乗る(読み)ノル

デジタル大辞泉 「乗る」の意味・読み・例文・類語

の・る【乗る/載る】

[動ラ五(四)]
物の上にあがる。「踏み台の上に―・る」「子が父のひざに―・る」
乗り物の上、または中に身を置く。乗り物で移動する。「馬に―・る」「汽車に―・る」「船に―・る」⇔おりる
調子や動きによく合う。「リズムに―・って踊る」「マイクによく―・る声」
勢いがついて物事がぐあいよく運ぶ。勢いにまかせてすすむ。「興が―・る」「図に―・る」「ブームに―・る」「仕事が軌道に―・る」
誘いや持ち掛けに応じて仲間や相手になる。仲間として加わる。参画する。「その話に一口―・る」「相談に―・る」
相手の思惑どおりに動かされる。引っかかる。だまされる。「おだてに―・る」「口車に―・る」「その手には―・らない」
うまくつく。十分につく。「おしろいが肌に―・る」「脂が―・った魚」
風や潮流などによって運ばれる。「電波に―・る」「風に―・って盆唄が聞こえてくる」
(載る)書かれる。記録される。「新聞に―・る」「台帳に―・る」
10 邦楽能楽で、リズミカルに演奏する。また、テンポを速めて演奏する。符号として、片仮名で「ノル」と記す。
11 歌舞伎舞踊・能楽などで、しぐさや踊りが音楽に合う。双方のリズムがうまく調和する。「三味線に―・ったせりふ
12 道に沿って行く。
海原の路に―・りてやが恋ひをらむ大舟のゆたにあるらむ人の児故に」〈・二三六七〉
13 心にぴったりとついて離れない。心を占めてしまう。のりうつる。
「ももしきの大宮人は多かれど心に―・りて思ほゆる妹」〈・六九一〉
[可能]のれる
[下接句]油が乗る石車に乗る大船に乗ったよう駕籠舁かごかき駕籠に乗らず気が乗る軌道に乗る興に乗る口に乗る口車に乗る尻馬しりうまに乗る図に乗る玉の輿こしに乗る調子に乗る手に乗る波に乗る一口乗る飛竜雲に乗る利が乗る
[類語]飛び乗る乗せる乗っかる乗り移る乗り回す乗り捨てる同乗移乗分乗相乗り添乗便乗乗車

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「乗る」の意味・読み・例文・類語

の・る【乗・載】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙
    1. 移動する物の上に位置を占める。
      1. (イ) 動物の背などの上にいてあやつり進む。
        1. [初出の実例]「赤駒に 倭文鞍(しつくら)うち置き 匍(は)ひ能利(ノリ)て 遊びあるきし」(出典:万葉集(8C後)五・八〇四)
      2. (ロ) 乗物の上におさまって移動する。
        1. [初出の実例]「大船に妹能流(ノル)ものにあらませばはぐくみ持ちて行かましものを」(出典:万葉集(8C後)一五・三五七九)
      3. (ハ) 波・風・雲などの上におさまって進む。
        1. [初出の実例]「おほぞらより人雲に乗ておりきて」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
    2. 一般に高い所、物の上などに位置を占める。
      1. [初出の実例]「臣の女の 匣に乗有(のれる) 鏡成す みつの浜辺に」(出典:万葉集(8C後)四・五〇九)
    3. ( 「道にのる」の形で ) 目的地に向かう道に出る。路上に出る。
      1. [初出の実例]「海原の路に乗(のり)てや吾が恋ひ居らむ大舟のゆたにあるらむ人の児(こ)ゆゑに」(出典:万葉集(8C後)一一・二三六七)
    4. ( 「心にのる」の形で ) 心を占めて離れなくなる。また、心にかなう。
      1. [初出の実例]「まかなしみ寝(ぬ)れば言(こと)に出(づ)さ寝(ね)なへば心の緒ろに能里(ノリ)てかなしも」(出典:万葉集(8C後)一四・三四六六)
    5. 神霊や物の怪(け)などがのりうつる。つきものがする。憑依する。
      1. [初出の実例]「われに十禅師権現のりゐさせ給へり」(出典:平家物語(13C前)二)
    6. 勢いを利用する。はずみがついて調子がよくなる。勢いづく。調子づく。乗ずる。「気がのる」「興にのる」「図にのる」「調子にのる」
      1. [初出の実例]「あまの戸をあくるまをだに許されでまだきにのりてかへりけるかな」(出典:朝忠集(966頃))
      2. 「うつきりとのってうつことならぬ鼓也」(出典:四座役者目録(1646‐53)下)
    7. 思わずつりこまれる。一杯食う。ひっかかる。だまされる。のせられる。「おだてにのる」「口車にのる」「その手にはのらない」
      1. [初出の実例]「ふはとのる」(出典:咄本・醒睡笑(1628)一)
    8. ( 載 ) 人々のうわさや、おおやけの記録・新聞雑誌等の記事などに出る。取り上げられる。記載される。
      1. [初出の実例]「伴蜜語記に此事のれる所也」(出典:法華修法一百座聞書抄(1110)三月一二日)
      2. 「人の口にのれる哥にて侍るは」(出典:古本説話集(1130頃か)三九)
    9. 誘いに応じて仲間や相手になる。相談やたくらみごとに関係する。参加する。「話にのる」「一口のる」
      1. [初出の実例]「目覚し高名御感状を拝受し、今の泣言やめふぞやと、かたれ共三郎は少ものらぬ顔色(がんしょく)にて」(出典:浄瑠璃・雪女五枚羽子板(1708)中)
    10. うまく合う。調和する。なじむ。
      1. (イ) 音楽の調子に従う。拍子・リズムに合う。仕種や踊りが、音楽に合う。
        1. [初出の実例]「舞のうちよりのる心有て和歌謡ひ出し」(出典:八帖花伝書(1573‐92)三)
      2. (ロ) 似合う。
        1. [初出の実例]「蚊屋のちに赤いどんすはのった物」(出典:雑俳・住吉みやげ(1708))
      3. (ハ) 薬が体質や症状などにうまく適合する。
        1. [初出の実例]「あたまから見たてがよふて乗る薬」(出典:雑俳・もみぢ笠(1702))
      4. (ニ) 機械の調子に合う。「マイクにのる声」
    11. ある方向に進む流れの中に位置を占める。また、その流れによって運ばれる。「軌道にのる」
      1. [初出の実例]「それによって〈略〉かれの仕事は本筋に乗ることができるからであった」(出典:ノリソダ騒動記(1952‐53)〈杉浦明平〉三)
    12. 充実する。いきわたる。
      1. (イ) 絵の具・白粉(おしろい)などが、はげたりにじんだりせず、地になじんでよく付く。
        1. [初出の実例]「田舎育だけに根から白粉(おしろい)がのりませんが」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)三)
      2. (ロ) 体内に脂肪が十分ゆきわたる。
        1. [初出の実例]「天麩羅か黒漫魚(まぐろ)さしみで、油の乗(ノッ)たあいさつが聞きてへの」(出典:人情本・春色梅児誉美(1832‐33)初)
      3. (ハ) ( 「実がのる」の形で ) 実がつく。みのる。
        1. [初出の実例]「ミ noru(ノル) キ〈訳〉実のなる木」(出典:日葡辞書(1603‐04))
    13. 邦楽で、テンポを速める。符号は、かたかなで「ノル」と書く。
      1. [初出の実例]「鼓の方をなつかしげに ノルヲクリ 見返り、見返り行となく」(出典:浄瑠璃・義経千本桜(1747)四)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙 馬や乗物などをあやつって進ませる。走らせる。操縦する。「のりまわす」「のりこなす」などの形で用いられる。
    1. [初出の実例]「雲分といふあがり馬をのられけるに」(出典:古今著聞集(1254)一〇)

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