ホモサピエンス(英語表記)〈ラテン〉Homo sapiens

デジタル大辞泉 「ホモサピエンス」の意味・読み・例文・類語

ホモ‐サピエンス(〈ラテン〉Homo sapiens)

《賢い人の意》
人類のうち、旧人すなわちネアンデルタール人以降現代人までを含む学名。かつては、新人以降をさす呼び名だった。→ホモサピエンス‐サピエンス
人間観の一。他の動物に比べ、人間の本質は理性を有することにあるとする考え。知性人。→ホモファベル
[類語]人間ひと人類人倫万物の霊長考えるあし米の虫人物人士じんもの現生人類原始人新人旧人原人ジャワ原人北京原人直立猿人猿人ピテカントロプス

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精選版 日本国語大辞典 「ホモサピエンス」の意味・読み・例文・類語

ホモ‐サピエンス

  1. 〘 名詞 〙 ( [ラテン語] Homo sapiens 知恵あるヒトの意 )
  2. 人類の学名。生物学的にはヒト属ヒト科をさす。ホモ‐サピエンス‐ネアンデルターレンシス(ネアンデルタール人類・旧人)とホモ‐サピエンス‐サピエンス(現生人類)に分けられる。
  3. 一八世紀スウェーデンの植物学者カール=フォン=リンネの用語。明確な言語能力、抽象的な推理能力をもつ現生人類。二〇世紀ドイツの哲学者マックス=シェーラーによれば、理性力で世界を形成し理想を実現していく人間という、古代から近代にかけての主流となった人間観。知性人。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホモサピエンス」の意味・わかりやすい解説

ホモ・サピエンス
ほもさぴえんす
Homo sapiens

現生人類を含む、直立姿勢を完成した脳の大きな人類。もともとギリシア哲学以来、人間の本質は英知の優れていることにあると考えられてきた。これに応じて、賢い人間という意味でこの名がある。18世紀中葉、リンネは動物分類表の作成にあたり、この名をもって人間の学名とし、霊長類のなかに位置づけた。

 ところが19世紀後半にネアンデルタール人が発見されるに及び、これをホモ属に含まれる近縁種として、ホモ・サピエンスを現生人類に限った。その後、化石人類の研究が進むとともに、ヨーロッパ出土のクロマニョン人シャンスラード人グリマルディ人、中国出土の山頂洞人、柳江人、ジャワ出土のワジャック人などは化石現生人類ということで、ホモ・サピエンスのなかに入れられた。その特徴は、頸部(けいぶ)を含めた直立姿勢の完成、大きな脳、程度はさまざまだが退縮した顎骨(がくこつ)と歯、発達しない眉上弓(びじょうきゅう)があげられ、とくに頤(おとがい)の存在は歯槽(しそう)部の退縮によるものであるが、現生人類である証明とみなされるようになった。その文化は後期旧石器時代以降、中石器時代新石器時代、金属器時代を経て今日に至る発展を遂げたとされた。同時にその優れた適応力により、ほとんど地球全体に分布するものとなった。また優れた音声言語能力がこの発展の原動力とみなされるに至った。

 しかし、研究が深化するにつれ、ネアンデルタール人は表面的に現れた以上にその道具製作の能力が高く、知能が優れ、死者を弔うほど情緒が豊かであることが判明するに至り、改めて脳の大きなことが確認され、その結果、ネアンデルタール人もホモ・サピエンスであるとみられるに至った。つまり、中期旧石器文化以後の文化はホモ・サピエンスに属するものとなった。なお、従来からの現生人類をいうときはホモ・サピエンス・サピエンス、ネアンデルタール人はホモ・サピエンス・ネアンデルターレンシスと、3名法で表すこともある。ちなみに、脳の大きさに関する限り、ネアンデルタール人以後、人類は進化していないといわれるのも、その間の消息を述べているといえる。

[香原志勢]


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改訂新版 世界大百科事典 「ホモサピエンス」の意味・わかりやすい解説

ホモ・サピエンス
Homo sapiens

現存している人類種,現生人類のこと。私たち自身の種であり,人類の進化区分では新人に当たる。およそ20万年前にアフリカホモ・ハイデルベルゲンシスから進化し,8万~5万年ほど前から主として文化的な適応によって世界中に急速に拡散し,その過程でいくつかの人類種を絶滅させ,今では地球上のあらゆる環境に住んでいる。サピエンスの模式標本は決められていない。古生物学者コ-プE.D.Copeによる遺骨を模式標本にする試みがあったが,一般の認知を得ていない。一般動物では亜種に相当するサピエンスの地域集団は人種と呼ばれ,それらの違いは拡散の過程および現在の気候環境に対する適応を反映していると考えられる。サピエンスは,1万年ほど前から農耕牧畜を開始し,文明を発祥させ,さらに工業革命を起こして,急激に増殖した。資源を枯渇させ,環境を破壊して,食糧不足を起こし,近い将来の衰退が心配されている。
新人
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ホモサピエンス」の意味・わかりやすい解説

ホモ・サピエンス
Homo sapiens

ラテン語で知恵ある人,賢い人の意であり,一般に動物分類学上の学名としての現生人類。本来は人間を,英知をもつ存在として規定する哲学上の言葉として用いられたが,18世紀中頃,スウェーデンの生物学者 C.リンネは,生物の体系的分類を行うにあたり,この語をもって人間を表わす学名とした。その後人類化石が多数発見され,人類進化の実相が解明されるにいたって,あらためて地球上に今日生存する人類は,人種の違いはあってもすべて同一種であることが確認され,同時にそれに対してホモ・サピエンスの学名が適用された。このことにより現生人類の一体性が強調されるようになった。後期旧石器文化をになったクロマニヨン人や日本の縄文時代人なども同じホモ・サピエンスの仲間に入れられ,ネアンデルタール人は,その身体上の特性から,ホモ・ネアンデルターレンシスと呼ばれ,ホモ・サピエンスとは種を異にすると考えられていたが,1960年代になって,ネアンデルタール人も脳の大きさは現生人類と変らないこと,その中期旧石器文化は技術的にかなり高度であること,精神性も高いこと,身体特徴も進化学的に現生人類と連続することなどが明らかになってきた。その結果ホモ・サピエンスは現生人類とネアンデルタール人の両者を含むものとされるにいたった。両者を区別するためには三名法を用い,前者はホモ・サピエンス・サピエンス,後者はホモ・サピエンス・ネアンデルターレンシスと呼ぶ。

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知恵蔵 「ホモサピエンス」の解説

ホモ・サピエンス

新人」のページをご覧ください。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「ホモサピエンス」の解説

ホモ・サピエンス

18世紀の植物学者C.リンネが「自然の体系」のなかで二命名法による体系的な生物分類を行ったときに人類に与えた学名。知恵のあるヒトを意味する。現在では現生の全人類ばかりでなく,旧人以降の化石人類もすべてホモ属サピエンス種に属すると考えられている。旧人と新人とをわけるときは,前者を古型ホモ・サピエンス,後者を現代型ホモ・サピエンスとよぶことがある。また亜種のレベルで,ホモ・サピエンス・ネアンデルターレンシス,ホモ・サピエンス・サピエンスとよびわけることもある。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

旺文社世界史事典 三訂版 「ホモサピエンス」の解説

ホモ−サピエンス
homo sapiens

現生人類
「知恵ある人」の意味で,現代人の直接の祖先,新人の化石骨の総称で,肉体的特徴はわれわれとほとんど変わらない。更新世末期の後期旧石器時代に出現したとみられ,クロマニョン人・グリマルディ人,中国周口店の上洞人,シャンスラード人などもこれに属する。

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百科事典マイペディア 「ホモサピエンス」の意味・わかりやすい解説

ホモ・サピエンス

新人

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世界大百科事典(旧版)内のホモサピエンスの言及

【新人】より

…人類進化の最終段階の人類をさす新人類neanthropic manの略称。現生人類modern manともいう。その形態特徴は,時代的に先行する猿人原人旧人段階の人類とは明らかに異なり,Homo sapiens sapiens(ホモは〈人〉,サピエンスは〈賢明な〉の意)という学名が与えられている。今から約3万年前,後期更新世のウルム第1亜間氷期から現在にいたる間に地球上に生息した人類は,すべて新人の範疇に入るが,更新世の新人,すなわち後期旧石器時代人は化石現生人類Homo sapiens fossilisと呼ばれ,それ以後の新人と区別されている。…

※「ホモサピエンス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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