ドイツ語] Uran ) ( 一七八一年に発見された天王星(Uranus)にちなんで命名 ) アクチノイドの一つ。記号 U 原子番号九二。質量数二二六から二四〇の一五種の同位体があり、うち天然同位体は二三四、二三五、二三八の三種。銀白色の金属光沢をもつ天然放射性元素。一七八九年、ドイツ人クラプロートが発見。ピッチブレンド、カルノー石などに含まれる。原子炉燃料、核兵器原料として用いる。ウラニウム。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウラン」の意味・わかりやすい解説

ウラン(放射性元素)
うらん
Uran ドイツ語

アクチノイドに属する放射性元素の一つ。原子番号92、元素記号U。天然に存在する元素のなかで最大の原子番号をもつ。英語名uraniumからウラニウムといわれることもあるが、学術用語としてはウランが正しい。

[岩本振武]

歴史

1789年、ドイツのクラプロートが閃(せん)ウラン鉱(ピッチブレンド)の中に含まれていることを発見し、1781年土星の外側に発見された新惑星である天王星Uranusにちなんで命名された。この命名は、のちにロシアのメンデレーエフが提出した周期表の最後に置かれたこの元素にふさわしく、人工合成された93番元素および94番元素がネプツニウム(海王星Neptune)およびプルトニウム(冥王星(めいおうせい)Pluto)と命名されるもとになった。単体金属は1842年にフランスのペリゴーEugène Melchior Péligot(1811―1890)によって単離されたが、1896年フランスのベックレルは、黒色紙で遮光されている写真乾板がウラン化合物によって感光する現象をみいだし、それが放射能発見の端緒となった。

[岩本振武]

存在

質量数217から242に至る20種を超える人工同位体が知られており、いずれも放射性である。天然同位体には234(ウランⅡ UⅡ)、235(アクチノウランAcU)、238(ウランⅠ UⅠ)の半減期の長い3種が存在するが、238が99%以上を占める。地殻中には低濃度で広く分布し、金や銀よりも元素存在度は大きい。しかし、濃縮された鉱床は比較的少なく、閃ウラン鉱およびウラン雲母(うんも)族の鉱物を含む鉱石が主要な資源となり、カナダ、南アフリカ、アメリカ、オーストラリア、ブラジルなどに産出する。日本では、岐阜県東濃(とうのう)地区、岡山・鳥取県境の人形峠などで産出するが、核燃料としてのウランは輸入に依存している。海水中にも数ppb含まれているため、これを濃縮回収する方法も検討されている(ppbは割合を表す単位で10億分率をいう)。

[岩本振武]

製法

原鉱石の種類に応じた適当な酸塩基処理を施すと、ウランはウラン酸塩として黄褐色の塊状物質になる。これをイエローケーキとよんでいる。イエローケーキを酸に溶解し、溶媒抽出法、イオン交換法、電解還元法などによって精製してから四フッ化ウランUF4とし、これを還元すると金属ウランを得る(核燃料としてのウランは別の方法で精製される)。

[岩本振武]

性質

金属ウランは銀白光沢を示し、室温では斜方晶系に属する構造をとるα(アルファ)ウランとなる。667℃で正方晶系のβ(ベータ)ウラン、772℃で等軸晶系(体心立方)のγ(ガンマ)ウランに転移する。αウランは熱膨張率の異方性が大きく、金属ウラン棒を核燃料として直接利用する際の難点の一因となっている。

 金属は反応性に富み、空気中で容易に表面が酸化され、加熱すれば発火して八酸化三ウランU3O8を生ずる。水素、窒素、ハロゲン、一酸化炭素その他とも高温で反応し、化合物を生ずる。塩基には侵されにくいが、酸には溶解して+3価、+4価のイオンとなる。知られている酸化数は+Ⅱから+Ⅵまでの各段階であるが、一般には+Ⅵが安定で、+Ⅳがそれに次ぐ。+ⅣではU(SO4)2・9H2Oのような塩をつくるが、+Ⅴ、+Ⅵでは水溶液中で加水分解を受け、ジオキシドウランイオン(ウラニルイオン)UO2+またはUO22+となるか、あるいはヘプタオキシドジウラン(Ⅵ)酸イオン(二ウラン(Ⅵ)酸イオン)U2O72-、テトラオキシドウラン酸イオン(ウラン(Ⅵ)酸イオン)UO42-になる。金属ウランをフッ化水素と反応させるとフッ化ウラン(Ⅳ) UF4となるが、フッ素と反応させれば六フッ化ウラン(Ⅵ) UF6となる。

[岩本振武]

核燃料としてのウラン

1934年フェルミ(イタリア→アメリカ)らはウランを中性子照射するとβ線が放出されることを発見した(天然ウランの同位体はすべてα崩壊する)。その理由は、当時はまだ不明であった。1938年ドイツのO・ハーンとシュトラスマンは、ウランを熱中性子照射するとウランの原子核が分裂し、クリプトンやバリウムなどの、原子番号がウランより小さい元素の放射性同位体を生ずるとともに、ウランの原子核内で核子(陽子、中性子)を凝集させていたエネルギーの一部も放出されることをみいだした。1939年フェルミは、この核分裂の際には中性子も生じ、それを利用すれば核分裂反応を連鎖的に進行させ、したがって多量のエネルギーを連続的に取り出す可能性のあることを示唆した。その後多くの研究者がその可能性に挑み、まず中性子が実際に発生することが明らかになり、ついで熱中性子によって分裂するのはウラン235であることも示され、また、ウラン238がプルトニウム239に変換され、そのα崩壊によってウラン235を得る可能性も示された。1942年12月2日、フェルミらの研究グループは、シカゴ大学の競技場のスタンドの地下で人工制御核分裂連鎖反応の実験に成功した。現在ではこの競技場は取り壊され、跡地には小さな記念碑が残されているのみであるが、この実験が人類に与えたインパクトはきわめて大きい。

 現在のウランを核燃料とする原子炉では、ウラン235が利用されるが、その天然の存在比は約0.7%にすぎず、利用に供する前には235同位体の濃縮が行われる。気体の分子運動速度は分子量の平方根に反比例するため、歴史的にはまず、フッ化ウラン(Ⅵ)での235UF6238UF6との拡散速度の差を利用するガス拡散法が採用された。しかし、理論的分離係数(両分子の質量比の平方根)は1.0043と小さく、大量の電力と水を必要とする。ヨーロッパや日本のような原子力後発国では、遠心力の差を利用した遠心分離法が開発されているが、所要電力がガス拡散法と比較して格段に小さい利点がある。235を濃縮したウランは、合金、あるいはセラミックス(ウランの酸化物、炭化物、窒化物、ケイ化物など)として用いられる。

[岩本振武]



ウラン(データノート)
うらんでーたのーと

ウラン
 元素記号  U
 原子番号  92
 原子量   238.02891
 融点    1132.3℃
 沸点    3800℃
 比重    α,19.050
       β,18.11(720mmHg)
       γ,18.06(805mmHg)
 結晶系   α,斜方
 元素存在度 宇宙 0.0234(第82位)
          (Si106個当りの原子数)
       地殻 2.7ppm(第47位)
       海水 0.003mg/L


ウラン(中国)
うらん / 烏蘭

中国、青海(せいかい)省中北部、海西(かいせい)モンゴル族チベット族自治州の東部にある県。常住人口3万6555(2010)。青海南山の南西麓にあり、県内を青蔵自動車道、青蔵鉄道(西寧(せいねい)―ラサ)が通じる。小麦、青稞(チンコー)(ハダカエンバク)栽培のほか牧畜が盛んで、県南東部にはツァカ塩湖、西にはホフ塩湖があり塩を生産する。北西に隣接するデリンハ市は自治州政府所在地である。

[駒井正一・編集部 2017年4月18日]

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改訂新版 世界大百科事典 「ウラン」の意味・わかりやすい解説

ウラン
uranium
Uran[ドイツ]

天然に存在する重要な放射性元素で,周期表第ⅢA族に属するアクチノイドの一つ。日本語名のウラニウムは俗称。1789年ドイツのM.H.クラプロートがピッチブレンド歴青ウラン鉱)中から発見し,1781年に新発見され当時有名であった惑星の名称Uranus(天王星)にちなんで命名された。単体は,1842年フランスのペリゴEugène Melchior Péligotがはじめて取り出した。フランスのA.H.ベクレルは,96年ウラン化合物が黒色の紙につつんだ写真乾板を感光させることに気づき,放射能を発見した。さらに1939年ドイツのO.ハーンとシュトラスマンFritz Strassmannは,ウランの原子核が中性子の衝突によって核分裂反応を起こすことを見いだし,次いで42年イタリアのE.フェルミがこれによる連鎖反応を実現させ,核分裂エネルギー利用の道が開かれた。天然には3種の同位体が存在するが,このうちウラン235235Uのみが遅い中性子の衝突によって核分裂するとともに平均2.5個の中性子を生じ,莫大なエネルギーを放出する。

 ウランは,化合物として地球内部よりも表層に多く存在し,岩石,海水中などに広く薄く分布している。おもな鉱物は,ピッチブレンド,カルノー石などである。世界の天然ウランに含まれる235Uの総発熱量を石炭換算すると約400億t(19.6×106kcal/g235Uとして)の石炭に相当する。石炭,石油,天然ガスと比べても,その資源量は多いとはいえない。
ウラン鉱物 →海水ウラン採取 →原子力

単体は鉄に似た光沢のある銀白色の金属。常温で得られる金属はα-ウラン(斜方晶系)であるが,667℃でβ-ウラン(正方晶系),778℃でγ-ウラン(立方晶系)になる。空気中で熱すると発火して黒色の酸化ウラン(Ⅵ)ウラン(Ⅳ)U3O8となる。ハロゲン,硫黄,窒素と直接化合し,酸には溶けるがアルカリには不溶。化合物中での最も安定な酸化数はⅥで,Ⅳがそれに次ぐ。ウラン自体の放射能はそれほど強くないが,ウラン鉱石が強い放射能をもつのは崩壊生成物によることが多い。

ウラン製錬の対象となるのは0.05%以上のウラン(U3O8換算)を含有する鉱石で,この鉱石はまず硫酸で処理される。硫酸溶液中ではウランはUO2(SO434⁻,UO2(SO422⁻などのイオンとして存在するが,この溶液中の不純物を分離し,ウランを濃縮するためには,溶媒抽出法が行われている。抽出用有機溶媒には0.2mol/lのトリオクチルアミンのケロシン溶液が使用される。溶媒中に入ったウランは塩酸で逆抽出され,濃縮される。この溶液にアルカリやアンモニアを作用させると二ウラン酸塩(Na2U2O7,(NH42U2O7)の黄色沈殿が得られる。この中間生成物がイェローケーキyellow-cakeあるいはウラン精鉱と呼ばれるもので,これにはウランが70~80%(U3O8換算)含まれる。さらに先の塩酸抽出液,あるいはイェローケーキの塩酸溶液を電解還元すると,ウランは4価のイオンU4⁺となり,これにフッ化水素を作用させて四フッ化ウランUF4の沈殿を得る。235Uを濃縮するためには,これをさらに六フッ化ウランUF6にまで変換する。金属ウランとするには,UF4カルシウムあるいはマグネシウムと熱して還元する。

 日本では,動力炉・核燃料開発事業団が岡山県の人形峠事業所において,鉱石から回収したウランおよび輸入イェローケーキからUF6を製造するプラントを稼働している。

天然に存在する核燃料資源はウランとトリウムである。天然に存在するウラン(天然ウラン)は,質量数234,235,238の3種の同位体から構成されており,これに含まれる核分裂性の235Uの割合はわずか約0.7%にすぎず,約99.3%は非核分裂性の238Uである。ウラン濃縮によって235Uの割合を高めたものを濃縮ウランenriched uraniumと呼ぶ。天然ウラン,濃縮ウランはともに核燃料として使用される。また,ウラン濃縮の際に生じる,235Uの割合が天然のものよりも少なく238Uの割合が多くなったものを減損ウランあるいは劣化ウランdepeted uraniumと呼ぶ。238U自身は核分裂性ではないが,中性子の捕獲とβ崩壊をくりかえすことによって核分裂性のプルトニウム239239Puに変化する核燃料親物質として重要である。高速増殖炉では,天然ウランあるいは減損ウランをプルトニウム生産用のブランケットとして使用する。

 ウランは自然に放射性崩壊する。238Uの半減期は45億年と長いが,天然には,これを親核種として鉛206206Pbに至る崩壊系列(ウラン系列)があり,また235Uを親核種として鉛207207Pbに至るアクチニウム系列がある(年代決定法の一つに,この崩壊を利用するウラン・鉛法がある)。天然のウラン中にはこれらの崩壊によって生じた種々の核種が存在し,これらの核種の出す放射能は,ウラン鉱の採取から燃料体の成形加工までの核燃料サイクルのアップストリームにおいて問題となる。なお,ウランを原子炉で燃料として使用するときの形態としては,(1)金属ウランあるいはウラン-アルミニウム合金(マグノックス炉,研究炉),(2)二酸化ウラン焼結ペレット(軽水炉,重水炉),(3)ウラン・プルトニウム混合酸化物ペレット(高速炉),(4)ウランまたはウラン-トリウムの酸化物または炭化物を,パイロリティックカーボンと呼ばれる緻密(ちみつ)な炭素で被覆して核分裂生成物が放出しないようにした被覆粒子,などがある。
核燃料
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化学辞典 第2版 「ウラン」の解説

ウラン
ウラン
uranium

U.原子番号92の元素.電子配置[Rn]5f 36d17s2の周期表3族アクチノイド元素.原子量238.02891(3).天然には,234U0.0055(2)%,235U0.7200(51)%,238U99.2745(106)% の同位体核種が存在する.質量数217~242の核種が知られている.いずれも放射性.半減期は234U2.455×105 y(α崩壊),235U2.038×108 y(α崩壊),238U4.468×109 y(α崩壊).3核種ともごく一部,自発核分裂で崩壊する.地球創世期から存在する元素として最大の原子番号をもつ.1789年,M.H. Klaprothによりせんウラン鉱(pitchblend,uranite)中に存在が推定された.同じころに発見された天王星“uranus”にちなんで命名された.日本語の元素名はドイツ語名から.宇田川榕菴は天保8年(1837年)に出版した「舎密開宗」で,烏刺紐母(ウラニウム)としている.金属としての最初の分離は,1841年,E-M. Péligotによる.放射能の存在は,1896年,A.H. Becquerel(ベクレル)によってはじめて認識された.核分裂の確認は,1939年,O. Hahn(ハーン)とF. Strassmannによる.
地殻中の存在度0.91 ppm で,銀,カドミウムより多い.海水中の存在度は3.2 μg L-1.ウランを含有する鉱物は非常に多いが,資源的におもな鉱物は,せんウラン鉱,レキ青ウラン鉱,カルノー石,りん灰ウラン鉱,リン銅ウラン鉱,コフイン石,チューヤムン石など.主要資源国はオーストラリア,カザフスタン,カナダ,南アフリカ,アメリカなど.2005年世界の確認埋蔵量330万t のうち,オーストラリア75万t,カザフスタン51万t,カナダ35万t で50% 弱を占める.製錬は溶融ハロゲン化物のアルカリ金属,またはアルカリ土類金属による還元,電解還元,または酸化物のCa,Alによる還元で行われる.歴史的には,無水四塩化物をカリウムで還元して得られた.核燃料用の製錬工程は核燃料サイクル参照.単体は銀白色の金属で,展延性がある.α(斜方),β(正方),γ(立方)の3形があり,667 ℃ でα→β,778 ℃ でβ→γの転移が起こる.密度19.05 g cm-3(α型),18.11 g cm-3(720 ℃,β形),18.06 g cm-3(805 ℃,γ形).融点1132.2 ℃,沸点3820 ℃.0.2 K で超伝導となる.原子半径0.1542 nm.イオン半径 U3+0.1025 nm.第一イオン化エネルギー597.2 kJ mol-1(6.191 eV).化学的に活性で,ほとんどの元素と化合物をつくる.粉末は空気中で発火し,熱水と反応してUO2と水素になる.冷水にも侵される.金属は空気中で表面が酸化される.酸に溶けて水素を発生する.アルカリに不溶.高温で水素と反応してUH3となり,窒素と反応してU3N4をつくる.また,ハロゲンとはハロゲン化物をつくる.化合物中の酸化数は1,2,4~6をとる.
最大の用途は核燃料.通常の発電用原子炉では235U3% 濃縮のものが使われるが,研究用原子炉,あるいは核兵器では90% 以上の濃縮ウランが使用される.90% 以上(とくに93.5%)の濃縮ウランは兵器級(weapons-grade)とよばれる.0.2% 程度に235U同位体存在度が減っているものを劣化ウランとよび,弾丸の貫通力を高めるために,また戦車の装甲に使用される.密度の高いことから慣性誘導装置,ジャイロコンパス,ミサイルのバラストにも利用される.ウラン塩は古くからガラスを黄緑色に着色するために用いられ,ナポリ付近から出土したA.D.79年のガラス製品には酸化ウランが1% 含まれていた.ガラスの熱膨張率を調整して金属を封入する際にもウラニウムガラスが使用される.
ウランは重金属として腎臓,肝臓に対する毒性があり,同時に体内に摂取されると放射性毒性が高く,発がん性がある.ウランは原子力基本法のいう核燃料物質核原料物質で,「核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律施行令」により,300 g を超える場合は使用許可を要する.国際原子力機関が1996年に刊行した「国際基本安全基準」は,この限度を1×104 Bq(0.8 g 相当)に下げることを提示しており,この値に準拠して1~300 g を規制対象に加える検討が進められている.[CAS 7440-61-1]

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百科事典マイペディア 「ウラン」の意味・わかりやすい解説

ウラン

元素記号はU。原子番号92,原子量238.02891。融点約1132.3℃,沸点4172℃。放射性元素の一つ。ウラニウムとも。1789年クラプロートが発見,天王星(Uranus)にちなんで命名。1842年フランスのE.M.ペリゴーが初めて金属を分離。1896年ベクレルがウラン鉱から初めて放射能を発見。天然には234U(0.0056%,半減期2.48×10(-/)5年),235U(0.7205%,7.13×108年),238U(99.2739%,4.51×109年)の3種の同位体がある。235Uは遅い中性子で原子核分裂を起こし,莫大なエネルギーを放出する。これを原子爆弾,原子炉に利用(濃縮ウラン)。単体は銀白色,光沢ある金属で,酸化されやすく,ハロゲン,硫黄などと直接反応する。希酸に溶けて水素を発生し,ウラン(IV)化合物をつくるが,アルカリとは反応しない。原子炉用燃料として最も多く用いられ,そのほか陶磁器の着色などに少量用いられる。クラーク数4×10(-/)4(第53位)で,地殻に広く薄く分布。鉱石としてはセンウラン鉱ピッチブレンド,カルノー石,リン灰ウラン石などが重要。主産地はカナダ,南アフリカ共和国,米国,ロシア,スカンジナビア諸国,オーストラリア,ブラジル,コンゴ民主共和国など。日本では鳥取・岡山県境の人形峠が有名。鉱石から硫酸により抽出し,イオン交換樹脂などで他の金属イオンと分離。アルカリで沈殿乾燥させイエローケーキ(酸化物)とし,これを硝酸に溶かし,溶媒抽出によって精製したのち金属マグネシウムで還元して金属とする。
→関連項目原子爆弾減速材増殖炉地下資源転換炉プルサーマル

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知恵蔵 「ウラン」の解説

ウラン

原子番号は92。自然界にあるウラン(U)の同位体はウラン235とウラン238。ウラン鉱石中に含まれる天然ウランは、核分裂するウラン235が約0.7%で、残りは核分裂しないウラン238。一般的な商業用原子炉では、ウラン235の割合を3〜4%まで高めた核燃料を使って発電している。ウラン235の濃度を高めたものが濃縮ウラン。さまざまな工程を経て天然ウランを濃縮ウランにすることをウラン濃縮と呼ぶ。同位体同士の化学的性質はほとんど同じであるため、わずかな質量の差を見いだして分離濃縮する。高速回転する円筒容器に入れて、原子に働く遠心力の差を使う遠心分離法は、青森県六ケ所村の日本原燃の濃縮工場で採用されている。この工場は1992年3月に年間150tの規模で操業を開始し、現在の施設規模は年間1050t、最終的には年間1500tとする予定だ。ウラン濃縮の過程では天然ウランよりウラン235の含有率が低いものが生じ、これを劣化ウランという。経済協力開発機構・原子力機関(OECD/NEA)の推計によると、世界のウラン埋蔵量(経済的に採掘可能なもの)は2003年1月1日現在で458万8000t。現在の需要量でみると69年分に相当する。ウラン資源は偏在しており、オーストラリアが24%で最も多く、次いでカザフスタン、カナダと続く。

(渥美好司 朝日新聞記者 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウラン」の意味・わかりやすい解説

ウラン
uranium

元素記号U ,原子番号 92,原子量 238.0289。周期表3族,アクチノイド元素で,天然には同位体ウラン 234,235,238が存在し,いずれも放射性核種である。 1789年,M. H.クラプロートが発見。単体は銀白色の金属で,688℃以下でα体,668~774℃でβ体,774℃以上でγ体が安定である。融点約 1133℃,沸点 3818℃。主要鉱石は閃ウラン鉱およびカルノー石であるが,第2次世界大戦後の需要の急増に伴い資源の開発が行われ,100種以上の含ウラン鉱物が見出されている。ウランはそのまま原子炉用燃料になるが,ウラン 235を分離し,濃縮ウランとして利用されることが多い。原子爆弾はウラン 235あるいはプルトニウム 239などの原子核分裂に伴い放出されるエネルギーを利用したものである。

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世界大百科事典(旧版)内のウランの言及

【カンラン(橄欖)】より

… カンラン属Canariumは約75種の樹木からなり,大部分が東南アジア~太平洋地域に分布する。ウランC.pimelaLeenh.など何種類かの果実はカンラン同様食べられる。マニラエレミ(英名Manila elemi)C.luzonicum (Bl.) A.Grayの樹脂は香(こう)や印刷インク,ワニスの原料に用いられる。…

【エネルギー資源】より

…これに対し,年間の採掘(生産≒消費)量は約220億バレル(1990年代初頭の水準)だから,可採年数は約47年ということになる。一般に,確認可採埋蔵量(R)÷生産量(P)=可採年数という式で表されるが,この式は石油に限らず,ウラン,石炭,天然ガス等,再生不可能な採掘資源すべてに適用することができる。 しかし,こうして得られた可採年数は,いわゆる限界的な年限を示すものではない。…

【エネルギー資源】より

…これに対し,年間の採掘(生産≒消費)量は約220億バレル(1990年代初頭の水準)だから,可採年数は約47年ということになる。一般に,確認可採埋蔵量(R)÷生産量(P)=可採年数という式で表されるが,この式は石油に限らず,ウラン,石炭,天然ガス等,再生不可能な採掘資源すべてに適用することができる。 しかし,こうして得られた可採年数は,いわゆる限界的な年限を示すものではない。…

【オーストラリア】より

… 60年代に入ると,イギリスのEC加盟(実現は1973年)がオーストラリア経済に及ぼす影響が懸念され始めた。しかし同時に,鉄,ボーキサイト,ウランなどの卑金属採掘ブームが起こり,日本,アメリカが最大の顧客となった。国民の生活水準は飛躍的に上がり,70年代の労働党による福祉政策の物質的基盤が築かれ始めた。…

【海水ウラン採取】より

…海水中に存在するウランを商業的に採取すること。海水1t中には平均3mg(平均濃度3ppb)程度のウランが含まれており,地球全体では海水中のウランの総量は約45億tに及ぶといわれる。…

【核燃料サイクル】より

…原子力をエネルギーとして利用するために用いられるウランUの一生を核燃料サイクルという。原子力には核分裂エネルギーと核融合エネルギーとがある。…

※「ウラン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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