一行(読み)イッコウ

デジタル大辞泉 「一行」の意味・読み・例文・類語

いっ‐こう〔‐カウ〕【一行】

1 一緒に行く人々。同じ行動をする人々。「選手団一行」
2 ひとつらなり。1列。「一行の雁」
3 一つの行い。「一行失すれば百行はっこうともに傾く」「一言一行」
4 書面一通。特に許可・借用などの証拠となる文書一通。いちぎょう。
「各五千石の―を頂戴せしめ」〈太閤記・六〉
[類語]連れ・道連れ・同伴者・同勢・同行・団体・集団・一団・グループ・サークル・パーティー・チーム・クラブ・サロン

いちぎょう【一行】[人名]

[683~727]中国、唐代の僧。善無畏ぜんむい・金剛智に学び、密教の基礎をつくった。禅・律、また暦法に詳しかった。著「大日経疏」「大衍暦だいえんれき」など。一行阿闍梨あじゃり。大慧禅師だいえぜんじ。

いち‐ぎょう〔‐ギヤウ〕【一行】

1 文章のひとくだり。文字の一列。
2 仏教の一つの行ぎょう。また、一つの行に励むこと。
3 ⇒いっこう(一行)4

ひと‐くだり【一▽行】

文章の1行。また、文章・話の中の一部分。

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精選版 日本国語大辞典 「一行」の意味・読み・例文・類語

いっ‐こう‥カウ【一行】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ① ひとつらなり。一並び。一列。いちぎょう。
    1. [初出の実例]「前一行為二辨官并諸司五位已上座一」(出典:延喜式(927)三八)
    2. 「三叫寒猿傾レ耳聴。一行斜雁払レ頭過」(出典:本朝麗藻(1010か)下・過秋山〈具平親王〉)
    3. 「一行の雁や端山に月を印(いん)す」(出典:俳諧・蕪村句集(1784)秋)
    4. [その他の文献]〔白居易‐喜小楼西新柳抽条詩〕
  3. ② 許可、賞与、借用などを旨とする文書。証拠の文言。いちぎょう。
    1. [初出の実例]「諸事、兼信可レ為二上司一之旨賜二御一行一」(出典:吾妻鏡‐寿永三年(1184)三月一七日)
    2. 「兼又評定衆の中一行をかきあたへられは」(出典:御成敗式目仮名抄(室町末)起請)
  4. ③ 一通の手紙。また、書状。いちぎょう。
    1. [初出の実例]「一かうの書を魚の腹の中に入て、獄中にいれたり」(出典:曾我物語(南北朝頃)五)
    2. 「Iccǒ(イッカウ)〈訳〉書状一通。ニカウ(二行)とは言わない」(出典:日葡辞書(1603‐04))
  5. ④ 旅などをいっしょにしている仲間。同行の団体。旅の道連れ。
    1. [初出の実例]「一行聴者皆傷愁、為作二喩辞一慰二沈憂一」(出典:五山堂詩話(1807‐16)一)
  6. ⑤ 一つの行ない。また、ちょっとした行ない。
    1. [初出の実例]「生つき虚弱の人、一行の後、心おもく、むねつかえ」(出典:浮世草子・好色訓蒙図彙(1686)中)
    2. [その他の文献]〔淮南子‐氾論訓〕
  7. ⑥ ひとたび行くこと。
    1. [初出の実例]「小国表へ〈略〉一行可レ仕之由也」(出典:上井覚兼日記‐天正一三年(1585)閏八月二一日)
    2. [その他の文献]〔晉書‐芸術伝・卜〕
  8. ⑦ 六か月の称。
  9. ⑧ =いちぎょう(一行)⑦

一行の語誌

読み方には、少なくともイッカウ、イチガウ、イチギャウの三通りが認められる。「日葡辞書」では、漢音よみイッカウを「一通の書状」の意、その濁音形イチガウを「文字の書いてある行の数え方」の意、呉音よみイチギャウを「一つの行ない」の意としており、読みの区別が意味の区別に対応している。


いち‐ぎょう‥ギャウ【一行】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ① =いっこう(一行)①
  3. ② 文章のひとくだり。また、書かれた文字の一列。いちごう。
    1. [初出の実例]「凡内外諸司解文。〈略〉不レ得三一行過二十三四箇字一」(出典:延喜式(927)五〇)
    2. [その他の文献]〔李白‐寄遠詩〕
  4. ③ =いっこう(一行)②
  5. ④ =いっこう(一行)③
  6. ⑤ =いっこう(一行)④
    1. [初出の実例]「一行(イチギャウ)皆驚怖し。進退維れ谷まれり」(出典:造化妙々奇談(1879‐80)〈宮崎柳条〉二編)
  7. ⑥ =いっこう(一行)⑤〔日葡辞書(1603‐04)〕
  8. ⑦ 仏語。一事に専心すること。また、一つの行(ぎょう)。
    1. [初出の実例]「宗師云二専念一即是一行」(出典:教行信証(1224)三)
    2. 「一行におもひさだめて後、人のとかくいへばとて、変改の条無下の事なり」(出典:一言芳談(1297‐1350頃)上)

ひと‐くだり【一行】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ① 文章のいちぎょう。また、非常に短い文章。
    1. [初出の実例]「手まどひをしてひとくだりの文も奉らぬに」(出典:宇津保物語(970‐999頃)俊蔭)
  3. ② 文章・物語の一部分。一区切り。一節。
    1. [初出の実例]「此一条(ヒトクダリ)お長が苦心のくやしきを見て」(出典:人情本・春色梅児誉美(1832‐33)初)
  4. ③ ひとくさりの通り文句。きまりきった口上。また、その一部分。一席。
    1. [初出の実例]「とくと御合点なされしかと、出家気質の一行(クダリ)」(出典:浄瑠璃・近江源氏先陣館(1769)二)
  5. ④ 一つの列をなしているもの。また、その列。一列。いちぎょう。
    1. [初出の実例]「法の声即身即非花散て〈芭蕉〉 余波(なごり)の鳫も一くだり行〈信章〉」(出典:俳諧・桃青三百韻附両吟二百韻(1678))

いちぎょうイチギャウ【一行】

  1. 中国唐代の僧。嵩山、普寂より禅を、のち、善無畏、金剛智より密教を学ぶ。「大日経疏」二〇巻を撰して、密教の基礎を築いた。また、天文暦数にくわしく、従来の暦の計算を正し、「大衍暦(たいえんれき)」五二巻を著わした。一行阿闍梨。大慧禅師。(六八三‐七二七)

いつ‐ごう‥ガウ【一行】

  1. 〘 名詞 〙 =いっこう(一行)②
    1. [初出の実例]「一つ行(ガウ)の書を魚の腹の中に収めて」(出典:松井本太平記(14C後)四)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「一行」の意味・わかりやすい解説

一行
いちぎょう
(683―727)

中国、唐代の密教の高僧。天文暦学の科学者。魏州(ぎしゅう)(河北省)昌楽(しょうらく)の人。幼時より聡明(そうめい)で、長じて経史を学び、とくに天文暦算を究めた。出家して嵩山(すうざん)の普寂(ふじゃく)禅師(651―739)に禅要を学び、また荊州(けいしゅう)(湖北省)当陽山の悟真に律蔵を学ぶ。ついで天台山に登り、天台教学の秘奥(ひおう)を修めた。のち717年(開元5)召されて長安に赴き、深く玄宗(げんそう)の帰依(きえ)を受けた。そのころ716年に善無畏(ぜんむい)がインドから大陸を経て来唐し、ついで720年に金剛智(こんごうち)が南海を渡って来唐し、密教経典の伝訳の大事業をなすと、一行はとくに善無畏の訳場に列して『大日経』の訳出を助け、さらに師の指南を受けながら『大日経疏(だいにちきょうしょ)』20巻の大著を完成した。またこの間の721年、勅によって新暦を撰(せん)し、ついで『大衍暦(だいえんれき)』52巻を撰した。かくて名声はいよいよ高まり、一代の英才と仰がれたが、惜しくも45歳の若さで寂(じゃく)した。諡号(しごう)を大慧禅師(だいえぜんし)といい、玄宗自ら塔録(とうろく)を撰した。

 一行は密教史上偉大な業績を残した人であるが、現代の中国ではむしろ天文暦法の科学者としての評価が高い。

[勝又俊教 2017年1月19日]


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改訂新版 世界大百科事典 「一行」の意味・わかりやすい解説

一行 (いちぎょう)
Yī Xíng
生没年:683-727

中国の唐代の密教僧,天文学者。〈いっこう〉とも読む。本名は張遂,魏州(河南省)昌楽の出身。経史,暦象陰陽五行の学に精通するとともに,天台,禅をも学び,さらに善無畏より密教を伝授された。721年(開元9),李淳風の麟徳暦(儀鳳暦)による日食予報にたびたび誤報があったことから,玄宗は一行に改暦を命じた。彼はまず梁令瓚と黄道游儀を作って太陽,月,5惑星の運行および恒星の位置を測定し,また水力で動く天球儀(水運渾象)を製作した。723年からは南宮説(なんぐうえつ)とともに大規模な子午線測定を実施して1度が351里80歩(唐尺。123.7km)にあたるという結果を得た。724年に編暦作業を開始して,易の形而上学と結びつけた大衍暦を完成させた。この暦法によって計算した暦は彼の死後の729年から全国に頒行され,735年(天平7)吉備真備によって日本にも伝えられた。大衍暦には不等間隔二次差近似補間公式が使用され,食計算には〈九服蝕差〉すなわち食現象の地域的時間差が導入された。
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百科事典マイペディア 「一行」の意味・わかりやすい解説

一行【いちぎょう】

中国,唐代の密教学者。〈いっこう〉とも。真言五祖の一人。魏州の人。インド僧善無畏(ぜんむい),金剛智(こんごうち)に師事,玄宗(げんそう)に仕える。《大日経疏(だいにちきょうしょ)》を著す。天台,密教の一致を説く。また天文暦数に詳しく,易の形而上学と結びつけた《大衍暦(たいえんれき)》52巻を著した。諡(おくりな)は大慧禅師(だいえぜんじ)。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「一行」の意味・わかりやすい解説

一行
いちぎょう
Yi-xing

[生]弘道1(683)
[没]開元15(727)
中国,唐の僧。真言密教をインドの善無畏,金剛智に学んだ。真言宗五祖の一人。禅,律,暦法にも通じていたという。主著は『大日経疏』『大衍暦』など。

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普及版 字通 「一行」の読み・字形・画数・意味

【一行】いちぎよう

ひとくだり。

字通「一」の項目を見る。

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世界大百科事典(旧版)内の一行の言及

【一行】より

…経史,暦象陰陽五行の学に精通するとともに,天台,禅をも学び,さらに善無畏より密教を伝授された。721年(開元9),李淳風の麟徳暦(儀鳳暦)による日食予報にたびたび誤報があったことから,玄宗は一行に改暦を命じた。彼はまず梁令瓚と黄道游儀を作って太陽,月,5惑星の運行および恒星の位置を測定し,また水力で動く天球儀(水運渾象)を製作した。…

【大衍暦】より

…中国,唐代の暦法の一つで,僧の一行(いちぎよう)が玄宗の命によって編んだ。太陰太陽暦。…

※「一行」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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